H's monologue

動き始めた未来の地図は君の中にある

使命の道に怖れなく どれほどの闇が覆い尽くそうと
信じた道を歩こう

Morning Reportの運営に関するまとめ

2021-04-07 | 臨床研修

めずらしく時間がとれたので,これまでやってきたMorning Reportの運営について,現時点でのマニュアルのような形でまとめました。自分の覚え書き用にアップしておきますが,同じようなカンファレンスを運営している方にも参考になるかもしれません。

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<目的  Mission>

・症例提示のディスカッションを通じて,可能な限りリアルワールドの思考過程,行動をシミュレーションする
・繰り返し行うことによって,基本的な臨床能力(診断への臨床推論,鑑別診断,基本症候への対処)を身につける
・実際の流れなら数分〜15分くらいの時間で行われる「頭の中で行われる」思考を60分かけて言語化する
・ハイスピードカメラで撮影した映像を再生するように,脳内の思考をなぞる
・「Think out loud」 声に出して考えること

 これを行うことによって,何がわかっているのか,何がわかっていないのかを意識する習慣をつける

・ただし,これもリアルワールドではないことは自覚しておく
・”カンファレンス巧者”を作るのが目的ではない。最終目標は,実臨床で使える知識を身につけて,実際に動ける(=できる)ようになることが目標。
・「わかる」と「できる」は全く別の次元

 

<身につけるべきスキル>

・「年齢・性別・主訴」から想起すべきcommon,life-threateningな鑑別診断をただちに言える
・想起した鑑別診断を元にして取りに行くべき情報を質問できる(=攻める問診)
・pertinent positive/negativeを意識した病歴聴取
・正しい情報を得るための,正しい質問ができる
・多くの情報を取捨選択して,簡潔な必要な情報にまとめる
・その情報を必要十分な言葉で伝える(=プレゼン能力)

・バイタルサインの正確な解釈
・基本的身体診察の手技(ただしカンファで言えることとできることは別)
 ”頚静脈をみる”と言えても,目の前にしてそれを正しく認識・解釈できなければ無意味(直腸診も同じ)

・コミュニケーション・スキル,実際のマネジメントで行う手技などは,カンファレンスでは不可能。そこは実地で練習が必要。

 

<基本構成>

Case selection

・症例提示する研修医が実際に経験した症例から選ぶ
・まれな疾患である必要はない。
・確定診断がつかなかった症例でもよい。
・診断までの思考過程,治療への過程などで何か学ぶポイントが一つでもあればよい
・Take home messageが,提示する研修医の中で明らかであれば理想だが,なくてもよい
(ファシリテーターがちゃんと見出してくれる)

Format

・原則,月・火・水の午前8:00〜9:00(月・火はZoom生配信)
・症例提示の研修医が情報を少しづつ話す
・司会者(ファシリ)がホワイトボードに順次記入してゆく
 ・導入〜鑑別診断まで 約30分
 ・身体診察+検査   15〜20分
 ・経過,診断,まとめ 10〜15分

つい長くなってしまう傾向があるので,きっちり9時少し前に終了できるように時間管理するのはこれからの目標

・開始から終了まで,Zoom生配信+動画記録を行う(生配信だけが目的でなく,動画記録が簡便にできる)

1)Initial data:年齢・性別・主訴 (三種の神器)
  加えて,セッティング(ERか通常の外来,入院,平日,夜間など)
  患者背景も必要であれば最初に提示

2)HPI 現病歴
・経時的に,少しづつ情報を明らかにする
・フロアから適宜質問を受けながら

3)既往歴,薬剤,家族歴,社会歴,その他

●ここまでで鑑別診断をある程度列挙する(途中でも適宜,追加・修正)

・一般論ではなく,提示された「その症例」で何が最も考えられるか,病態生理と頻度の軸で考えること
 本命・対抗・穴馬 の3つくらい

●身体診察に行く前に,どこかのタイミングで 「それまでの30秒サマリー」と「problem list」確認

4)身体所見
・バイタルサインと全身状態
・型通りにそっての身体診察+病歴から見にゆくべき所見
・追加所見

5)Work Up
・まず何をするか,アクションについて
・モニター装着,IVライン確保,採血検査で何をオーダーするかなど
・追加検査は何を行うか

6)検査所見
・基本的な CBC & Chem-7, U/A, 血液ガス,その他
・必要な画像家検査など

7)診断
・最終的な診断とその後の経過

●最終的なdiscussion, teaching pointの確認

・とくに提示した研修医が「何をこの症例から学んだか」を明確に意識できること(言えること)
・これがきちんとできれば,生涯にわたって経験した症例から自分で学んでゆく姿勢が身につけられる
(Lifelong self-learning attitude)

上記の流れに沿って,それぞれのポイントで適宜,鑑別診断を参加者から上げて,ホワイトボードに記入してゆく
(診断仮説の想起→修正→診断的検査→病態生理まで)

 

当日までの前準備

・Zoomのスケジュール
・希望者のメール・リストへの登録
・希望者への生配信の案内メール

当日のセッティング

・部屋の確認,ホワイトボード
・カメラ,三脚,ATEM mini, マイク(Blue Yeti)の設置,配線
・ネット接続(有線,WiFi)
・MacBook Pro(Zoomホスト用)
・iPhoneないしiPad (画像などを映す2カメ用)

・録画開始
・チャット欄で,逐一経過記録を入力
・会議終了で録画終了→動画MP4に保存

カンファ後の作業 Post production

・カンファレンスの内容をSlackとYouTubeにアップ
 重要なデータベース,「皆の財産であり教材」

・ホワイトボードの写真記録(Slackへのアップ用)
 写真をリサイズ(横x縦=2x1),明るさ色補正
・チャット記録保存(テキストファイル) Slackへのアップ用
・Zoom記録保存(MP4ファイル)    YouTubeへアップ用
・MP4ファイルのリネーム  MR20210401 など(MR+date)
・ YouTubeへのアップロード,限定公開設定で

 

Slackへのアップロード

 #morning report記録 チャンネルにアップ

1)MR記録(日付,提示者,司会者,年齢・性別・主訴)
  ホワイトボードの写真(原則として須藤,ないし研修医の誰かがアップ)

2)そのスレッドに<症例概要>をまず提示者がアップする
 年齢・性別・主訴からの病歴,身体診察,経過,診断に至るまでのまとめ,簡潔に大体300-400文字程度に
 最後にかならず 「(診断)」は入れる。たとえ,確定でなくても,最終的にどう考えたか

・ホワイトボードの写真がアップされたら,なるべく速やかにアップすること
 (<症例概要>がアップされないと,以下の次のセクションに進めない!)

 理想的には,この症例から学ぶ「Take Home Message」を一つを書いておく

3)記録してあれば,Zoomのチャット欄で作成した<経過記録>を2)のあと,スレッドに続けてアップ

4)YouTube限定公開の動画 URL

5)追加コメント,調べた内容(担当研修医または他の研修医,スタッフ)

6)参考資料

7)Slackのメンバーは,大船の研修医,他施設からのローテーター,OB/OG,指導医

 

Morning Report記録ワークシート(Googleワークシート)へ記録

・エクセルと同様のワークシートに記録(これに関してはまだ不十分)
・集積して統計を作成することができる(Dr別,主訴・症候別,診断別など)
・自分が提示した症例のまとめにもなる

 

<今後の活用の展望・アイデア>

・Slackの検索機能 あるいは ワークシートのまとめを使って統計を作成する
・症例提示される主訴の頻度
・最終診断からの統計
・ある主訴からの最終診断のバリエーションを調べる
   例)腹痛,嘔気,意識障害など・・
  当院での疫学データ(の一部,なぜならカンファレンスへの提示バイアスがあるから)

・研修医別の統計は,研修記録として活用可能
 認定医,専門医申請のときのサマリ作成など

 

<今後への展開>

面白アイデア

・毎回,ひとつパールを記録すれば,1年で100個のパールを集積できる
・症例ごとに星★をつけて,「今月のベスト症例」みたいなものを作る?
・年間ベスト10とかも?(基準は,教育的,面白い,なんでもあり)
・表彰制度? ベスト症例賞?
・「症例集」として書籍化も可能かもしれない
・医学教育関連,総合診療関連の学会での発表ネタには充分なるか
・研修医募集の宣伝効果は充分見込める
・事情が許せば,見学実習に来た学生,生配信に参加した学生に参加資格を設けて限定的にSlackの閲覧を許可するのもアリ?

過去の財産のデータベース化

・これまでの症例の記録は,ERに置いたノートに基本情報は記載してある
・須藤が過去に撮影して保存してあるホワイトボードの画像は,10年分以上ある
・カルテ番号が記載されたものは,あとからさかのぼることが可能

・「年齢・性別・主訴」と診断名だけでもデータベース化できれば良いかもしれない

・特に教育的な症例が「発掘」されたら,それを
 #morning report_classic とでも名付けたチャンネルにアップしてもいいかも

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『総合診療』 4月号!

2021-04-02 | 臨床研修

雑誌『総合診療4月号』は当院の先生達が頑張っています。

我らが中野弘康先生が特集の編集をしています。最近あちこちで活躍中ですが,今回の特集もかゆいところに手が届くような内容です。

 

 

そして,3月末に当院から巣立っていった若きホープ,石井大太先生の連載も絶賛継続中です。今回の胸部聴診については,心音だけでなくマニアックな「コイン・テスト」について言及されています。

 

 

『サパイラ』によれば,聴性打診に1ドル硬貨を使うと書いてあり,私は以前に在米中の知人から1ドル硬貨は入手していました。ところがよく読むと1ドル硬貨ではなく1ドル「銀貨」じゃないといけないそうです(音の響きが違うって? そんなん,知らんがな・・・笑)。

それで何と石井先生はこのために「1ドル銀貨」をネットで2枚購入したそうです。(そもそもネットでそんなもんが買えることを知りませんでした,さすがコダワリの石井くん・・)この記事には,1ドル銀貨を使ったデモの写真も載っています。ちなみにモデルは,もう一人巣立っていったT先生です。

 

さて,今月号の表紙は「19番目のカルテ」という総合診療医の働きをテーマにした漫画の主人公です。

この4月号から山中克郎先生と徳田安春先生による「19番目のカルテを読んで答える!あなたのドクターG度検定&深読み解説」の連載が始まりました。内容は漫画のストーリーに沿ったビギナー向けの検定クイズ5問とその解説です。

そのなかで毎月オスラー先生の言葉が紹介されます。またその検定クイズの内容が,同時にSNSの特設サイトでもアップされるそうで,徳田先生・山中先生のサイン入りの『こんなときオスラー」と漫画の作者の方のサイン入り色紙がプレゼントとして用意されています。

こちらは「オスラリアン」つながりの情報でした。

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