閃輝暗点
2012-02-09 | 日記
地区のローカルな勉強会で,湘南鎌倉総合病院神経内科の川田純也先生のレクチャーを拝聴した。
「慢性頭痛の診療の実際」というタイトルでとても勉強になる内容だった。慢性の頭痛は主に,片頭痛,緊張型頭痛,群発頭痛,薬剤依存による頭痛が大事と。
このレクチャーを拝聴して,以前からあった,ある疑問点が氷解した。
片頭痛では,閃輝暗点という前兆を伴うことがあるのが有名だが,頭痛を伴わない閃輝暗点はどう考えるべきか?というのがその疑問だった。
何年か前に,こんな症例を経験している。
高血圧で通院中の80歳代の男性。3週間位前から突然視野にきらきらしたギザギザが見えるようになり,1時間位で消失する。詳細に話を聴くと,以前から同様の症状がある。しかし,何度聴いても拍動性の強い頭痛はない。実際に見えたものを紙に書いてもらうと,典型的な閃輝暗点である。しかし片頭痛のような頭痛はない。さて,片頭痛を伴わない閃輝暗点はあるのか?というのが,それからの疑問だった。この患者さんは,さらに詳細に話を聞くと,’若い頃には頭痛もちで,しかもその頭痛は拍動性であり片頭痛を疑うものであった。年を取ってからは頭痛を自覚することはあまりなくなったという。しかし,閃輝暗点がときにおこっていた。
それでレクチャーのあとで,川田先生にこの症例のことを質問してみたのである。川田先生によると,実際に若い頃に片頭痛があり年齢とともに頭痛を起こすことがなくなり閃輝暗点だけが残る症例がいるそうである!この場合は,治療の必要はおそらくないだろうということであった。さらに興味深いことに,頭痛がなく高齢になってから閃輝暗点だけを訴える症例があるとのことであった。自分自身でも1例そんな患者さんの経験がある。この場合も,はっきりとしたデータはないが,おそらく治療の必要はない。ただ,血管病変の有無は調べておいた方がよいかもしれないとのことであった。
先日の聖路加であったリウマチのセミナーでもそうだが,専門家の話はやっぱり勉強になる。長年の疑問が,こうしてひょんなことから解決するのは単純に嬉しい。
いつも楽しく拝見させていただいております。
自分は神経内科外来を中心に診療しておりますが、同様の症例にこれまで高齢で5例ほど経験しております。ご指摘の通り若いころに片頭痛と思しき頭痛を持っている方は3名で経験されました。
しかし、元々偏頭痛を病気と思っていない事がある点や、常に前兆を伴っているわけでなくまた昔のことで頭痛の詳細を覚えていない方もおり、片頭痛の既往を特定できない方も2人ほどいらっしゃいました。
60歳で1週間前から計4回、頭痛の無い閃輝暗点があるという方で、既往が確認でき無かった方を、3か月後のフォローとしたことがあります。症状は一過性でその後は起きなかったとのことです。
なぜ前兆が起きるのか大変興味深いですが、時々経験されます。閃輝暗点の頻度や程度が増加する場合や典型的な閃輝暗点で無い場合は画像検査を検討して良いのかもしれません。
興味深い症例を有難うございました。
閃輝暗点以外にも,視野の一部がゆがむという方も経験したことがあります。その方は設計関係の仕事をしている男性で,方眼紙を見て仕事をしていたところ,そのマス目が次第に樽型にゆがんで見えてきたというのです。経時的にその絵を描いたものを持参されていて驚いたことがあります。