面白き 事も無き世を 面白く
住みなすものは 心なりけり

「探偵はBARにいる」

2011年09月15日 | 映画
札幌はススキノ。
この街の裏も表も知り尽くした探偵の「俺」(大泉洋)は、いつものように行きつけのBAR「ケラーオオハタ」で、相棒兼運転手の高田(松田龍平)と酒を飲み、オセロに興じていた。
そこへ「コンドウキョウコ」と名乗る女から、仕事の依頼の電話がかかってきた。
既に口座に金を振り込んだというその女は、
「札幌経済法律事務所のミナミという弁護士に、去年の2月5日、カトウはどこにいたか?」
を聞いてくれと言う。
ヤバイ匂いを嗅ぎ取ったが、電話の声から美人であることも嗅ぎ取った「俺」は、その依頼を引き受けることにした。

さっそく弁護士の南(中村育二)に接触してみたが、何も得られない。
それどころか突然“その筋”の方々に拉致されると強制的にドライブに連れて行かれた挙句、だだっ広い雪原のど真ん中で生き埋めにされてしまった!
からくも自力で這い出して高田を呼び寄せたが(来るのが遅ぇんだよ!)、痛い目に遭わされたことに腹の虫が収まらない!
こうなりゃキョウコの依頼云々はどうでもいい。
必ず報復してやる!と南の周辺を探って“叩いて”みると、“埃”が出るわ出るわ。
ただの弁護士でありえない、キナ臭い人間関係が浮かび上がってきた。

更に調べを進めていくうちに「俺」は、「コンドウキョウコ」が引きずり込んだ事態の核心へと近づいていく。
1年前に殺された大物実業家・霧島(西田敏行)、その未亡人・沙織(小雪)、霧島亡き後に関西からススキノに進出してきた「銀漢興産」。
様々な事実が明らかになる中、「コンドウキョウコ」はこの世にいないことが判明する…


日本推理作家協会賞受賞の東直己の「ススキノ探偵」シリーズ2作目、「バーにかかってきた電話」を映画化。
毎夜シャレたBARのカウンターで酒を楽しむ「俺」。
スタイリッシュなBARには、ピシッと身なりを整えた寡黙なマスター。
小技の利いたウィットに富んだ会話やセンテンス。
高校の頃、「HOTDOG PRESS」や「POPEYE」を通して学んだ“カッコいいこと”が、舞台装置のそこかしこに散りばめられている。

しかし、ヘタをすればスノビッシュ臭くなってしまうこの舞台装置を程よく“ハズして”余分な気取りを削ぎ落とし、嫌味を無くしているのは、「俺」を演じる大泉洋が持つキャラクターの効能のひとつ。
そこはかとなく醸し出される“三枚目のオーラ”によって、カッコいいシチュエーションの中で若干背伸び気味な雰囲気が漂う。
思わずニヤっとなってしまうのは、青々しかった頃の自分を思い出して小っ恥ずかしいからか、はたまた、男ってのはいくつ何十になってもカッコつけたがるその琴線に触れてくるからなのか。
ハードボイルドタッチな「オトナの男」の世界に憧れて、しかしとてもとてもハードボイルドには程遠い現実に、ちょっとお尻がこそばい(…大阪弁か…標準語なら「くすぐったい」)思いがして、頬が緩んでしまうということだろう。


我々世代の男なら誰もが(たぶん)憧れたことのある(あるいは憧れる)、「オトナの男」を演出するアイテムが溢れて楽しい、ススキノを舞台にした「探偵物語」。
松田龍平の“ハズし方”が「工藤チャン」の血統を感じてgood♪


探偵はBARにいる
2011年/日本  監督:橋本一
原作:東直己
出演:大泉洋、松田龍平、小雪、西田敏行、中村育二、竹下景子、