医科栄養学・栄養医学ブログ

医学部で医科栄養学を学んだ経験と最新の栄養医学をこのブログに反映したいと、考えています。

糖尿病でのインスリン抵抗性とビタミン・ミネラルについて その三 栄養医学ブログ

2011-08-16 21:35:14 | 健康・病気

糖尿病はもっとも一般的な内分泌系の不調です。その原因にインスリン抵抗性が関係あるといわれております。そこで、いろんなサプリメントがインスリン抵抗性の治療とニ型糖尿病の治療に有用であることが、明らかになりました。適切なビタミン・ミネラルを摂取することは、糖尿病患者にとって不可欠です。

ビタミンCは特に重要です。多くの糖尿病患者は、この重要なビタミンが欠乏しています。ビタミンC(VC)は蛋白質の糖化と害であるソルビト―ルの蓄積を阻害するのに役立ちます。2000mg/日の摂取量では、分割投与とタイムリリーズカプセルが推奨されています。

ビタミンE(VE)は、800~1200国際単位/日の投与量では、グルコース代謝とインスリン感受性を改善します。クロニウムはグルコース値を下げ、糖化を防ぐのに役立ちます。また、コレステロール値を下げます。推奨投与量は200mcg/日で、ニ回に分けて摂取します。Chromium picolinateで販売されています。

ビタミンB複合体、特に、ビタミンB6,ビタミンB12は、葉酸(VB9)と同様、糖尿病合併症を防ぐのに重要です。糖尿病患者は、Mgの吸収がうまくいきません、それで、200mg/日を三回に分けて摂取することは、欠乏症を防ぐのに必要です。クエン酸マグネシウム、マレイン酸マグネシウムなどで販売されています。αーリポ酸は強力な抗酸化栄養素で、グルコ―ス輸送担体ー4の活性を強め、インスリン感受性を高めます。推奨投与量は100mg/日で、三回に分けて摂取します。

バナジウムは、糖尿病患者とインスリン抵抗性症候群のヒトにとって、もっとも重要なサプリメントです。それはインスリンのようにグルコース輸送担体-4を活性化します。硫酸バナジウムとしての50~100mg/日の投与量は、グルコース値を下げるのに大変効果的です。しかしながら、バナジウムの大量投与は、血中グルコース値の急速な低下をもたらします。したがって、熟知した医師の監督のもとに実施されなければなりません。アメリカニンジンが、食後の血糖値のspikeを防ぎます。

多くの糖尿病患者はホルモンのDHEAが欠乏しているので、それを補えば大変有益です。マツヨイグサ、魚油、亜麻仁油、玉ねぎ、ニンニク、そして、いろんな薬草は、血糖コントロ―ルに有益であることがわかりました。

規則正しい運動計画、適切な食事、天然栄養サプリメントの賢明な使用は、血糖コントロールに大変有益であり、コントロールされてない糖尿病患者の長期にわたる合併症を防ぐことができます。

Reference

Insulin Resistance and Diabetes: Hans R. Larsen, International Health News, March 2002

 

 


糖尿病でのインスリン抵抗性とビタミン・ミネラルについて その二 栄養医学ブログ

2011-08-16 16:03:38 | 健康・病気

インスリン抵抗性のメカニズムと糖尿病との関係については、現在、大変注目されています。そして、研究も数多く行われています。日本ビタミンC研究会もそれに注目しています。特に、インスリン抵抗性に対するビタミンCの改善効果を研究中です。さて、ここではグルコース輸送担体がインスリン抵抗性と深く関係しているので、それについて説明します。グルコ―ス輸送担体は細胞膜での糖の取り込みを担う分子で、骨格筋や脂肪組織に発現しインスリン依存性に糖(グルコース)取り込みが増大するグルコース輸送担体ー4や、脳神経細胞・肝臓に発現し、インスリンによる急速な調整を受けないグルコース輸送担体ー1、グルコース輸送担体ー2などがあります。

インスリンは、 血流のグルコースの存在に反応して放出されます。グルコースは、糖、もしくは糖を含む食品、それに炭水化物の単糖類への分解を通じて血中へ取り込まれます。インスリンは細胞内から、特別の蛋白分子であるグルコース輸送担体-4(GLut-4)を放出させるための、細胞の壁に作用する化学的メッセンジャーです。グルコース輸送担体ー4は細胞の外側の膜にくっつきます。そこでは、グルコース輸送担体ー4はグルコース分子をつかみ、グルコースを細胞の内側に運びます。ここでは、グルコースはエネルギーを産生するため使われます。そして、余分のグルコースは脂肪に転換されます。このプロセスは、一定の血中グルコース値が通常、60~115mg/dLで、平均85mg/dLの糖尿病でないヒトの場合です。

糖尿病患者に於いては、血中グルコース値はコントロールされておりませんので、250mg/dLかそれ以上に達します。一型糖尿病(インスリン依存性)の患者は少しか、もしくは全然、インスリンを産生しておりません。なぜなら、膵臓のβ―細胞は正常にインスリンを産生していますが、それが破壊されてしまいます。そこで、外部からインスリンを補充しなくてはいけません。

ニ型糖尿病患者(非インスリン依存性)は、通常、適量のインスリンを産生します。しかし、いくつかの理由により、インスリンがグルコース輸送担体ー4を呼び出すメカニズムが機能しません。その結果、血中グルコース値とインスリン値が高いままです。同じ問題がインスリン抵抗性のあるヒトで経験されています(グルコース耐性不全)が、その程度がより低いようです。

糖尿病、インスリン抵抗性症候群の治療食は、総エネルギーの約60%が炭水化物です。この治療食では、豆、オート麦のふすま、ナッツ、種子、梨、りんご、それに野菜は、食物繊維含有量が高いため、特に大切です。これらには、ビタミン・ミネラルが豊富に含まれます。グリセミック指数が低い食品は、インスリンをゆっくり放出させ、高インスリン血症を避けることができるので、この食品を摂取することは重要です。さらに、食事療法と運動療法など基礎療法を基にして、ビタミン・ミネラル療法を補充すると、糖尿病の合併症を防げます。しかし、、腎症・透析患者は、透析医の指示を必ず守って下さい。次回に、糖尿病、インスリン抵抗性症候群のビタミン・ミネラル栄養療法について述べます。

References

Insulin Resistance and Diabetes: Hans R. Larsen,  International Health News,March 2002

糖尿病学用語集:日本糖尿病学会、文光堂