日々是チナヲチ。
素人による中国観察。web上で集めたニュースに出鱈目な解釈を加えます。「中国は、ちょっとオシャレな北朝鮮 」(・∀・)





 私は中国観察にかけては素人です。である以上、中国経済を云々できるような力はもちろんありません。

 ただ記事漁りをしていて思うのは、10月の五中全会(党第16期中央委員会第5次全体会議)で決まった「十一五」(第11次5カ年計画)の大枠と、それに関するバラ色の未来を描いた報道、これが当初は経済関連の記事において相当な比重を占めていたのですが、最近は「重複投資」とか「生産過剰」とか「デフレ懸念」とか、警鐘を鳴らしたり楽観ムードに水を差すような記事が増えていているということです。

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 なぜ生産過剰が発生するかといえば、どこもかしこも似たようなモノを造るようになるからです。重複投資ですね。これだけでも十分に資源の無駄遣いなのですが、製造された製品だってにわか造りで手がけたものですから品質が劣悪なものが多い。当ブログの補助サイトである「楽しい中国ニュース」から関連記事を拾ってみますと、

 ●政府、鉄鋼生産過剰で減産へと軌道修正。
 http://hk.news.yahoo.com/051209/74/1jf89.html

 ●政府、電解アルミ生産過剰で減産へと軌道修正。
 http://hk.news.yahoo.com/051209/74/1jf80.html

 ●コンテナ生産過剰で2カ月間生産停止へ。
 http://hk.news.yahoo.com/051209/74/1jes0.html

 ●社会科学院筋「生産過剰問題はかなり深刻」。
 http://hk.news.yahoo.com/051212/74/1jhjf.html

 ……といったところです。ではなぜ各地で似たようなモノを造るようになるかといえば、「いまはそれが売れ筋だから」というケースもあるのですが、最大の理由は省レベルで自己完結した生産体系を擁したいからでしょう。要するに「諸侯経済」というやつで、どの「諸侯」も鉄鋼やアルミやセメントなどの生産ラインを自分で保有しておきたい。

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 それから以前にも紹介しましたが、沿海部・内陸部を問わず、各地方がみんな
「上海のようになりたい」と考えています。全国百余都市の発展目標が「国際的大都市」ですから。

 ●「新華網」(2005/10/08)
 http://news.xinhuanet.com/fortune/2005-10/08/content_3591687.htm

 中央からみればこれもアンバランスな上に資源の無駄遣いになる「盲目的な成長志向」ということにになりますが、「諸侯」にとっては鉄鋼やアルミやセメントなどの生産体系を自前で持っていたいのと同じことなのです。全国という大局を顧みることなんかお構いなしに、まず「諸侯」として自己完結を果たしたいですから、上海のような繁華を極めたキラキラした「国際的大都市」をひとつふたつ持つことも欠かせない。

 こうした「諸侯」の動き、これはもう制度がどうこうというより、数千年という歳月の蓄積で備わった行動本能のようなものです。それが分権化と競争原理の導入を骨子とする改革開放政策によって顕在化した、というところでしょう。

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 然るに現在の中央たる胡錦涛政権は統率力がさほどでもない。だから先日呉邦国・全人代常務委員長が広東省を視察したように、党中央政治局常務委員クラスの高官中の高官を各地に派遣して釘を刺したりもしているのですが、効果は薄いと言わざるを得ません。そこで、

 ●今年の投資規模、実績ベースで昨年を上回る見込み。
 http://news.xinhuanet.com/fortune/2005-12/11/content_3905229.htm

 ……ということになります。GDP成長率も9%台になりそうな見通しで、中央が当初考えていたような「適宜に減速してソフトランディング」とは全く異なる展開です。要するに胡錦涛が否定した江沢民時代のイケイケ型成長志向、GDP成長率信仰にストップがかかっていない。そこで最近、中央によるマクロコントロールの強化がいよいよ声高に叫ばれるようになったのでしょう。

 ●中央の統制力強化を訴える論評が『瞭望』誌に登場。
 http://www.southcn.com/news/china/zgkx/200512110070.htm

 生産過剰の問題にしても、中央が一喝してやめさせないと、旗印である「バランスのとれた持続的安定的成長」など画餅に終わってしまいます。沿海部と内陸部で同じようなことをやっていれば、地域間格差もいよいよ拡大してしまいます。問題は中央に「一喝」できる統率力があるかどうかですよねえ。

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 不動産開発もそうしたことの一環、つまり中央の統率力の弱さと対応の遅さが仇になったと捉えられなくもありません。「まずい」と思って対策を講じたときには、投機筋はすでに売り抜けて一般市民がババをつかまされた格好です。ただそうした市民にせよ主に投機目的でしょうから同情する必要はありませんけど。

 前回紹介した上海の件、日本でも報道されましたね。

 ●マンション契約解除広がる 価格下落の上海で(共同通信 2005/12/13)
 http://flash24.kyodo.co.jp/?MID=DLT&PG=STORY&NGID=econ&NWID=2005121301000173

 【北京13日共同】政府の引き締め策で不動産価格が下落している中国上海市で、高値で契約したマンションの買い主が契約解除を要求する動きが急速に広がり、市当局も社会的影響を懸念し始めた。新華社電(電子版)がこのほど伝えた。

 新華社電によると、上海では昨年末から今年初めのピーク時に1平方メートル当たり9000元(約13万5000円)から1万4000元で発売されたマンションと同じレベルの物件が、現在は8000-9500元程度で売られている。

 このため、高価格で契約した買い主の間で違約金を払っても契約を解除しようという動きが加速。あるマンションでは、買い主50人以上が集団で不動産会社に解約を要求した。売り主側が拒否し、訴訟になるケースも増えているという。

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 たぶんこの記事の元ネタだろうと思うのですが、大手ポータルにも掲載された新華社電が次々と削除されてしまった件、

「从上海“退房風潮”看楼市之變」(上海の「キャンセルブーム」からみる不動産市場の変化)

 という報道ですね。私自身は記事を保存しておきましたが、ネット上に残っているのを発見しました。

 http://economy.jschina.com.cn/gb/jschina/finance/node6358/node6359/userobject1ai1100988.html

 記事を改めて読み返したうえで「なぜ削除されたのか」と考えてみるに、やはり不動産景気には地方政府が一枚かんでいて、デベロッパーとともに甘い汁を吸っていた、という指摘、それは誰でも知っている構図ではありますが、公器においてそうした指弾が赤裸々に行われている点が問題となったように思います。

 これは「中央vs地方」という政治問題でもありますし、再開発に伴う土地収用で農村でも都市でも無茶な強制執行が行われ、そのたびに官民衝突が発生していることを思えば、現今の社会状況に照らしても刺激的にすぎる、という判断がなされたのかも知れません。

 「退房風潮」というのは流行語になりそうですが、この騒ぎが上海だけで収まるかどうか。上海を荒し回ったホットマネーはちょっと前から珠江デルタへと戦場を移しており、深センや広州が投機筋に狙われています。

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 松花江汚染が発覚したころから、胡錦涛政権は相次ぐ「内憂」でグラついているようにみえます。もはや国際的に有名になってしまった「12.6」事件についても中央の口からは何も語られないままです。

 現在は各地方において「十一五」の具体的内容を煮詰めている段階ですが、その内容も「上有政策,下有対策」(中央が政策を下達しても地方レベルではそれを骨抜きにしてしまう)という毎度お決まりの展開になるかも知れません。

 あるいはそれが討議される全人代(全国人民代表大会=立法機関)以前にドカンと一発あっても不思議ではないように思えます。そうなりかねないタネ火のひとつとして、不動産関連の動向には注意が必要でしょう。

 小泉首相による靖国神社参拝以来、日中関係というか中共政権の対日路線に注目してきたのですが、気がついたらいつの間にか「中央vs地方」が焦点になっていた。……そんな印象なのです。



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