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素人による中国観察。web上で集めたニュースに出鱈目な解釈を加えます。「中国は、ちょっとオシャレな北朝鮮 」(・∀・)
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続上海:安定団結?政変進行中だからそれは無理。
中国観察
/
2006-09-28 18:58:54
上海に関する刺激的なニュースが続々と飛び込んできています。主に香港発の情報なんですけど、中にはソースをたどっていったら「大紀元」だったりするものもあります(笑)。
いや「大紀元」が信用ならないというのではなくて、プロなんだから自分で取材しろよそのくらい(怒)……ということです。だって「大紀元」から引用して記事にするなら素人の私にだってできるじゃないですか。
ともあれざっとした印象をいうなら、「大諸侯」の筆頭として屹立した存在だった上海という独立王国が解体されつつあるといったところです。
――――
政変、と呼んでいいと思います。「九・二五政変」です。
少なくとも独立王国という上海側の視点からすれば、これは紛れもないクーデター。政変なのです。上海をいままで仕切ってきた陳良宇(前上海市党委員会書記)、いわば陳良宇政権を、部下である韓正(市長兼上海市党委員会書記代行)が外国勢力(胡錦涛サイド=中央)の支援を受けつつ転覆させ、自らその後を襲った、というところでしょう。
ただし新たに発足した韓正政権は陳良宇政権の路線は継承せず、逆に外国勢力である中央の力を借りて王国解体を目指しているところが異なる点です。
いまその作業の真最中。中国はもうすぐ10月1日の国慶節(建国記念日)からの大型連休(一週間)に入りますが、それが終わればすぐに党の重要会議「六中全会」(党第16期中央委員第6次全体会議、10月8日~11日)です。
外国勢力たる胡錦涛ひいては「擁胡同盟」(胡錦涛擁護同盟同盟)はこの「六中全会」までに、敵対勢力「反胡連合」(反胡錦涛諸派連合)の主軸である上海閥、その拠点たる独立王国・上海を大掃除して、陳良宇以下罪人認定された連中を「六中全会」でまとめて断罪、その勢いに乗って自らに有利な人事を断行したいところでしょう。
――――
新政権の首班となった韓正は、上海市党委員会の機関紙で上海の最大手紙『解放日報』以下メディアを総動員して、また党幹部大会などで、
「中央の決定(陳良宇解任)を断固擁護しよう」
「社会の安定を維持しよう」
「大局(中央の意向)に従い、一致団結して上海をさらに発展させよう」
「それぞれの持ち場を守り、第11次5カ年計画の目標達成に向け邁進しよう」
「2010年の上海万博を成功させよう」
などと訴えています。でも政変ですからね。クーデターに粛清はつきものです。前回お伝えした通り、その対象が陳良宇ひとりにとどまらないことは、捜査にあたっている中央紀律検査委員会の干以勝・秘書長が26日の記者会見で示唆しています。
http://epaper.jfdaily.com/html/2006-09/26/content_478453.htm
http://epaper.jfdaily.com/html/2006-09/26/content_478451.htm
http://hk.news.yahoo.com/060926/12/1tnph.html
http://www.wenweipo.com/news.phtml?news_id=CH0609280001&cat=002CH
――――
「安定」「団結」「目標達成に向け邁進」なんて叫ばれてもねえ。一般市民はともかく、党幹部や企業経営者は生きた心地がしないでしょう。芋づる式にどこまで「粛清」されるか、また「粛清」の基準が不透明なんですから。
すでに摘発が始まっているという情報も流れています。『読売新聞』の上海消息筋情報です。
●上海市幹部20人拘束、陳前書記派一掃へ…党中央委(読売新聞 2006/09/28/03:07)
http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20060928i301.htm
【上海=加藤隆則】中国上海市のトップ、陳良宇・市共産党委員会書記を解任に追い込んだ大型汚職事件で、党中央規律検査委員会が陳氏と関係の深い同市局長、副局長クラスの幹部約20人を拘束、本格的な取り調べを始めた模様だ。
(中略)
消息筋によると、党中央規律検査委の一斉聴取は、不正融資が問題化した社会保険基金を所管する市労働社会保障局や、陳氏がかつて区長を務め、強い影響力を持つ同市黄浦区の幹部らを中心に行われている。
不正融資を受けた企業からの収賄容疑などが問われているものとみられる。
(中略)
また、韓市長は25日朝、同市内で開かれた市党委幹部会議の席上、収賄の疑いが持たれている幹部の数を具体的に挙げ、「あえて名前は挙げない。進んで罪を認めるように」と述べ、調査への協力を呼びかけたという。
(後略)
――――
人数だけ挙げておいて、
「あえて名前は挙げない。進んで罪を認めるように」
とは韓正も人が悪いというか、あの温顔からこんな言葉が出てきたら少しでも心当たりがある党幹部はガクガクブルブルでしょう(笑)。
香港の最大手紙『蘋果日報』(2006/09/28)の消息筋情報(ていうか元ネタは「大紀元」)によると、陳良宇そして党の最高意思決定機関に名を連ねる上海閥の黄菊、この2人の夫人も汚職容疑で拘束されているそうです。
陳良宇がやられた時点で上海閥は次世代の有力者を失い、つまり世継ぎ消滅でお家断絶が確定した訳ですが、こうなると現役の上海閥高官にも累が及ぶ可能性が出てきました。
それどころか、独立王国の王子様、つまり江沢民の息子までひっくくられるのではないかという観測もあります。江錦恒・中国科学院副院長で宇宙開発プロジェクトにも名を連ねていましたが、当年とって54歳のこの王子様、地元上海では不動産や通信事業などで随分派手に動いていたようです。
王様である江沢民も震えるばかりなのでしょうか。
「小型の政変といってもいいこの動き、カリスマ不在ということであれば、武力を背景にしなければ実現できないものでしょう。」
と
先日
書きましたが、
前回
は、
「空港や駅、港には武警(武装警察=準軍事組織)が派遣されて警戒態勢をとり、幹部の上海脱出を防ぐ措置がとられ……」
とお伝えしました。この武警が上海市所属部隊でないことを指摘する市民がいたとの情報も紹介しましたが、それが事実だとすれば、中央軍事委員会までがこの「独立王国解体」に関与していることになります。
――――
それら一切の総指揮官は言うまでもなく胡錦涛・総書記(兼中央軍事委主席・国家主席)ですが、「胡温政権」と並び称されながら微妙な距離感でその脇に立つ温家宝・首相は昨日(9月27日)開かれた国務院常務委員会(国務院=政府)で河南省鄭州市の不法土地占有事件をとりあげ、党中央紀律検査委員会の捜査に基づき責任者を党内厳重警告処分としています。
処罰されたのは河南省党委員会常務委員・政法委員会書記で前河南省副省長の李新民、そして河南省党委員会常務委員・鄭州市等委員会書記(鄭州市のトップ、前鄭州市長)、いずれも河南省と鄭州市の要職にある官僚です。
利害をめぐる「中央vs地方」という対立軸でいえば、上海の「政変」もさることながら、この中央が河南省の高官を処分した衝撃の方が「諸侯」と呼ばれる各地方勢力には大きかったかも知れません。
胡錦涛は上海の「九・二五政変」で一石二鳥ならぬ一石五鳥を狙いました。
●次世代の有力者を潰すことで上海閥を壊滅状態にする
●「あの上海でもやられるのか」と「諸侯」に衝撃を与える
●それによって経済面での中央による統制力を強化する
●大物(陳良宇)の汚職摘発によって一般市民の喝采を浴びることで政権への求心力アップ。
●上海閥の力を削ぐことで「六中全会」及び来年開催の第17回党大会での人事権掌握を容易にする
……てなところでしょう。その上海に続いて間を置かずに河南省と鄭州市の不正担当者を血祭りにあげたのは、独立王国として胡錦涛にとっては隠然たる敵対勢力だった上海閥、その
「上海閥でなくてもやられる」
という点が大きいのです。
――――
当ブログで何度か指摘していることですが、しばしば引き合いに出される「中央vs地方」という対立軸の一方で、各地方勢力も「省当局vs市当局」「省当局vs県当局」といった「内なる中央vs地方」を抱え込んでいます。その中には胡錦涛から送り込まれた「雇われトップ」に地元生え抜きの幹部が抵抗してその政治活動を束縛する、といったことも含めていいでしょう。
『蘋果日報』(2006/09/26)によると、現在までに胡錦涛が地方に送り込んだその嫡流人脈ともいえる「団派」(共青団派=胡錦涛の出身母体である共産主義青年団系の人脈)は省・自治区・直轄紙トップ(党委員会書記)やナンバー2(省長・自治区主席・直轄市市長)が18名。
その中で主立つ者は上海市党委書記・韓正、遼寧省党委書記・李克強、江蘇省党委書記・李源潮、広東省長・黄華華、青海省長・宋秀岩……などがおり、さらに省党委副書記、省党委常務委員、副省長といった副省長クラスの官僚はちょうど100名(うち副書記27名、副省長24名)にものぼります。
上海に続く河南省での処罰で、
「上海閥でなくてもやられる」
という衝撃が「諸侯」に走り、……具体的には各地方勢力の地元生え抜きのボスといった幹部を戦慄させることになります。それによって「雇われトップ」が働きやすくなるという効果ももたらすでしょう。
――――
党大会の最後の前哨戦になるであろう「六中全会」を前に、一気に勝負をつけるべく動き出した胡錦涛。「擁胡同盟」にようやく必勝の態勢が整ったともいえますが、いったん動いたとなると最後まで徹底的に、相手の息の根を止めるまでやめない、というのは正念場における胡錦涛の持ち味です。しかも寝技よりも直球勝負の腕力型。
……このあたり、江沢民を信用せずに後継者指名権を与えず、直々に胡錦涛を抜擢して江沢民の後釜にしろ、と遺言したトウ小平の好みもうかがえるようで興味深いです。
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