◇大分県難聴者協会が配布始める
聴覚障害者が周囲に障害があることを知らせる「お助けシール」の配布を大分県難聴者協会が始めた。外見で識別できない聴覚障害者は災害時に警報や避難所での案内が聞こえないなど不利益を被りやすく、シールを身に着けてもらうことでサポートを受けやすくする狙い。2011年の東日本大震災を機にシールを製作した東京のNPOから一括購入し、自治体を通して県内の聴覚障害者に無料で配っている。
聴覚障害者の生活改善に取り組む東京都のNPO「ベターコミュニケーション研究会」などによると、東日本大震災では宮城県だけで70人を超える聴覚障害者が死傷した。大津波警報に気づかなかった人もいたほか、避難所で「風呂が使えます」などのアナウンスが聞こえなかったり、高齢者優先と知らずに食料を配る列に並び、トラブルが起きたこともあった。
そうした経験も踏まえ、同NPOは11年末、太字で「聞こえません 手話・筆談で教えてください」と表示した名刺サイズの聴覚障害者向けシールを製作。蓄光式で暗闇でも10時間以上発光できるようにし、夜に被災現場に取り残されるなどの危険を避けやすくした。ヘルメットやリュックといった目立つ場所に貼るほか、カードケースなどに入れて繰り返し使うこともできる。
普段からシールを身につけている中園秀喜理事長(67)は「デパートで店員が鉛筆と紙を用意してくれたり、病院で看護師が手話で話しかけてくれたりする。日常生活でも効果はてきめん」と話す。
シールの存在を知った個人が購入する例は多かったが、大分県難聴者協会はまとめて500枚購入。1月に県内の主な自治体に提供し、各自治体が窓口で無料配布を始めた。同NPOによると一括購入して配布した団体や自治体は九州・山口で初めて。県難聴者協会の小倉鉄郎さん(43)は「いざという時のために、災害用の持ち出し袋などにシールを入れておいてほしい」と呼びかけている。
ベターコミュニケーション研究会(03・3380・3324、メールequal@bcs33.com)はシールを一般にも販売している。1枚500円。

聴覚障害者であることを知らせる「お助けシール」。ネームプレートに入れて使用できる=大分市で
毎日新聞 2015年05月16日