功夫電影専科

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『アンジェラ・マオ レディ・クンフー/密宗聖拳』

2015-11-22 22:56:50 | 女ドラゴン映画
「アンジェラ・マオ レディ・クンフー/密宗聖拳」
原題:密宗聖手
英題:The Himalayan
製作:1976年

●チベット族の陳星(チン・セイ)は虎爪拳の名手で、恐るべき野望に燃えていた。彼は弟の凌漢(チン・ハン)を漢族の豪商・關山の元に婿入りさせ、富や名声を独占しようとしていたのである。
計画に同意しない凌漢を殺した陳星は、別人(凌漢の二役)を身代りに仕立てて潜り込むと、内通者の愛人・王恩姫や手下を率いて暗躍を開始。ニセ凌漢と結婚した茅瑛(アンジェラ・マオ)と、彼女を密かに想う使用人・譚道良(レオン・タン)に目を付けた。
 まず虎爪拳の秘術によって茅瑛の口を利けなくさせ、ニセ凌漢は「嫁に暴力を振るわれている」と關山に直訴する。「茅瑛は浮気していた使用人の元に向かった」とも証言し、彼の視線を王恩姫(茅瑛に変装!)に誘惑させていた譚道良に向けさせた。
その隙に陳星はニセ凌漢を刺殺し、気絶していた彼女にその罪を擦り付けてしまう。こうして茅瑛は弁解もできぬまま追放され、譚道良は陳星に襲われて逃走。心労によって弱りきった關山に代わり、とうとう陳星が天下を掴む事となった。
 しかし、悪の栄えた例はない。ニセ凌漢の正体は黄楓の執事・韓英傑(ハン・インチェ)によって見破られ、落ち延びていた茅瑛&譚道良も陳星の恐るべき計画に気付いた。そして復讐を遂げるため、2人はチベット密教の拳法を学んでいく。
韓英傑が口封じに殺される中、名実ともに全ての覇権を握った陳星のもとへ茅瑛たちが現れる。大勢の手下に加え、チベットから来た洪金寶(サモ・ハン・キンポー)が彼女らの前に立ちはだかるが…?

 『女活殺拳』以来、何度となくコンビを組んできた黄楓(ウォン・フェン)監督と茅瑛。本作では実際にテコンドーの達人である譚道良を迎え、チベットでの大々的なロケーションを敢行しました。
それだけでも特徴的な本作ですが、最も注目すべきはストーリー構成にあります。この作品では主人公の茅瑛たちではなく、悪役である陳星の悪事をつぶさに描写しており、綿密かつ用意周到な犯行が展開されていくのです。
 思えば、黄楓と茅瑛のコンビもこれで6本目…そろそろ彼女が暴れるだけではマンネリが生じてくる頃合だったのでしょう。だからこそ監督は陳星を引き立たせることに徹し、今までと違うインパクトを求めたのだと考えられます。
その弊害として、茅瑛と譚道良が陳星に存在感で負けていたり、陳星のやたら濃いベッドシーン(苦笑)が展開しますが、作品そのものの出来は今回も良好。冗長な修行シーン以外は文句の付けどころが無く、実にクオリティの高い作品でした。

 功夫アクションについても素晴らしい物を見せていて、陳星の力強い動きはブレイク当初を彷彿とさせます。対する茅瑛も足技中心の殺陣を余裕でこなし、見事なフットワークを見せる譚道良とともに場を盛り上げていました。
ラストバトルではファイトの質も最高潮に達し、ここまで劣勢に立たされ続けていた主役2人が、並みいる敵をバッタバッタと蹴り倒すさまは実に痛快です(ストーリーがストーリーだけに、陳星の凄まじい最期もなかなかのカタルシスを感じます)。
どのへんがチベット密教の拳なのか解りづらいですが、きちんと修行の成果が役立っているのも◎。腕に覚えのあるキャストにはもれなく見せ場が配置されており、茅瑛の主演作をチェックするなら本作は絶対に外せない!と言えるでしょう。

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