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素人による中国観察。web上で集めたニュースに出鱈目な解釈を加えます。「中国は、ちょっとオシャレな北朝鮮 」(・∀・)
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つけられないケジメ。
シリーズ中国観察
/
2005-05-06 21:08:31
【シリーズ:反日騒動2005(33)】
←(32)へ
ここ1カ月あまり、何だか「反日」関連の話題ばかり書いてきたような気がします。そのテーマが主役の座に据えられてしまったのですから仕方がないのですが……そろそろ別の話題にも移りたいところです。
5月初めに何かあるかも、ということで中共政権の治安当局は限界態勢を以て臨みましたが、幸い、というべきか、結局は不発でしたね。でもまた週末です。今度はどうするのでしょう。
こうやって「デモ」の影に当局が未だに怯え続けている、神経を尖らせているというのは、一体なぜなのか。……ということを馬鹿なりにあれこれ考えてみました。つまるところ当局が、一連の「反日活動」への
「レッテル貼り」(定性=政治的位置付け)
を済ませていないからではないかと思うのです。
つまり、
政治的なケジメがついていない
。あるいはこのままウヤムヤにして済ませたいのかも知れませんが、それは最悪の選択であって、同じような問題が再燃した場合に、また同じような、あるいはもっとひどいことが起こる可能性があります。
この先、「反日」ネタは盛り沢山じゃないですか。今月末に香港の民間団体が尖閣諸島上陸を狙っているようですし、7月7日、8月15日、9月18日と、お約束の記念日もあります。それから戦勝60周年記念イベント。それに日本の常任理事国入りがかかった国連改革があり、さらには時限爆弾として小泉首相の靖国参拝の可能性もあります。
だからこそここでケジメをつけておかないと、後々苦労することになります。まあ、ケジメをつけられない胡錦涛政権の苦しさも、わからない訳ではないですけど。
――――
改めて言いますが、ケジメとは政治的位置付けのことです。
複数の政治勢力による主導権争いのネタとして使われた観のある今回の「反日」、主導権争い自体は「ほどよい反日」を掲げる胡錦涛派が勝利し、「反日全開」を掲げていたであろう対外強硬派を主とする「抵抗勢力」が敗れた形で終息しました。あるいは「抵抗勢力」は完敗というほどひどい負け方ではなくて、胡錦涛派優勢のまま講和、という形に落ち着いたのかも知れません。
とにかく、中共政権自体が揺らぐようなことになっては困るので、党上層部はひとまず団結し、全国に広がった「反日」に対して慌てて火消しにかかった。それが明確になったのは4月19日に開かれた
「形勢報告会」
(※1)であり、そこで行われた李肇星・外相による演説(李肇星報告)でした。これは国民に対し、中央の政策が一変したことを告知するものでした。簡単にいえば、
「これからは『反日』で盛り上がることは許さない。破壊活動のような過激な行為も許さない」
というもので、同時に各地で頻発した反日デモの大半が未申請・未認可だったことに言及し、
「党と政府が徹頭徹尾、根本的な国益を考慮した立場に立って、対日関係にまつわる様々な問題を適宜に処理することを我々はよく信頼しなければならない。我々は目下の世界情勢を正確に認識し、自国の国情を正しく把握して、中央の打ち出す一連の重大政策や処置を断固として貫徹し、安定かつ団結した政治局面を擁護することを自覚し、法制観念を強化するとともに、
冷静かつ理知的に、また合法かつ秩序立ったやり方で自らの感情を表現するようにし、未許可デモなどへの活動には参加しない
ことで、社会の安定に影響を及ぼさないようにしなければならない」
と語っています。これで「反日」のヒートアップはダメ、ということになり、破壊活動や未許可デモは違法だから取り締まる、と宣言した訳です。……宣言というほどの語気ではなく、示唆した程度かも知れません。いずれにせよ、御法度になるものが明らかになりました。
例えばデモなら地元の公安局に申請を出して、それが認可されなければなりません。しかしこの状況で公安局が認可してくれる訳がないので、やるなら非合法デモということになります。それは許さない、と言っています。
――――
これと同時に、水面下ではデモなどを主導する反日「民間団体」に圧力をかけ、5月を前に、構成員たちが集って意見交換やデモの打ち合わせを行う場となっていた各「民間団体」のホームページをメンテナンス入りなどの理由で一斉に閉鎖させます。
北京市(※2)や広州市(※3)では公安局が、当方はデモを一切認可しない、つまりデモが行われるとすればそれは非合法だから絶対参加してはいけない、といった警報を出しています。北京市公安局は同時に、4月9日に行われた北京デモを違法認定もしています。
果たせるかな、これらの措置が奏功して、デモはピタリとやみました。ただ、デモが起こりそうな日になると、各地の公安局が警官や武装警察を大挙動員して万一に備える、といったことが繰り返されています。……ということは、問題はなお再燃する気配を保っており、解決には至っていないことになります。
当局がケジメをつけていないからだと思うのです。
――――
具体的な例を挙げますと、1989年4月に生起した大学生らによる民主化運動、これに対する当局のレッテル貼り(ケジメ)は早く、4月27日の『人民日報』社説でこれを
「動乱」
と認定しています。違法か合法かではなく、政治的位置付けが「動乱」なのです。政治とはもちろん中共のこと。ですからそれを告知するのも政府ではなく、党中央の機関紙『人民日報』の社説が使われました。
ところが民主化運動はそれでも収まらず、逆に全国へと拡大していきます。それに対する終止符として軍隊を投入し武力鎮圧に出た「天安門事件」(六四事件)が発生します。この事件とそこに至るまでの一連の動きは
「反革命暴乱」
と認定されます。これもレッテル貼りであり、ケジメなのです。
然るに今回はどうかといえば、李肇星報告も北京市公安局も、「違法だからダメ」の一点張りなのです。これは法律に照らして、ということであり、政治的なレッテル貼りではありません。やや具体的に言いますと、北京市公安局は4月9日の北京デモを違法認定はしましたが、その行為が愛国的と見なされるかどうかについては沈黙しています。いや沈黙するどころか、
「広範な民衆と学生によるこうした愛国的熱情については、我々はよく理解している」
と腰砕けになってしまっているのです。それに続けて、
「だが4月9日のデモは許可されていないから違法だった」
なんて言っていますが、違法の根拠は未認可デモだからであって、一連の破壊活動(大使館への投石や日本料理店や日本企業の広告を破壊した)には言及されていません。首都北京の治安当局でさえこの調子ですから、
「デモ自体は違法だったが、その行為は愛国的なものだった」
という解釈も成立するのです。
法的には違法であっても政治的には肯定される
、ということになってしまう。その点が徹底していません。「違法だし、愛国的行為でもない」と言い切っていないので、相変わらず警官や武警を大動員して万一に備えなければならないのです。
要するに政治的位置付けの問題なのです。一連の非合法なデモとその過程で発生した破壊活動などの違法行為、これを「愛国的」とみなすかどうか、これがケジメであり、
「愛国的ではない」と断じなければ胡錦涛政権にとってはケジメをつけたことにはならない
でしょう。
――――
国営通信社の新華社やそのウェブサイトである「新華網」、また党中央の代弁者である『人民日報』及びその電子版である「人民網」で探してみても、はっきりとケジメをつけている記事は出てきません。安定・団結を呼びかけたり日中友好の重要さを謳う論評がわらわらと出てくるのみです。
私の目の届く範囲で、この点にしっかり言及し、ちゃんとケジメをつけた記事は1本だけです。以前
「怪文書」
として紹介した、上海紙『解放日報』(4月25日付)の1面を飾った論評記事です。
●解放日報評論員:本質を見極め、違法行為には厳罰を(新浪網2005/04/25)
http://news.sina.com.cn/c/2005-04-25/09095742012s.shtml
「大量の事実が証明している。最近発生した非合法デモは、愛国的行動でも何でもなく、違法行為なのだ。民衆の自発的な動きでも何でもなく、背後に黒幕を控えての陰謀なのだ。」
という書き出しの文章なのですが、この第一段落ですでに主題を語り尽くしています。デモを
「違法」
としたばかりか、政治的位置付けとしては
「愛国的行動でも何でもない」という鮮明なレッテル
を貼っています。加えてデモ自体を「背後に黒幕を控えての陰謀」と反政府運動扱い。これは勇み足のようでもありますが、ともあれ、
反日デモ参加者を「人民の敵」とみなし、明確に「対決姿勢」を打ち出した
のはこの記事だけです。
本来、胡錦涛政権はこの記事を拾い上げてアレンジを加え(穏当な表現に直し)、党中央の方針として全国に示すべきでした。実際、この記事は「新華網」や大手ポータルサイトに転載されたりもして「胡錦涛ついに動く?」かと思わせたのですが、以前書いたように、なぜかほどなく次々と削除され、『解放日報』のサイトからも抹殺された「幻の記事」になってしまったのです。
その裏でどういう政治的駆け引きがなされたのかはわかりません。とりあえずネット世論は激しく反発しました。当局自体に、この内容は激しすぎるのではないかという怯みがあったかも知れません。ただそれらは措辞を修正すればいいことであって、
カナメである「愛国的でも何でもない」という一節さえ残しておけば、胡錦涛政権はケジメをつけることができた
と思うのです。
――――
もし「党内でも反発する声が強く、胡錦涛としては不採用にせざるを得なかった」というなら、それは胡錦涛の統制力が最高実力者としてはいまなお不十分であることを示し、
江沢民時代の価値観に踏み込んでその修正を施せるほど政権が安定していない
ことを意味するものです。
だとすれば、仕方がありません。以て瞑すべしというところでしょう。
――――
【※1】http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-04/19/content_2851482.htm
【※2】http://news.sina.com.cn/c/2005-04-29/18006531981.shtml
【※3】http://news.sina.com.cn/c/2005-04-29/01205778428s.shtml
→反日騒動2005(34)へ
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