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素人による中国観察。web上で集めたニュースに出鱈目な解釈を加えます。「中国は、ちょっとオシャレな北朝鮮 」(・∀・)
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続・報道戒厳令。
中国観察
/
2006-09-11 19:55:07
前回の続報「報道戒厳令」いきます。まずはおさらいから。……NHKが法令の内容を手際良くまとめて報じていたので、そこから一部を抜粋します。
●中国 外国通信社の配信に規制(NHK 2006/09/11/05:01)
http://www3.nhk.or.jp/news/2006/09/11/k20060911000028.html
http://www3.nhk.or.jp/news/2006/09/11/d20060911000028.html
中国政府は、外国の通信社が中国国内で記事を配信する際には、国営新華社通信の許可を得ることを義務づけ、中国の安定を損なうような記事の配信を禁止するなどとした新たな規則を公布しました。
外国の通信社が中国国内のメディアに記事や写真を配信する際には、新華社通信の事前の審査と許可を受けなければならず、直接、中国国内のメディアと契約を結ぶことを禁止するとしています。
配信を禁止する記事の内容として、中国の国家の統一や主権を危うくさせるものや、中国の安全や利益を損なうもの、さらに、中国の宗教政策に違反するものなど10項目をあげています。
中国政府としては、国内メディアの管理を強めるとともに、中国国内のメディアに対する外国通信社の記事の配信を制限する目的もあるものとみられます。
――――
……とのことで、焦点は、
●外国通信社が中国国内に記事を配信する際は新華社による事実上の検閲が必要となる。
●外国通信社と配信契約を結んでいる中国国内メディアが外電を報じる際には事前に新華社の許可が必要。
●中国国内メディアが外国通信社と配信契約を結ぶ際には新華社の許可が必要。
●外国通信社は中国本土において契約者を増やす活動(営業)を行ってはならない。
●報道禁止とされている内容が曖昧で、当局による恣意的な解釈で「NG」とすることが可能。
といったところでしょう。報道禁止の10項目(第11条)を改めて並べておきますと、
(1)「中華人民共和国憲法」が定めた基本原則に違反しているもの。
(2)中国の国家統一・主権及び領土保全を破壊するもの。
(3)中国の国家安全と国家としての栄誉、国益に危害を及ぼすもの。
(4)中国の宗教政策に違反し、邪教や迷信などを推し広めるもの。
(5)民族間の敵意や民族間差別を煽動し、民族の団結を破壊するもの。民族の風俗習慣を侵害し、民族感情を傷つけるもの。
(6)デマをまき散らして中国経済や社会秩序、中国の社会安定を破壊するもの。
(7)わいせつ・暴力行為を推し広めるもの、あいるは犯罪教唆となるもの。
(8)他人を侮辱・誹謗し、他人の合法権益を侵害するもの。
(9)社会道徳または中華民族の優秀な文化伝統に危害を及ぼすもの。
(10)その他、中国の法律、行政法規が禁止しているもの。
――――
……やっぱり第9項の「優秀な文化伝統」というところで箸を落としてしまいます(笑)。自国の文化・伝統に「優秀」の2文字をわざわざ加えるあたりがイタいです。世界の中心を自認する中華意識というプライド、そしてアヘン戦争以来の情けなさすぎる近代史というトラウマ。
このプライドとトラウマのバカ高さがいずれもビョーキ、ではなくまさに病気、つまり医学が扱う範疇に入るほど深刻化していることが、この「優秀」という2字からみてとれるように思います。
「おれたち中国人はアジアの懦夫ではないぞ!」
と30年ばかり前に映画でタンカを切ったのはブルース・リーでしたが、この言葉を未だに念仏のように唱え続けていないと精神の平衡が保てないのでしょう。最近では温家宝や孔泉、李肇星などが公の場でこの症状をさらしてしまっていますね。おいたわしい限りです(笑)。
――――
さてこの法律、とりあえず「外国通信社による中国本土での報道配信管理弁法」と直訳しておきますが、タイトルの通り一種の報道に関する戒厳令といっていいでしょう。まあ戒厳令としてしまうと軍政ということになるので穏当ではありませんが、当局による大幅な報道統制強化であることは確かです。
ただその範囲は中国本土に限定され、日本など海外諸国が直ちに影響を受けるという部分は少ないでしょう。特に日本のマスコミなどは中共に対しては有り難迷惑なほど優等生のスタンスを貫いていますからね(笑)。規制の対象も中国本土における外国通信社(香港・マカオ・台湾を含む)の自由な情報発信と中国国内メディアの外電引用にあります。
とはいえ、外国通信社として新華社に認めてもらうためには優等生であることが条件になっていますし(第5-7条)、素行不良を重ねると最高で免許取消という何段階かの処罰を新華社から喰らうことになります(第16条)。
海外に配信する分にはこの法律の対象外のようですが、その内容によっては新華社の心証を害することになるので、報道側も記事の内容に手加減を加えるケースが出てこないとも限りません。とくに腰砕けになりやすいのは日本のメディアでしょう(笑)。
――――
ところで新華社、新華社、新華社。……どうして新華社?ということになりますが、新華社は国営通信社とはいえ国有企業ではなく、部クラス(日本の省に相当)の国家機関であり、そのトップである社長も格でいえば閣僚級ということになります。例えば英国統治時代の香港で中国の出先機関、一種の中国大使館的役割を務めていたのが香港新華社でした。
報道政策を仕切るのは国務院新聞工作弁公室の仕事になるかと思いますが、報道の実務、つまり情報発信は新華社が司ります。例えば米中でも日中でも構いませんが、重要な相手国との首脳会談が行われて共同声明が発表された場合、中国国内メディアは新華社が配信したものを使わなければなりません。
そういう経緯から外国通信社や中国国内メディアに目を光らせる役割が新華社に回ってきたのだと思います。ちなみに香港紙『太陽報』によると、現在の新華社社長である田聡明(党委員会書記兼任)は、胡錦涛がチベット自治区のトップであった時期に同自治区党委員会副書記を務め、故錦涛の片腕として働いた過去があるそうです。
……こういう人脈関係の話になると香港紙または『争鳴』『開放』『動向』など香港の中国情報誌の独壇場、といった観がありますね。一方でおカネが絡んでいると指摘する向きもあり、新華社が外国通信社と中国国内メディアの仲介役に回ることで、統制強化だけでなく幾許かのコミッションを手に入れる狙いがある、との報道もあります。
●『太陽報』(2006/09/11)
http://the-sun.orisun.com/channels/news/20060911/20060911022712_0000.html
http://the-sun.orisun.com/channels/news/20060911/20060911022712_0000_1.html
ちなみに、香港の記者協会は早くもこの法律に懸念を示し、香港政府に対し善処を求める声明を発表しています。
●『明報』(2006/09/11)
http://hk.news.yahoo.com/060910/12/1ss5o.html
――――
私自身はこの法律に、危機感をみなぎらせ、気合い十分で発足した胡錦涛政権の挫折をみる思いがします。
以前から再三書いていることですが、胡錦涛の使命は「構造改革」にあると私は考えています。トウ小平、江沢民時代の尻拭い、といってもいいのですが、20数年にわたる改革・開放政策で浮き彫りになった負の部分、例えば貧富の差、地域間格差、都市と農村の差、業界間格差、汚職の蔓延、環境破壊……などといった問題を改善することです。
胡錦涛は当初、戒厳令的な厳しい統制を各面で敷いておいて、強権政治の下でこうした「負の部分」を荒療治で一気に片付けてしまおうとしていたのではないか、と私はみていました。ですから発足当初の胡錦涛政権が報道やネット規制などに力を入れたことは当然と考えていましたし、「開明的な政権だと思っていたのに……」という中国知識人たちの観察眼のなさを嘲笑していました。
ところが、先代である江沢民が胡錦涛の後ろ楯にならず、むしろ足を引っ張るような動きをしていたこともあり、胡錦涛の指導力不足が露呈してしまいました。江沢民が総書記になったときにはトウ小平というカリスマのバックアップがあったのと対照的に、胡錦涛は恵まれない環境の下で仕事をしなければならなかったのです。もちろん、強権政治など実現しようがありません。
一方で、改革・開放の骨子が競争原理の導入と分権化にある、ということが具体的にみえる時代になっていました。競争原理の導入というのは、それまで中央集権型の計画経済体制だったのを、市場による調節機能に委ねる部分を増やすということです。競争に負けて淘汰されても、国は昔のように面倒をみてやらないぞ、というものです。
新聞業界の激しい競争、各紙のスクープ合戦はこのために起きたものです。ただし一党独裁体制のため、何でも書かれては困る、悪事を暴かれてはかなわない、というのが統治者たる中共の本音でしょう。今回の外電を巻き込んだ報道統制は、そういう「市場競争」と「一党独裁」の撞着という問題を、パワープレイでねじり伏せようとする一面があるように思えます。
――――
それから分権化、これは地方政府の実力強化に寄与しました。いままで以上に権限を与えられれば、中央の言うことを聞かないようになるのは自然なことです。地方紙も中央より地元当局の肩を持つようになります。
一方で地方政府の裁量権が拡大すれば、よそに負けるなという地元意識が前面に出てきます。開発欲求丸出しの経済政策を実行させ、効率無視で成長率を追求するというGDP信仰一辺倒というのがそれです。
資金や資源の浪費、河川や大気の汚染といった環境破壊の問題はもちろん後回し。国民の2割が繁栄を享受するために残り8割が犠牲になっているという歪んだ発展モデル、富の偏在も顧みられることがありませんでした。
そうした闇の部分に光が当てられるようになった、というより隠し通せなくなったという最悪のタイミングで最高指導者となった胡錦涛は、まさに「ババを引いた」としかいいようがありません。とりあえず江沢民時代までの発展モデルへのアンチテーゼとして「成長率より効率重視」の「科学的発展観」を打ち出し、格差を適正な範囲内に抑えた「調和社会」の実現を呼号します。
呼号しつつ強権政治でもって荒療治。……と考えていたのだと私は思いますが、指導力不足でそれが頓挫。どうなったかといえば、
「はいはい官民衝突」
「はいはい労働争議」
「はいはい農民暴動」
「はいはい都市暴動」
「はいはい激闘武装農民」
「はいはい武警が突撃銃乱射」
……などという、「調和社会」には程遠いニュースが各地のメディアによって報じられるのが日常的になっていました。それから経済面における各地方政府の暴走ともいえる全力疾走。中央によるマクロコントロールというお題目をあざ笑うかのようです。
だから今回の統制、なのではないかと私は思います。要するに胡錦涛の指導力不足と、改革・開放の「負の部分」という病状が想像以上に末期的で手の施しようがなくなっている。そこで汚い部分はひた隠しにして民草に見せないようにし、国内メディアの報道という「虚構の世界」においては「調和社会」の実現を描いてみせよう、ということではないかと。
姑息ではあります。中国でもネットが普及しつつあることを思えば、無用な措置という印象もあるでしょう。ただ中国におけるネットユーザーが総人口の1割にも満たないことを考えれば、姑息であることを笑ってばかりもいられません。
もちろん今回の措置によって中央政府の権威を高める、とか敵性政治勢力の拠点潰し、といった思惑もあるのでしょうけど、果たしてそう上手くいくかどうか。それよりまずは「海外メディアの反発は必至だ」に向き合うことになりそうです。
――――
ちなみに新華社以外の中国国内メディアが外電を引用することで足並みが大きく乱れた典型的なケースとして昨年5月の「呉儀ドタキャン事件」を挙げておきます。
●呉儀事件で始まった新たな物語・中(2005/05/28)
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