功夫電影専科

功夫映画や海外のマーシャルアーツ映画などの感想を徒然と… (当blogはリンクフリーです)

『マッドクンフー 猿拳』

2016-01-11 20:13:50 | ショウ・ブラザーズ
「マッドクンフー 猿拳」
原題:瘋猴
英題:Mad Monkey Kung Fu
製作:1979年

▼今回は『天中拳』に続いて、猿にちなんだ作品を再びセレクトしてみました。猿といえば猿拳、猿拳といえば『モンキーフィスト/猿拳』!…はもう紹介済みなので、本日は巨匠・劉家良(ラウ・カーリョン)の監督作でいってみたいと思います。
本作は香港映画界をリードしていたショウ・ブラザーズにて、『酔拳』のヒットに追い付け追い越せとばかりに企画された作品の1つです。この手の便乗作過去にいくつかレビューしていますが、どれもある程度の質を保っていました。
そんな中、功夫映画の大家である劉家良が手掛けた本作は、他の便乗作を遥かに凌駕するアクションを構築。“功夫良”の二つ名に恥じない、素晴らしいファイトを残しています。

■物語は劇団を率いる劉家良が、楼閣を経営する羅烈(ロー・リェ)の元に招かれるところからスタート。実はこの男、劉家良の妹・惠英紅(ベティ・ウェイ)に下心を抱いており、彼女を我が物にしようと企んでいたのだ。
その結果、夜這いの濡れ衣を着せられた劉家良は両手を潰され、妹を奪われた挙句に猿回しへ身を落とす事となる。その後も悪党たち(実は羅烈の手下)による嫌がらせが続き、商売道具の猿を殺されてしまう。
 そんな彼を慕い、親身になってくれたのが好青年の小候(シャオ・ホウ)であった。仕事の手伝いを買って出た彼は、度重なる嫌がらせに対抗すべく、「おいらに猿拳を伝授してくれ!」と直訴する。
かくして2人は山籠もりに入り、指やバランス感覚を鍛える特訓に没頭した。その後、一旦下山することになった小候はリベンジを敢行するも、別格の強さを誇る羅烈に敗北。一時は殺されそうになるが、惠英紅の機転によって救われた。
 彼女が師匠の妹と知り、なんとか救出を試みようとする小候であったが、やはり相手は手強い。結局、奮闘むなしく惠英紅は殺され、逃げ帰った弟子から「全ては羅烈の陰謀だった」と聞かされた劉家良は、特訓の総仕上げに突入する。
そして心身ともに充実した猿拳師弟は、いよいよ仇討ちのために楼閣へと向かう。…今、仇討ちのゴングは鳴った!

▲古来より、猿拳映画というものは幾つか作られてきました。大聖劈掛拳の大御所・陳秀中が主演した『猴拳寇四』に始まり、元彪(ユン・ピョウ)の軽快さが光る『モンキーフィスト』、陳觀泰(チェン・カンタイ)の監督作である『鐵馬[馬留]』等々…。
これらに対し、劉家良は自らの得意とする猴拳の妙技と、小候による京劇仕込みのフットワークに全てを賭けたのです。その成果は皆さんもご存じの通り、惚れ惚れとするようなパフォーマンスの連続となっていました。
 冒頭、気を良くした劉家良のデモンストレーションからして、その動作は実に軽やか。実際に内弟子であった小候との演武では、徐々に動きがシンクロしていく様を見事に演じ切っています。
ラストバトルでは、小候がジャッキーや元彪も驚くほどの身軽さを見せ、怒りを内に秘めた劉家良も迫真の殺陣を披露(ちょっと李小龍が入ってるかも)。そんな彼らを真っ向から迎え撃つ羅烈との決戦は、手に汗握る名勝負に仕上がっていました。
 と、このようにアクションだけなら芸術的なレベルなのですが、本作のストーリーはやや小ぢんまりとした物になっています。ギャグに冗長さを感じる場面も多く、もう少し洗練されていたら文句なしの傑作になれたのに…と悔やんでなりません。
しかし先述した過去の猿拳映画にも負けない、圧倒的なボリュームのアクションを誇っているのも事実。のちに猴拳を再演した『超酔拳』ともども、功夫映画ファンには必見の作品と言えるでしょう。

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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
こんばんは。 (ひろき)
2016-01-14 00:35:04
龍争こ門さん、こんばんは。
おお~ついに、アクロバット系カンフー映画の大傑作である、「マッドクンフー猿拳」のレビューですか!!!!!
お待ちしていました。
確かに、内容も薄くて、ギャグも、スベっていましたが、アクションのレベルは半端なく、物凄くて、最高でしたね。
本作は、シャオ・ホウの超絶猿拳を楽しむための作品と割り切って見るのが吉ではないでしょうかね。
これだけの作品が、何故、日本で、80年代に、日本での劇場公開、日本でのビデオ(VHS)化、日本でのテレビ放送されなかったのが不思議ですよね。
アクロバット色の強いカンフー映画として、ユン・ピョウ主演の「モンキーフィスト・猿拳」あるいは、ピーター・チャン主演の「ドラゴンカンフー・龍虎八拳」と共に、最高ランクの作品だと思います。
もう、シャオ・ホウの超絶アクションの数々に酔いしれてしまいました。
人々の肩に飛乗ってのブリッジやバク転、ユン・ピョウに匹敵する位の超高速の連続バク転、一人ローリングクレイドルホールドなど、どの技や動作も、凄まじかったですね。ラストバトルのラウ師匠とシャオ・ホウと多数の手下の対決は、絶妙なコンビネーションを披露してくれて、まるで、ダブルライダー対ショッカーの戦闘員を彷彿とさせて、手に汗握りましたし、そして、シャオ・ホウとラスボスのロー・リェとのラストバトルも、変幻自在なトリッキーな動きで翻弄したり、悲しみで怒りを爆発させた拳技で叩きのめしたり、正に、「名勝負」でしたね。決着の付け方も、難易度の高いウルトラE級の空中技を炸裂させて、度肝を抜かれてしまいました。
仰るとおり、功夫映画ファンには必見の作品と言えるでしょうね。
現在、あの頃に一番近いこと(アクロバットを交えた超絶アクション)をやってくれているのは、トニー・ジャーあるいは、スコット・アドキンス辺りだと思うのですが、もっと、沢山、身体能力の優れた武打星の登場を期待したいですね。日本だと、「るろうに剣心」シリーズの佐藤健さん、「琉球バトルロワイアル」の丞威さん、映画「フルスロットル」の日本宣伝部長でパルクールパフォーマーのZENこと島田善さん辺りも、面白い存在だと思います。

●日本の若手のアクロバットチームのパフォーマンス動画でございます。連続バク転が凄いので、お時間のあるときにでも、是非ご覧になって下さいませ^^
近い将来、物凄いアクションスターが誕生するかもしれませんね。
https://www.youtube.com/watch?v=MIB5ZpiMG2I

それでは、失礼致します。
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返信。 (龍争こ門)
2016-01-14 21:11:19
 ひろきさん、改めましてこんばんは。
やはりこの手のアクロバットなアクションは、ひろきさんもお気に入りだったようですね。

>これだけの作品が、何故、日本で、80年代に、日本での劇場公開、日本でのビデオ(VHS)化、日本でのテレビ放送されなかったのが不思議ですよね。
 本作に限らず、ショウブラザーズ作品の配給権はかなり高かったようです。日本では『燃えよドラゴン』が登場するまで、香港に映画産業がある事自体知られていませんでした。
そのため、ショウブラ作品が売り込まれても手を出す会社はほとんどおらず、『燃えよ~』や『Mr.Boo』などのゴールデンハーベスト作品がヒットした事もあって、日本ではこちらの系統がメジャーになっていきました。
もしショウブラ作品が先に当たってたら…と考える時もありますが、そうなっていたら今の日本における香港映画の価値観は、大きく変わっていたでしょうね。

>もっと、沢山、身体能力の優れた武打星の登場を期待したいですね。
 近年は多くのアクションスターが出現していますが、さすがにユンピョウや小候レベルのバネを持った方はなかなか出てきませんね。
ちなみに私としては『キルトロ』のマルコ・ザロール、若干出遅れていますが『ドラゴン・ナイト』のマット・マリンズがオススメです♪
返信する
こんばんは。 (ひろき)
2016-01-16 03:20:11
龍争こ門さん、こんばんは。
ご返信ありがとうございます。

>ちなみに私としては『キルトロ』のマルコ・ザロール、若干出遅れていますが『ドラゴン・ナイト』のマット・マリンズがオススメです♪

お勧めして頂いたマルコ・ザロールとマット・マリンズの動画を探して、見てみました。
仰るとおり、お二人共、足腰のバネを活かしたアクロバティックなアクションがカッコ良いですね。
「仮面ライダードラゴンナイト」は、未見ですが、「仮面ライダー龍騎」の海外版だそうですけれど、中々、面白そうですね。
昔、「ドラゴン・ロード」で、ジャッキー・チェンが壁の壁面を駆けあがり、宙返り(壁宙)する動きを見て、度肝を抜かれた経験がありますが、近年では、ああ言った神技を軽々と、やってのけるアクションスターが増えましたね。一番の理由は、近年の海外でのパルクールやトリッキング(XMA)のブームでしょうね。
動画を見てみると、マルコも、マットも、トリッキング(XMA)やパルクールをかなり研究されているなあ~って言う印象を受けました。
トリッキング(XMA)の技で、空中でクルクルと回転して蹴りを炸裂させる動き、いわゆる、コークスクリューキックをバンバン決めていました。あとは、ウェブスターと呼ばれる前方宙返り蹴り、バク宙蹴り、壁宙、かつてのカサノバ・ウォンやドニー・イェンを彷彿とさせるような空中開脚蹴り、その他各種アクロバットや超絶アクションを立ち回りに上手い具合に取り入れていました。
それ以外だと、スコット・アドキンス、ジージャー(「チョコレート・ファイター」でのメガネにジャージ姿の中ボスとの戦いで、コークスクリューキックを披露していました。)、「チョコレート・バトラー」に主演したナ・テジュ、「トム・ヤム・クン」で、トニー・ジャーと戦った男として有名なベトナムのジョニー・グエン、そして、日本の丞威さんなどなど、コークスクリュー(空中回転蹴り)の名手は沢山いますね。
それから、日本の特撮作品のスーツアクターの皆さんも、動きの良い人は多いですね。

●マルコ・ザロールの面白い動画を発見しました。

https://www.youtube.com/watch?v=n-ZY-sVMDO4

●トリッキング(XMA)の解説&紹介の動画でございます。

https://www.youtube.com/watch?v=xhYB4KAr2rE

それでは、失礼致します。
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返信。 (龍争こ門)
2016-01-21 15:37:37
 ひろきさんこんにちは、お返事お待たせしました。
マット・マリンズはルックスもアクションも抜群ですが、なかなか「当たり」といえる作品に巡り合えず、いまいちメジャー化できていない点が惜しまれます。
一方、マルコ・ザロールは主演作をいくつか撮っており、『ミラージュ』(ご紹介頂いた動画にもチラッと映っていますね)等が既に日本発売されています。
仰る通り、他にも高い実力を持った格闘スターたちは数多いるので、彼らの今後の動向が実に楽しみですね。
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