研修医2年目の1年間は本当に,本当に忙しくて睡眠時間がなくてつらかったのを覚えている。
自分はナルコレプシーかと真剣に悩みそうになったこともある。指導医の先生から説教されている最中に居眠りしたこともある。
当直あけで外来をやっている時に,血圧を測ろうとしてどうしても拡張期圧が分からず断念したことがある。
マンシェットを巻いてカフを膨らます。水銀柱を上まで上げてカフを緩めて目盛りを凝視する。降りていく水銀柱をコルコトフ音を聴診器で聴きながら・・・
「トン,トン,トン,トン・・・・・・・」
はっと気がつくと水銀柱が下まで降りきるまでの間に目をつぶってしまっていた。もう一度繰り返す。
「トン,トン,トン,トン・・・・・・・」
「はっ・・イカンまた寝てしまった」
「トン,トン,トン,トン・・・・・・・」
「はっ・・イカン,イカン・・」
しかし,その時には何度やってみても拡張期圧まで目を開けていられず,患者さんも何だかいぶかしげな顔になっている。ついに拡張期圧の記録は断念したのであった。
それにしても,こんな睡眠不足の医師に診察された患者さんはいい迷惑である。申し訳なかったと思う。こんな睡眠不足の経験はあとにもさきにもない。