グローバルネイチャークラブのガイド日記

グローバルネイチャークラブ(旧グローバルスポーツクラブ)のガイド仲間が観察した伊豆大島の自然の情報を中心にお届けします。

大島の火山・その8 火山の石

2010年11月07日 | 火山・ジオパーク

先日、ジオパークの説明で小学校の遠足に飛び入り参加した時、
子どもたちからの質問が一番多かったのが、火口周辺の石についてでした。

 

黒い溶岩の中に光る白い粒を指差して「これ何?」

「う~ん…何だろう…?」

 

子どもたちが持ってきた石の中には、私がその場で答えられる物も、
そうでない物もありました。

 

子どもって結構石好きなのですね。新発見!

そういえばジオパークの審査員の方の中にも、石好きが高じて地学の専門家になったという方が
いらっしゃったのを思い出しました。

 

「よ~し、子どもたちの質問に答えるぞ~!」


ということで、石の標本を撮ってみました。 

この5種類の石、1~3は火口周辺、4~5は赤禿の丘(側火山のスコリア丘)にあった物です。


ずいぶん色が違いますね。

 

さて、またまた“やぎ”さんにお手伝いいただきながらの結果発表です。
番号ごとにその成り立ちを見ていってみましょう。

 

1.黒くて穴の多い石に白い粒


白い粒は斜長石の結晶だそうです。
地下数キロのところにあるマグマ溜まりの中で、数10年かけて本当にゆっくり冷えていく時に成長する
大きめの結晶がこのような粒(斑晶)になるそうです。

ということは、吹き出た溶岩の中には元々この白い粒が含まれているものも多いのですね。
石全体が黒いのは多分、すぐに冷えてしまう場所にあって酸化されなかったのでしょうから、
空気に触れやすい表面部分などに降り積もっていた物なのかもしれませんね。

 
2.白い密な質感の石に白い粒


これは班晶になれるほどゆっくりではないけれど、小さい斜長石結晶を作れる程度には
時間をかけて冷えることのできた物だそうです。

1986年の噴火後1年間、蓋をされた状態だった溶岩湖(今の火口とほぼ同じ大きさ)の中で
冷え固まった物だったのかも知れません。


しかし鉱物の結晶ができるのってとてつもなく長い年月がかかるのですね…。
ビックリです!

 
3.赤くて穴の多い石に白い粒


これも1と同じ斜長石の結晶が石の中に入っています。
大島では班晶として、斜長石の他に輝石、かんらん石を含むそうですが、輝石、かんらん石は
有色鉱物であるうえ、入っている量はごく少量だそうです。

石全体の色が赤いのは、高温で長い時間空気に触れて酸化が進んだからですから、
これは噴火で降り積もった層の中の、冷たい空気の影響を受けにくい場所にあった物が、
次の噴火で吹き飛ばされたか、島特有の強風で飛ばされて、道に転がっていたのでしょう。

 

4.黒っぽい穴の多い石に白いものが表面を覆っているもの


これは、古い側火山、赤禿の石ですが、火口周辺にも同じものがたくさん見られました。

この白いものは地衣類です。
地衣類は、菌と藻とが共生している生物で、スポンジのような菌糸を使って水や重金属を吸収すると言われています。
何も栄養分の無い溶岩流の上にやってくる最初の生き物でもあります。
(大島の場合はこの地衣類と同時期にハチジョウイタドリが溶岩上に芽を出したのですけれど)

噴火後24年がたとうとしている三原山の火口周辺や溶岩流の上では、
地衣類に覆われている石も多いですよね。


5.粒の無いガラガラした感じの赤い石


これも、“赤禿”の石です。
赤禿はその名の通り赤いスコリアが降り積もってできている丘ですが、
ここの石は斜長石の結晶は、ほとんど含んでいないようです。

実はこれについては「マグマ溜まりの中でも斜長石が多く集まっている所と、そうでない所があって、
それが順番に、または別の所から出た」とも考えられているそうです。

 

大島の斜長石結晶については、まだまだホットな論争になっている部分でもあり、
これから考えが変わっていく可能性もあるそうです。
こんなふうに未知の部分を残しているからこそ、火山に引かれる人も多いのでしょうね。

 

さて最後に、キラキラ輝く美しい石です。


溶岩が急速に冷えると原子が規則的に並んで結晶を作ることができず、不規則でバラバラな並び方になります。
それが「ガラス」と呼ばれるものです。

高温で吹き出たマグマが空中に吹き上げられた時、急激に冷えるとこんな風にキラキラのガラス質の石になります。
噴火の中心部は空気の温度も高いでしょうから、これは火口から遠くへ、
冷えた温度の中を飛ぶことができた物なのでしょうか?

このキラキラの石が見られる場所は、ある程度限られるようです。

太陽の光を反射して様々な色に輝いて、本当に綺麗ですね。


足元にある石の姿、形から、その石ができた時の事を想像するのはとても楽しいです。

 

皆さんも機会が有ったら、色々な石を探して大島の火山を楽しんでくださいね。

 

(カナ)

 

 

 

 

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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
石好き (おじゃる丸)
2010-11-08 21:11:22
カズマも石が好きでの。

でも、国立公園の特別保護地区は土石の採取が禁止されておる。

土産に持って帰れんのお。
できるなら (カナ)
2010-11-09 08:54:40
おじゃる丸さん、こんにちは!

さりげなく御指摘いただき、ありがとうございます。御指摘の通りカルデラ内は国立公園の特別保護地区です。

自然公園法による土石の採取禁止は、採掘などの大掛かりなもののようにも思えますが、その範囲の明確な規定はないようですね。

ハワイでは「石を持ち帰ると災いが起こる」と伝えられていて、内緒で持ち帰った人が「本当に悪いことが起こった。」と言って郵送で送り返してきた事もあったという話を聞き、興味深かったです。

ただ、私は保護の理論はその環境が再生可能かどうかで細かく議論されるといいのになぁ、と個人的には思っています。

希少種、またはその環境ではないと生きられない生物の持ち帰りには絶対反対ですが、カルデラの石はまた火山が補充してくれるでしょう。(笑)

むやみに採取することが良いとはもちろん思いませんが、たとえば子どもが三原山の石を持ち帰り、大切に扱って、見るたびに大島の自然を思い出してくれたら、それはそれほど悪いことには思えません。
「自然を大切にしよう。」という発想のもとには、自然に触れ、“知る”だけではなくて“感じ”、興味を持ったり好きになったりする過程が絶対必要だと思うからです。

噴火のたびに噴出される溶岩量と年間の観光客数から検討して“再生可能で、景観にも影響を与えない範囲”で石好きの人が持ち帰り、身近に置いておける範囲を決めていけるような、細かい対応ができるようになったらいいなぁ、と思います。
はじめまして (hitomi)
2023-01-17 10:15:27
はじめまして。
少し前の記事にコメント失礼します。
今年の1/8に三原山の裏砂漠を歩いていて、
説明にあるキラキラした石を見つけました。
帰宅してからグーグル検索し、こちらのブログで
説明をいただくことができました。
ありがとうございます。
ずっと歩いてきたうち、ほんの狭い範囲だけに
キラキラ石があり、きれいだしとても驚きました。
すてきですね。
いずれ石のことを自分のブログにも書きたいので、
こちらのリンクを張らせていただきたく思います。
今後も伊豆大島の情報を楽しみにしています。
ありがとうございます。 (カナ)
2023-01-18 09:28:43
こんにちは。コメントありがとうございます。過去の記事がお役に立てて嬉しいです。
キラキラの石本当に綺麗ですよね。
とてももろくて割れやすいのですが・・・
そのはかない感じも好きです(笑)

ちなみに特物保護地区にある石の標本は、撮影後、また元に戻しています。

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