功夫電影専科

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『決鬥死亡塔/人生遊戯』

2009-09-27 22:27:57 | バッタもん李小龍
決鬥死亡塔/人生遊戯
英題:True Game of Death
製作:1979年(1981年説あり)

●バッタもん李小龍(ブルース・リー)作品は数あれど、この作品ほど香港映画界の闇を浮き彫りにした物も珍しい。本作は『死亡遊戯』撮影中のサモハンが拉致られ、台湾で無理矢理撮らされたいわく付きの映画であることは皆さんもご存知の通り。ただ、どうも本作はそれだけの作品ではない事を伺わせる「影」を感じるのだが…(後述)
オープニングはバッタもん作品おなじみの葬儀シーンなどで構成されているが、どうも後から加工した映像を被せてあるらしい(カット割が明らかに映画のそれではない)。作中ではたびたび李小龍本人の映像が挿入されるが、これらも後から挿入された映像のようだ(余談だが、どうも本作は龍天翔のトレーニングシーンが冒頭に出るバージョンとラストに出るバージョン、ラストに出てナレーションが被るバージョンの3つがあるようだ)。
本編のほうはスーパースターの龍天翔が黒社会に目を付けられ、殺されかけるが復讐に転じて…と、本家『死亡遊戯』にそっくりの話が綴られる。恐らく作り手は本家『死亡遊戯』のプロットを参考にして製作したのだろうが、実際の作品そのものは壊滅的に酷い。
たぶん別の映画から拾ってきたと思われる龍天翔VS唐家拳のバトルを挟み、いよいよ物語はクライマックスへ。本作が面白くなってくるのは正にここからで、本家『死亡遊戯』のバイクチェイスやレッドペッパー・タワーの攻防が、忠実に(かつ中途半端に)再現されている。サモハン指導の功夫アクションはやはり一級品で、タワーで繰り広げられる死闘は意外と面白い。
しかしサモハンの事情を考えると少々複雑な心境になってしまうところであり、のちに『燃えよデブゴン』でバッタもん李小龍に対して吠えた気持ちも良く解るというもの。『燃えよデブゴン』で見せたあの怒りは、もしかすると本作に向けられたものだったのではないだろうか。

ところでこの作品、私がサモハンよりも気になったのが龍天翔だ。龍天翔は70年代に台湾でB級功夫片に出演し、当ブログでも紹介した『雙龍屠虎』はその時期の作品に当たる。ところが、80年代を境に龍天翔は突然ショウブラに現れるのである。台湾から突然抜擢されて…という流れは程天賜も同様だが、ショウブラ上陸の直前に龍天翔は本作に出演していた。龍天翔自身は黒社会の人間ではないが、このような粗悪品に出演していた事実は大きなマイナスイメージになったはず。それなのに、ショウブラはこの龍天翔という男をどうして受け入れたのか?
彼を擁立した張徹(チャン・チェ)監督の熱烈な支持があったという可能性も考えられるが、私は何か別の大きな力が働いている気がしてならないのだ。

一旦、話をショウブラに移そう。かつて、李小龍の獲得に失敗してライバル社のゴールデンハーベストに餌を与える結果となった事を、ショウブラ側は大層悔んでいたと聞く。李小龍に対する大きな憎悪は『実録ブルース・リーの死』という作品を生むが、それだけでショウブラの反論は終わったのだろうか。
『新死亡遊戯・七人のカンフー』という作品がある。こちらも黒社会産の映画として知られ、さる某氏の影が見え隠れする作品として有名だ。ところが書籍「ドラゴン大全科」では、『新死亡遊戯』がショウブラ作品として紹介されている。実際の製作会社はショウブラと無関係だったが、近年になって天映娯楽からショウブラ作品と共に『新死亡遊戯』が発売されるという異例の事態が起きた。
また、ショウブラからは呂小龍(ブルース・リ)というバッタもんスターが輩出されている。この呂小龍がショウブラを出た後にすぐ撮ったのが『龍門秘指』なる作品で、苗可秀・陳惠敏・羅烈という大物が大挙して出演していた。ショウブラ時代は単なる脇役でしかなかった男が、いきなりの初主演作(しかもバッタもん映画)で、ここまでの豪華キャストを容易に揃えられる事が出来ただろうか。ちなみに苗可秀は『龍門秘指』での出演後、古巣のハーベストから唐突にショウブラへと渡っている。

突然ショウブラに現れて主演作を撮るまでに急成長した龍天翔、ショウブラに関連したバッタもん李小龍たちの動向…果たしてこれらの出来事は何を意味するのか。いささか暴論気味な話となったが、もしかすると龍天翔を押し上げた存在の正体は意外な所に潜んでいるのかもしれない。

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