4大砂漠マラソンの一つ、中国の「ゴビ砂漠マラソン」に日本、中国、韓国3カ国の視覚障害者と伴走者のチーム5人が挑む。7日間分の荷物を背負って計約250キロの砂漠を走破する過酷なレース。5人は「日中韓の友好のために走りたい」と思いを一つにして31日のスタートを待っている。
「大きな石が30〜40センチの間隔で五つ並んでいます」。4月下旬、千葉県市原市の養老渓谷でのトレーニング。伴走者の中国人、李永傑さん(38)=東京都府中市=が、網膜色素変性症の村木貴広さん(64)=静岡県磐田市=に声をかけた。村木さんの視力は足もとがぼんやり見える程度。「しっかりした石だから大丈夫」。李さんの言葉に、村木さんは大きく足を踏み出した。
ゴビ砂漠マラソン挑戦の発案者は東京都内の会社にシステムエンジニアとして勤める韓国人、金基鎬(キム・ギホ)さん(47)=千葉県市川市。日本人の妻と結婚し、2005年から日本に住む金さんは、冷え込む日韓関係に胸を痛めていた。フルマラソン以上の距離を走る「ウルトラマラソン」を走った経験もある金さんは、11年ごろに母国の全盲ランナーの砂漠レース挑戦を描いた本を読んで感動。日本人の視覚障害者の伴走を務めようと思いつき、13年3月に日本人の全盲ランナーとともに南米チリの「アタカマ砂漠マラソン」に出場して完走した。
00年に来日した李さんは金さんの職場の同僚。日中関係も悪化していたことから、3カ国のランナーによる挑戦を考えていた金さんが李さんを誘った。李さんも「日中の懸け橋になりたいという思いで日本に来た。国同士が少しでも仲良くなるきっかけになれば」と昨年7月に加わった。
村木さんは金さんの知人の紹介で参加することになった。中国からは李さんの他、金さんのつてで視覚障害者の王※さん(36)、伴走者の徐黎暁さん(35)が加わった。金さんは背中のけがで出場できなくなり、韓国から参加の趙成潾(チョ・ションイン)さん(44)が伴走を務める。(※は王ヘンに奇)
寝袋や7日分の食料、装備を入れるとリュックの重さは10キロを超える。日中の気温は40度以上、夜は0度近くになる砂漠を5人で走る。余る伴走者はサポートに回る。
金さんは「視覚障害者と伴走者は絶対的な信頼関係がなければ完走できない。砂漠マラソン挑戦で日中韓の強い絆をアピールできる」と話し、村木さんは「日中韓の友好のためにという金さんの考えに心を動かされた。みんなで仲良くゴールしたい」と話している。
ゴビ砂漠マラソンに向け、練習する村木貴広さん(手前中央)と李永傑さん(その右)=千葉県市原市の養老渓谷で2015年4月20日午前10時32分、
毎日新聞 2015年05月23日