面白き 事も無き世を 面白く
住みなすものは 心なりけり

「ふたりのヌーヴェルヴァーグ ゴダールとトリュフォー」

2011年09月06日 | 映画
1959年のカンヌ国際映画祭で、「大人は判ってくれない」が監督賞を受賞した。
観客から絶賛されたこの作品によって、従来のフランス映画の枠にとらわれない「ヌーヴェル・ヴァーグ」映画の評価は確固たるものとなった。
その後、トリュフォーの協力もあり、ゴダールは「勝手にしやがれ」を製作して成功を収める。
こうして、多くの熱烈なファンを生み、アイドル的人気を得るまでになる二人は表舞台へと登場した。
しかし盟友だった二人も、やがてゴダールが政治にのめりこみ、一方のトリュフォーは“映画職人”へと違う道を歩みはじめる。
そしてトリュフォーの「アメリカの夜」をゴダールは激しく批判したことで二人は決裂した…

フランス映画史の教科書的作品。
「ヌーヴェル・ヴァーグ」を代表する二人の友情と決別が、そのまま現代フランス映画の歴史を形作っていったことに、改めて彼らの存在の大きさを知った。

トリュフォー初の長編映画にして、映画監督としての桧舞台へのデビュー作となった「大人は判ってくれない」で、同じく俳優として鮮烈なデビューを果たしたジャン=ピエール・レオーが、二人の間で翻弄されつつも成長していく姿も記録されている。
「ヌーヴェル・ヴァーグ」の誕生と共に俳優として飛び立った彼は、良くも悪くも「ヌーヴェル・ヴァーグ」の象徴であり、歴史そのものと言えるのではないだろうか。
「大人は判ってくれない」のオーディションにおけるテストフィルムの映像も、「ヌーヴェル・ヴァーグ」の胎動を映し出していて貴重。


もう一点、本作では、ゴダール、トリュフォー、レオーの3人の他に、資料映像がほとんどを占める中で唯一新たに撮影されたシークエンスに、女優であり自らも映画を監督するイジルド・ル・ベスコが登場する。
ローラン監督は彼女の役割を「過去と現在の架け橋」としつつ、トリュフォーの映画の新年にも忠実に従ったのだという。
「映画を成功させるためには、画面に若くきれいな女性の顔を映し出すべきだ。」

「日曜日が待ち遠しい!」の“犯人”を思い出した。
久しぶりにまたトリュフォーが観たくなった…


ふたりのヌーヴェルヴァーグ ゴダールとトリュフォー
2010年/フランス  監督・製作:エマニュエル・ローラン
脚本:アントワーヌ・ド・ベック
出演:フランソワ・トリュフォー、ジャン=リュック・ゴダール、ジャン=ピエール・レオー、イジルド・ル・ベスコ