功夫電影専科

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佳本周也の世界(2)『学忍 GAKUNIN』

2017-07-18 23:43:57 | 日本映画とVシネマ
「学忍 GAKUNIN」
製作:2010年

●かつて歴史の影で暗躍した“忍者”と呼ばれる者たち。その血脈は現代にも受け継がれ、忍者を養成する南忍高校では多くの若者が修行に勤しんでいた。
そんな伝統ある学び舎に、謎多き転入生・留川真帆が現れる。彼女は同級生のみろと張り合い、玖導成近ら教師陣の授業では不遜な態度を取り続けていく。
実は留川はある目的のために行動していたのだが、その企みは突然の襲撃者たちによって阻まれる事となった。果たして襲撃者たちの正体とは? そして留川の目的とは? 今、若き忍者たちの心・技・体が試される!

 処女作の『B-ON』を皮切りに、数々の不良映画を世に送り出した佳本周也監督。氏は『ブラックスクール』『デス・ヤンキー(パッケージのデザインが『エクスペンダブルズ』そっくり!)』などのシリーズ作品を連発しました。
しかし、中には『ストイックガール』のように不良映画とは一味違った作品もあり、本作では忍者をモチーフにした漫画チックなコメディ活劇を目指しています。
 ただ、コメディとは扱いが難しいジャンルであり、笑いのクオリティは製作側の手腕に左右されます。その難易度は普通のアクション映画を撮るよりも遥かに高く、コメディ功夫片の本場である香港においても例外ではありません。
本作も何とか視聴者を笑わせようとしていますが、完成度については非常に難があります。軽めのギャグを延々と引っ張り続けたり、リアクションを取るたびに奇妙な効果音を入れるなど、見ていて反応に困る描写が方々で見受けられました。
キャストでは校長役にガッツ石松、その補佐役で猫ひろし、あとダンディ坂野も出演していますが、彼らの扱いはとても中途半端。笑いに走り過ぎて没個性的になった登場人物など、問題点は他にも無数に存在します。

 こうなってくると気になるのはアクションの質です。かつて『はいすくーる仁義』では、アクションにギャグを突っ込んだことで殺陣から迫力が消え、残念な結果を招いていました。
本作もギャグでストーリーが停滞し、ブルース・リーもどきの渡名喜忠信が嫌な予感を助長させてきますが、流石にここは佳本監督がビシっと決めてくれています。
 本格的なバトルが見られるのは中盤からで、亜未巻土(本作のアクション指導も兼任)らが生徒たちを各個に襲撃。混乱の中で留川と玖導の勝負が始まり、鋭い拳と蹴りの応酬が見られました。
この勝負は中途半端な形で終わってしまい、玖導を殺されたと勘違いしたみろと留川のバトルに移行しますが、本作で最も興味深いのはここから。両者は学校中を駆け回りながら、ちょっとしたマラソン・バトルを展開します。
 誤解から始まる勝負、忍術の限りを尽くして行われる戦い、そして互いに物陰でダメージを痛がりながらも虚勢を張る描写…ここまで書けば明々白々ですが、なんと本作は『龍の忍者』の真田広之VS李元霸(コナン・リー)を思いっきりパロっているのです。
ただ『龍の忍者』と違うのは、忍法という形で対戦者同士の姿が変化し、途中で玖導VS渡名喜などの変則的なマッチが行われる点でしょうか。中にはファンシーな着ぐるみ同士の殺陣もあり、これにはちょっと笑ってしまいました(爆

 その後、『龍の忍者』と同じ展開で和解した2人は亜未たちと遭遇し、矢継ぎ早にラストバトルが開幕。留川VS亜未、みろVS奈之未夜の2大バトルが始まり、いずれも喧嘩アクションとは違った雰囲気の激突を繰り広げます。
最後は乱戦の末に消化不良な結末となるものの、アクションに関しては今回も良好でした。ただし全体の評価としては厳しいものがあり、佳本監督にとってもコメディ全開の映画作りは大変だったのか、本作の続編は今に至るも作られていません。
さて次回は、本作でも活躍した留川・みろ・奈之のアクション女優3人が再び集結! 普通の不良映画に飽き足らない佳本監督が手掛けた、レディース・アクションの変わり種をご紹介します!

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2 コメント

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一応李小龍もどきがちゃんと強い (二白桃)
2017-07-19 03:20:34
不良作品にはそれほど興味がないので佳本作品はこの作品と『ストイックガール』ぐらいしか見たことないですが、どちらもあまり印象に残ってません。
多分私は『龍の忍者』の方を後に見たということもあり、それを意識していることはこちらを読んで初めて気付きました。
どうせなら真田広之の壁張り付きや黄正利の空中二人蹴りみたいな、私のような素人でも明らかに凄いとわかる派手な技をもっと披露して欲しかったです。
演者の技量は高そうだったので、不可能ではないでしょうから。
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返信。 (龍争こ門)
2017-07-26 04:33:56
二白桃さんこんばんは、お返事が大変遅れてしまい申し訳ありません。

>どうせなら真田広之の壁張り付きや黄正利の空中二人蹴りみたいな、私のような素人でも明らかに凄いとわかる派手な技をもっと披露して欲しかったです。
 本作はアクションよりもコメディに比重を置いているので、笑いが取れるムーブを重視したのだと思われます(普通の不良映画だと結構凄いことやってます)。
劇中のアクションは総じて平均以上のクオリティを保っていますが、中にはギャグのせいで中途半端になったファイトもあり、笑えるアクションの構築がいかに難しいかが窺えます。
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