障害者に、健常者と平等な権利を保障する国連の障害者権利条約を分かりやすく説明した「えほん障害者権利条約」(AB変形判、32ページ、汐文社、1620円)が出版された。
同条約は2006年12月の国連総会で採択され、日本も昨年1月に批准している。ただ、一般的にはまだ浸透しておらず、全国の障害者団体で作る日本障害フォーラム(JDF)幹事会議長の藤井克徳さん(65)が「子どもたちにも身近なことだと分かるように」と絵本制作を企画。藤井さんが文案を考え、知人で静岡市の障害者福祉施設で働く里圭(さとけい)さん(37)が木版画による挿絵を担当した。
JDFは同条約を広め、障害のある人の社会参加を推進するために、「障害のある人もない人も、共に住み慣れた町で、その人らしく暮らし、働く社会を」などと訴えるイエローリボン運動を展開している。
絵本では、その運動のシンボルマークを擬人化した主人公が、条約が求められ世界に広がった経緯などを紹介。スポーツや芸術鑑賞の場で、障害を理由に楽しみが奪われないようにするなど、誰にでも分かりやすい事例で条例の役割を伝えている。
また、障害のある人だけでなく、赤ちゃんやお年寄り、大きな荷物を持った人などが生活する町を描き、誰もが笑顔になる社会の実現を呼び掛けている。条文タイトルをベートーベンの交響曲第9番の楽譜に重ねたページでは、世界共通の言葉である音楽を奏でるようにして、条約の力を引き出そうとも訴えている。
藤井さんは、「子どもへの読み聞かせなどを通じて、子どもから大人までが理解し、誰もが分け隔てされない社会になるように活用してほしい」と話している。問い合わせは、きょうされん事務局=03(5937)2444。
「えほん障害者権利条約」の表紙
=2015/05/12付 西日本新聞朝刊=