面白き 事も無き世を 面白く
住みなすものは 心なりけり

「シルビアのいる街で」

2010年09月26日 | 映画
ある朝。
とあるホテルの一室で目を覚ました青年は、街へと歩き出した。
2日目。
演劇学校の前にあるカフェで青年は、女性客ひとりひとりを観察し、ノートにデッサンを描いてゆく。
座る位置を変えたとき、ふとガラス越しにひとりの女性の姿を目にした彼は、カフェを出て行く彼女の後を追った。
彼は女性の後ろから、「シルビア!」と声をかけるが返事はない。
女性を見失いかけた青年だが、彼女が市電に乗り込む姿を見つけ、再び後を追って市電に乗り込んだ…


じーっと固定されたまま動かない画面によって切り取られる街の風景。
どこからともなく聞こえてくる人々の話し声や物音、通り過ぎる人々の姿。
映画が始まってすぐ、観客はフランスのとある街へと誘われる。

演劇学校のカフェで過ごす青年。
カフェはにぎわっていて、多くの女性客が様々な表情を見せている。
ひとりひとりに目を移しながらデッサンを描いていく青年。
そして偶然視界に入ったひとりの女性に、かつてこの街で愛を交わしたシルビアの面影を見て後を追う。

昔の恋人との遭遇が叶わなかった青年は、路面電車の駅で時を過ごす。
電車の到着を待つ人々。
風になびく佇む女性のロングヘアー。
路面電車の窓に映る様々な表情と、ときおり窓に見える(ような気がする)シルビアと見間違った美しい女性の顔。

聞くとはなしに聞こえてくる人々の会話や、通り過ぎる自動車や路面電車の音、自転車のブレーキ音…
いろいろな“街の音”をBGMに、人々の往来や表情をぼんやりと眺める。
そういえば最近、そんな時間の過ごし方をしていなかったな。

映画館のイスに座って、フランスの古都の風景をぼんやり眺めてぼんやり過ごすひととき。
それって実は、こっそりと贅沢…


シルビアのいる街で
2007年/スペイン=フランス  監督・脚本:ホセ・ルイス・ゲリン
出演:グザヴィエ・ラフィット、ピラール・ロペス・デ・アジャラ、ダーニア・ツィシー