最近ずっと頭を抱えていたことについて。
このことは今年中に「ケリをつけて」おこうと思って記録する。(長いので興味のある方だけどうぞ)
12月11日に,東京都立多摩総合医療センターに招かれて「身体所見ネタ」のお話と「大船GIMカンファレンスの出張版」をやらせていただいた。終了後は皆さんと食事をしてホテルに宿泊。
12月12日の朝,起きた時から何となく「右の首筋」が痛い。枕が変わって寝違えたのかなあ~なんて思っていた。
12月13日車を運転している時に,ヘッドレストに頭が触れると何となく髪の毛が引っ張られるような感じで不快。右頭頂部にびりびりするような痛みをときどき自覚する。何となくやだな~という感じ。
12月14日外来診療中も,急に電撃的な痛みが間欠的にきてとても不快。この頃から,間欠的にキュッと痛みが走るようになった。これは「結構な痛み」だった。その日にあった病院の忘年会は早めに帰宅したが,帰宅後に何となく頭皮の中に小さな盛り上がりがあるような気がした。「まさか○○?」でも自分で見えない場所なので仕方がなかった。その夜は,あまりに痛くてうつらうつらとしか眠れなかった。痛い痛いと思いながら夢をみた。あんまり頭が痛いので,研修医に腰椎穿刺をさせる夢だった。キチンと良い体位をとってやったので研修医でも1回の穿刺で髄液がとれたので褒めてやった。スピッツの髄液を研修医に見せながら「ほら透明でしょ・・・細胞が増えてるときには,きらきら見えるんだよ・・・あれぇ,きらきら光ってみえる?え?細胞増えているかも?」などと話しているところで目が覚めた。痛みのせいで一晩ほとんど熟睡できなかった。起きてからも相変わらず,頭が痛い。
12月15日朝。頭皮に何もしなくても項頸部と頭頂部に痛みがあり,時々,電撃的に強烈な痛みが走る。頭皮を注意して触れると,小さな隆起(丘疹)が複数あった。あわてて家内に見てもらうと「赤くなっていて小さく盛り上がっている=丘疹」とわかった。まだ水泡形成はないが,これで帯状疱疹と確信した。痛みの分布からはS2-3領域だろう。出勤して,すぐに研修医をつかまえる。急いでカルテに「3日前からの頭痛あり,頭皮に皮疹出現。帯状疱疹の早期として,バルトレックス処方。」と記載して処方してもらう。ちなみに須藤くんという研修医なので,カルテの最後の記載は,「研修医須藤/指導医須藤」となった。さっそく1回分服用したものの,外来診療の最中も時々キューッと頭頂部に刺すような鋭い痛みが間欠的に繰り返しくる。これは結構強烈で思わず(うっ)となるような感じ。さらにシャツの襟がふれる頸部の右側がこすれるような感じで軽い痛みを感じる。聴診器をはめる時に,右のイヤーピースを入れる時にも軽い痛みがある。これもいやな感じ。(おいおい,Ramsay Hunt症候群は勘弁してくれよな,お願いだから。分布が違うからだいじょうぶだろうけれど)
12月16日夜中に寝ていても鋭い痛みがある。朝ふとんの中に潜り込んでいたが,昨日よりも明らかにピークの時の痛みが鋭く本当に「刺すような痛み」でつらい。とくに右頭頂部のある一点で起こる。それと右耳のやや下からオトガイにかけての痛みもひどくなってきた。この際だから,痛みの性質などは詳細に記録しておこうと思う。
・瞬間的にキューッと強くなり,比較的限局している。
・広範な範囲で痛む訳ではない
・持続的に軽い痛みが続いていて,突然瞬間的な強い痛みがくる。突発的な痛みは数秒間程度だが結構つらい。
・表面はわずかに盛り上がっているが,水泡形成はないことは確認してもらった。
・痛みが強い場所は,表面的には異常がない(皮疹と痛みの最強点は一致しない)
・咳をするとキーンと痛みがくる
・バルサルバでも痛みが増強する。
・頭を振ると痛みが強くなる(Jolt accentuationは陽性ととれてしまう?)
午後にかけて前日のような,鋭い痛みが何度もおそってくることはなかったが,後頭部から耳介のうしろ,さらに右のオトガイ(襟があたるあたり)に慢性的な痛みが持続する。
12月17日 昨夜は,前日より少し眠れたような気がしたが,痛いのはかわらず。右頭頂から右耳介後部,項頸部にかけての痛みは少し和らいだような気がする。触った時の痛みが昨日よりはまし。それでも痛い。昼頃,右の丁度襟が当たる部分にあたる頸部に痛みを感じるようになってきた。こちらは,瞬間的に鋭い痛みが増強することがある。表面的には発赤も皮疹も何もない。全体として見れば少し改善の兆しがあるような気がするが,右頸部の間欠的な鋭い痛みはとっても不快。日中,右頭頂部の痛みは,「蛍の光が点いたり消えたりするようなリズム」で少し広範に痛む。でも全体としては痛みが少し和らいだような感じがする,午後8時,じっとしていると痛みがない時間帯もある。今はあまり痛みを感じない。でも時にきゅっと痛みがくることもある。右頸部の痛み(こすれるようなひりひりするような感じはある)でも随分楽になったかも。午後11時3回目の服用して入浴。その後,持続的な痛みはほぼなくなった。時々,キュッと頭頂部と右頸部の痛みが走るが,これまでにくらべるとずっと良い。半分以下かな。やっと落ち着いてきた。やれやれ。
12月18日発症してから7日目。今日は嬉しくもない誕生日。朝起きた時には,右頭頂部の痛みがやっぱりある。でもかなり良い感じ。仕事中も時々まれにキュッと痛みがくるが頻度はかなり少なくなった。ナースにみてもらうと,まだ結構はっきりと皮疹がある(赤い)とのこと。自分で見えないから病状が分からないのがもどかしい。右の襟に触れるとことがちくちくするのも少しよくなったが相変わらずである。
今日は,モーニングレポートの後,病棟に行くと超重症患者さんが入院していて引き継いだものの,その後透析回診,外来,合間に面談と指示出し,午後に新患外来,終わって直後面談,そしてその患者さんのお見送りとノンストップで夜9時まで。何という誕生日!
12月25日この数日横ばい。起床時が一番不快で,枕が当たる部分や右の襟が触れるところに痛みがある。しかし痛み自体は,当初と比べると格段によい。現在の痛みは,感じ方によっては緊張型頭痛とか,寝違えたみたいな感じで区別がつかない気がする。
12月29日前日に診た40歳代の発熱&発疹の患者さんが,頭痛で脳神経外科を受診したあと,内科にコンサルトで再受診。左耳介後方にピリピリする痛みを自覚するようになったという。安静では痛くないが,触ると痛い。「ずん」と痛いという。「電撃的にびりっ」ときますかと,質問すると「ズン」と痛いと返事。(え~っ?オレと一緒じゃない?)と思ったのだが,全身にも皮疹があり,ちょっと合わない。結局,近隣の皮膚科の先生にお願いして見ていただいて「風疹」と診断。あちゃー,そう言えば,風疹の時は耳介後方のリンパ節腫脹である。帯状疱疹の訳がない。思いつかなかった。悔しい。availability heuristicというやつである。
12月30日発症後,約3週間経った。右後頭ー頭頂部の痛みが残っているが,かなり軽くなって,むしろ「痛痒い」感じになった。完全に症状が消えるのには,もう少し時間がかかりそうだが,少なくとも「頭を抱える」ようなことはなくなった。
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ちょうど自分が編集した「レジデントノート1月号」に,発疹が出現する前の帯状疱疹 pre-eruptive zosterの症例を,自治医大の山本佑先生が書いて下さったのだが,まんまそれとおんなじ経過。もう一度読み直すと,いやあ~すごく良い特集号だなあ。とっても勉強になります。ちなみに,帯状疱疹の「最大の危険因子は加齢」だそうで・・・がっかり。
ということで「急性腹症の早期診断」でSiren先生が自分の胆石発作の臨床経過を記載されていたのにあやかって,自分も「帯状疱疹の臨床経過」を記録したという次第。