功夫電影専科

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「酔拳」に挑んだ男たち(3)『廣東[見]仔玉/烈火神功』

2014-03-10 23:06:18 | ショウ・ブラザーズ
廣東[見]仔玉/烈火神功
英題:Kid from Kwangtung
製作:1982年

●『酔拳』の大ヒットにより、同作に出演したキャストは数々の作品で引っ張りだことなりました。前回は師匠役を演じた袁小田(ユエン・シャオティオエン)について触れましたが、今回は殺し屋・鉄心に扮した黄正利(ウォン・チェン・リー)の便乗作を取り上げてみましょう。
これまでに彼は『南拳北腿』や『鷹爪鐵布杉』などで素晴らしい仕事を見せており、『蛇拳』『酔拳』への出演によって悪役功夫スターの代表格となります。その実力の高さを見込まれた黄正利は、やがて”『酔拳』に出演した俳優”という冠から解き放たれ、次第に模倣品ではない映画にも出演するようになっていきました。
他の『酔拳』共演者たちが同じような役をやらされていたのに対し、テコンドー仕込みの足技で一歩先を駆け抜けた黄正利。この類稀なる俳優を起用せんとする映画製作者は多く、本作で彼は香港映画界の頂点に立つショウ・ブラザーズ社の作品に参加しています。

 当時、ショウブラは『酔拳』に便乗した作品をいくつも撮っていましたが、アクション的には間違いなく本作がベストの出来だと思われます。粗筋はとてもシンプルで、悪ガキの汪禹(ワン・ユー)と蒋金(ジャン・ジン)が清朝と反政府派の戦いに巻き込まれ、それぞれ家族を殺されて仇討ちを目指す!といった感じのお話です。
ヒロインに楊[目分][目分](シャロン・ヤン)、主役2人の先生にして師匠役を任世官、ヒロインの母親を黄薇薇が演じています。黄正利は清朝が放った刺客として暴れ回り、先述した面々と白熱したバトルを繰り広げました。
 とりわけ興味深いのが任世官VS黄正利で、ともにジャッキー映画で最大の強敵として君臨した2人のバトルは壮絶の一言。相変わらず黄正利の見せる足技は凄まじく、得意の三段蹴りもショウブラのスクリーンで見ると新鮮に感じるから不思議です(笑
もちろん他のキャストも奮闘していて、主演の汪禹や珍しく大役を任された蒋金の立ち回りも見応えバッチリでした。脇役の元や關鋒なども見せ場をもらっており、功夫映画ファンは必見の作品といえますね。

 これらのアクションを振り付けたのは本家本元にも参加した徐蝦(ツィ・ハー)で、本作では監督も兼ねています。彼は駆け出しの頃からショウブラで働いていたため、ショウブラが手掛けた『酔拳』便乗作の武術指導を何度も請け負いました。
本作ではオープニングから将軍令を流し、元祖『黄飛鴻』シリーズにあった鶏とムカデの対決を再現するなど、いつも以上に『酔拳』を意識した作風に徹しています(鶏とムカデは李連杰の『烈火風雲』にも登場)。
 しかしコメディ描写がしつこかったり、終盤に人死にが多くなったりと稚拙な部分も多く、ストーリーの出来は微妙と言わざるを得ません。また、本作が製作された頃はコメディ功夫片ブームも終息に向かっており、製作時期を逸していた感もあります。
とはいえ、黄正利inショウブラという点だけでも大きなインパクトを持つ本作。黄正利は今も映画界に身を置いていますが、いつかまた熱気あふれる彼のアクションが見てみたいものです。次回は、第2のジャッキーを目指した若者たち…京劇出身の若手俳優が出演した作品に迫ります!

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