猫じじいのブログ

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地球温暖化のように科学的事実だと迫られたら、あなたはどうする?

2022-01-11 22:26:09 | 科学と技術

マイケル・サンデルの『実力も運のうち 能力主義は正義か?』(早川書房)の中に、温暖化ガスによる気候変動の話がでてくる。

バラック・オバマが、温暖化の話は科学のことで、科学を受けいるのは smartで、科学を受け入れないのは smartでないと言ったという。この smart というのは、日本語で言う「頭が良い」という意味である。早川書房の訳では「賢明」という漢字を当てて、「スマート」というルビをふっている。「頭が良い」というニュアンスだと知ってこそ、サンデルがオバマにつっかかる気持ちがわかる。

自分の目で確かめられない科学的事実をもとに、政策提案の受け入れを迫られるのは、じっさい困る。納得のいかない政策の受け入れを科学の権威でもって迫られ、「拒否する権利があるが、拒否するなら、あなたは頭が悪い」と言われても困る。

サンデルは、エリート政治家たちが、さらに、それを金儲け(投資)の話にしてしまい、「スマート政策」として押しつけてくると言う。

迫る政治家は、本当にその科学的真理が導かれたロジックを説明でき、それが正しいという根拠を示せうるのか。

温暖化は、理屈の上では、太陽から地球にくるエネルギーが、温暖化ガスによって地球から逃げて行かなくなることで起きる。だから、大筋では反対できない。しかし、じっさいは細かな話である。

気候変動は、天気予報のように、流体力学のナビエストークス方程式を解くという話しではない。毎日の温度変化は10度前後あり、季節変化は30度前後の温度差がある。その中で、二酸化炭素ガスが増えれば100年で1度あがるか2度上がるかを、議論しているのが、地球温暖化の問題である。

逆に、温暖化は科学の話だと言われて、詳細を吟味せず、信じているフリをする人間のほうが「頭が悪い」と私は思う。

4日前に朝日新聞《私の視点》に、老気象学者の近藤純正が地球が温暖化しているかどうかを、直接観測するために「測風塔」に温度計を設置することを提案していた。地表の温度は都市化という環境の変化を受け、地球温暖化の証明にならないからである。しかし、「測風塔」に温度計を設置しても、1年に平均気温が0.01度あがるか、0.02度上がるかを実測できるとは、私には思えない。

温暖化ガスというのは、短い波長の電磁波(可視光、紫外線)を通し、長い波長の電磁波(赤外線)を吸収するガスをいう。大気のほとんどを占める窒素ガスや酸素ガスは等核2原子分子だから、赤外線を吸収しない。それ以外の多原子分子はすべて赤外線を吸収する。

だから、アンモニアを燃やして 二酸化炭素ガスは減っても、新たな温暖化ガス、二酸化窒素ガスが増えるなら問題解決にならない。温暖化ガスの総量が問題なのである。したがって、アンモニアを燃やして得られるエネルギーとアンモニアが燃えることによって生じる温暖ガスの赤外線の吸収量を、炭素の燃焼エネルギーと二酸化炭素ガスの赤外線吸収量とを比較しないといけない。その議論をアンモニアを推奨する人から聞いたことがない。

毎日の気象は、航空機設計で使っているものよりも変数の多いナビエストークス方程式をコンピュータで解くことで、1週間程度は予測できる。しかし、初期条件を正確に知っているわけでもなく、それに加え、コンピュータはもともと正確な計算ができるわけでなく、掛け算や足し算をするたびに誤差を生ずる。だから、エラーがつもって、長期になると、予測不可能になる。

100年先を予測する気候変動のモデルは、気象モデルとは異なって、スーパコンピュータを使っても、科学的に正しい結果を与えるわけでない。エネルギー保存則と科学者の直観と確率過程の仮説に基づくモデルにすぎない。モデルが適切であれば、過去の気候を統計的に再現できるということにすぎない。逆は必ずしも真でない。調整パラメータの多いモデルは、パラメータが多いせいで、偶然、過去の気候を再現できることがある。未来は予見できない。

しかし、現実をフィットするに使われるパラメータは、いくつあるのだろう。20か40なのか。もっとなのか。しかも、過去の測定値は限られた場所しかない。近藤の指摘する都市化のような局所的事情もある。年平均も本当かあやしい。

これは気候温暖化だけの問題ではない。現代では、科学と言われても、それにたずさわっている科学者の良心を信じるしかないことが多い。科学者は意識的にウソをついているのではない、と信じるしかない。じっさいには、人間の無知や軽率ゆえに、科学的事実は、誤りだったことは常にある。また、自分の栄達のために大げさに結論を宣伝したり、意識的にウソをでっちあげしたりする人もいる。もちろん、簡単に実測できることであれば、誤りはいずれ訂正されるかもしれない。

サンデルが言うように、科学的事実を受け入れられない人びとを「頭が悪い」とバカにしてはいけない。そして、科学的事実と言われていることに、それが誤りだったら、という場合のプランを用意すべきである。これは、現在の新型コロナ禍にたいしても言える。



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