功夫電影専科

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『虎猛威龍/魔神威龍/紅狼』

2010-07-28 23:41:06 | カンフー映画:珍作
虎猛威龍/魔神威龍/紅狼
英題:The Red Wolf
製作:1995年

▼本作は袁和平(ユエン・ウーピン)の監督作としては後期に位置する作品で、今のところ袁和平が撮った最後の現代アクションものである。主演は『プロジェクトA2』でジャッキーの部下を演じた何家勁(ケニー・ホー)だが、本作のメインはなんといっても倪星(コリン・チョウ)の活躍っぷりだろう。
『全力反弾』で銀幕デビューを果たした倪星は、サモハンや羅鋭(アレクサンダー・ルー)など各方面から注目されるほどのポテンシャルを持ち、悪役として李連杰や甄子丹とも真っ向勝負を演じた本格派だ。『マトリックス・リローデッド』でハリウッドデビューを飾り、近年は『ドラゴン・キングダム』でジャッキー&李連杰を相手取るなど、まだまだ勢いの衰えぬ功夫スターの1人である。惜しむらくは、悪役路線へ転向するタイミングが余りにも早すぎたため、主演俳優として代表作を残していないこと。今でも主演作を撮るのは遅くないと思うのですが…。

■物語は豪華客船を舞台にした『ダイハード』で、船員の何家勁&女スリの鍾麗[糸是](クリスティ・チョン)が、乗客を人質に取ったテロリストと切った張ったの大勝負を繰り広げるというものだ。テロリストのメンバーは倪星を筆頭に、女殺し屋の呂少玲(エレイン・ルイ)、サモハンと『死角都市・香港』で闘ったロバート・サミュエルズとロイ・フィラー、袁和平と『クライム・キーパー』でも組んだ曹榮など、"いかにも"な面々が揃っている。
豪華客船のクルーに化けて潜入した倪星一味は、船長から金庫室のマスターキーを奪い去ると、船の指揮系統を掌握。何家勁は一味が船長を射殺したところを目撃するが、倪星の策略によって監禁されてしまう。時を同じくして鍾麗[糸是]も一味の正体を知り、何家勁と共に外部への連絡を試みるのだが…。ちなみに、何家勁を助けようとして殺された親友に扮しているのは、『笑太極』でドラ息子を演じた陳志文である(嫌な奴をよく演じる彼が、本作のようなイイ人に扮するのは非常に稀である)。
 結局、事態は更なる大事件に発展。鍾麗[糸是]を含む乗客が人質となり、残された何家勁は孤軍奮闘の戦いに身を投じていく。一方、人質サイドでは呂少玲の挑発によって内乱が発生し、支配人の黎小田(マイケル・ライ)たちが命を落としていた。鍾麗[糸是]はシングルマザーから託された少女と共に逃げ出し、ヤケクソ戦法で呂少玲を撃破!何家勁とも合流し、いよいよ倪星との最終決戦に挑むが、恋人だった呂少玲を殺された倪星も怒りに燃えていた。
激しい銃撃戦の末、倪星は少女の体に爆薬を巻きつけて何家勁らをおびき出し(『ラッシュ・アワー』の元ネタはこれか?)、最後の闘いが始まった。果たして、生き残るのは何家勁か?倪星か?

▲そんなに悪い出来ではないのだが、いまひとつインパクトに欠ける作品だ。ストーリーは前述の通り『ダイハード』そのまんまで、本作ならではの要素といえるものが何一つとして見出せない。メインキャラが死んでしまう展開はギョッとしたが、これもサモハン映画によくある「要らなくなったキャラの切捨て」を連想させてしまい、逆に悪い印象を与えている。本作は興行的に大失敗したそうだが、こんなお話では失敗したのも当然である。
次に功夫アクションに関してだが、袁和平お得意のシチュエーション・バトルは少なめで、せいぜい滑る床を使った闘いや電流デスマッチがあった程度。かつて甄子丹を起用して現代アクションを撮っていた頃は、ザコとの対決からタイマン勝負に至るまで趣向を凝らしていたのに、本作での簡素さはとても残念である。最後の何家勁VS倪星はそれなりに良かったが、爆弾をセットされた少女を殺陣に絡めていればもっと面白そうなバトルになったはず。『太極神拳』のときもそうだったけど、当時の袁和平は絶不調だったのだろうか?
内容そのものは不幸な出来だったが、倪星と袁和平が初めて手を組んだ作品。これが後に『マトリックス・リローデッド』や『SPIRIT』『ドラゴン・キングダム』への出演に繋がったと思うと、無下には否定できないところであります(爆

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