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納戸の奥に眠っている箱を久しぶりに出してみると…
買い集めていた45年前の週刊ベースボールを読み返しています

# 426 マネーウォーズ ①

2016年05月11日 | 1985 年 



昨年暮れから続いたプロ野球界の年に一度の賃上げ闘争はほぼ終結した。各球団のトップクラスはともかく、10位前後の選手の年俸は案外と分からないもの。 " 男の名誉 " をかけたマネーウォーズを紹介する(金額は推定・1月6日現在)。


絶対的エース・山田をして「ホント絵になる男よ」と言わしめた今井雄太郎(阪急)。これまで何度か浮き沈みを繰り返してきたが遂にド~ンと二千万円アップの四千万円をゲット。高給取りが揃っている阪急にあっても山田、福本、水谷、蓑田に次いで5人目(外人選手を除く)となる四千万円プレーヤーの誕生である。「やった!ちょうど四ッつや。これで俺も中心選手の一員だ」と会見でデッカイ鼻の穴をおっ広げた。ところが少し落ち着くと「ありゃ、カァちゃんに『四千五百万円いかなんだらハンコを押したらアカン』と言われてたんや…」と恵美子夫人の言葉を思い出してビクついたのは恐妻家の今井らしい御愛嬌。ともあれ二度目の最多勝と両リーグ唯一の20勝投手は苦節14年、やっと一流プレーヤーの仲間入りを果たした。

そんな今井がしみじみと振り返るのが昭和57年の大不振。前年に19勝で初の最多勝に輝き年俸も軽く一千万円をクリアして「さぁこれから」と意気込んだが6勝11敗と惨憺たる結果で減俸の憂き目に。今井は別名が " 隔年投手 " と揶揄され年俸が上昇一方通行のエスカレーターに乗り損ね、上下動が激しいエレベーターに乗る羽目になった。翌58年に15勝し二千万円の大台に乗せ、昨年は念願の2年連続好成績を修めた。さて、左ウチワの今井と思いきや「初めて続けて給料が上がって来年どれだけ税金を納めるのか気が気でない」とせっせと貯金に励むのだそうだ。車の免許は持っているが愛車はなく今後もベンツなど高級車を買う予定はない。それは決してケチなのではなく家の外で思う存分お酒を飲む為だそうで現役の間は車を運転しないと恵美子夫人と約束していて " 庶民派ユウちゃん " は当分続く。

お次の
大石大二郎(近鉄)も見事なアップ率だ。入団時が三百三十万円、その後は三百八十万円、一千万円、二千万円と順調にアップし昨年の更改で60%アップの三千二百万円で一発でサインした。「すごい。プロはやればやっただけ給料が上がる。やはり遣り甲斐がありますね」 昨季、130試合フル出場しベストナインとダイアモンドグラブ賞を受賞、2年連続で盗塁王も手にし今やパ・リーグを代表する二塁手で年俸もホップ・ステップ・ジャンプだ。「プロに入った時からもっともっと欲しい、という希望を抱いてきましたからね。まぁこれだけの金額になるとそれに見合うだけのプレーをしないとね」 来季、3割・3年連続盗塁王に燃える大石だが年俸三千二百万円ともなればリッチな生活が待っている。昨年の秋に大阪・都島区にマンションを購入した。

「二千六百万円でしたが全て借金ですよ。でも2年で完済する予定です。小遣い?1ヶ月50万くらいですかね」懐が寂しいサラリーマンには何とも羨ましい限りだが、呑めば一晩でボトル1本くらい軽く空けてしまう酒豪でもある大石が銀座へ繰り出せば30万円はアッという間に泡と消えるだけに50万で足りない月もあるそうだ。「でもね、その反面しまり屋でもあるんですよ。マンションに帰れば小さな灯りでもこまめに消しますし、歯を磨いている最中の水道は流しっ放しには決してしません」と。さて、女性ファンが最も気を揉んでいるであろう大石の結婚について本人は「住む所は取り敢えずは確保しましたし、後は相手を探すだけです。出来れば30歳くらい迄に結婚したいですね」らしい。

金額ではなくアップ率だけなら中日の
牛島和彦上川誠二の投打の若手が筆頭だ。いかに思惑以上のアップだったのかは2人の更改直後の同僚選手の声で分かる。限りなく最下位に近い5位から2位に躍進したものの、球団の財布のヒモは固く「カミ(上川)があんなに上がっているのに(大島)」、「牛島のアップ率は本当?それにひきかえ俺は…(小松)」等々、先輩達は愚痴る愚痴る。普段なら選手は他人の年俸について一種タブー視して多くを語る事はない。なのに敢えて2人の名前を挙げたのは2人が如何に恵まれたか、を示している。事実、「信賞必罰を徹底化した結果です(伊藤球団代表代理)」と2人の大幅アップを認めている。2人は一体いくらアップしたのか?年俸九百万円の上川は120%増の二千万円、同じく一千八百万円だった牛島は倍増の三千六百万円で更改した。

本人達もビックリの大幅アップを手にした2人だがその使い途も似ていて堅実だ。上川は「月に百万くらいは定期にするつもり」とアップ分をそっくりマイホームの建築費に充てる予定。今オフに元ミスユニバース日本代表の久恵夫人と結婚し新居を物色中である。一方の牛島も実家(大阪・大東市)が経営する喫茶店のローンが五千万円以上残っていて「アップした分は返済に充てる」と決めている。月給が税込百五十万円だった昨季の毎月の返済額は八十万円、今季は倍の三百万円の給料の内いくら返済に充てるつもりなのか?「なるべく早く完済して次は自分達の家を建てる」と息巻く。光江夫人は常々多額のローンに不安を抱えていたがホッと一息つけそうだ。中日と言えば嘗ての " 一千万円プレーヤー " の松本幸行投手は月給を貰うとその足で競馬に行きスッカラカンとなり引退した時は借金を背負っていた逸話が残っているが、今の選手達は堅実である。

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