「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

「ジャン・クリストフ」 前書き

2008年11月29日 19時19分48秒 | 僕と「ジャン=クリストフ」
 
(前の記事からの続き)

 次に、 ロマン・ロランの 「ジャン・クリストフ」 の 前書きから抜粋します。

 クリストフの生きざまを 表したものであり、

 当時の僕は これを読んだだけで、 涙が止まりませんでした。

「 彼は 故国にある時、 またパリにある時、 幾多の恋愛を経験した。

 あるいは やさしい心の愛情であり、 あるいは 強い肉体の欲情であった。

 そして それらの迷執に、 幾度か傷つきながらも、

 幾度かつまずきながらも、 彼の魂は かえって鍛えられ つちかわれた。

 真実と芸術とに 奉仕する彼の心が、

 息苦しい 異性の香りの方へ 引きずられたのは、

 また それらの事件から、 憂鬱でなしに力を、 精神の頽廃でなしに 緊張を、

 たえず摂取していったのは、 彼の強烈な 生命の力の故に ほかならなかった。

 生命の力と その闘争、

 それが ジャン・クリストフの生涯を 彩るものであった。

 絶食を余儀なくせらるるまでの 貧困、 愛する人々の死より来る 無惨なる悲哀、

 愚昧なる周囲から 道徳的破産を 宣告せらるるの恥辱、

 すべてを巻き込まんとする 虚偽粉飾の生温かい空気、

 あらゆるものに 彼の霊肉はさいなまれた。

 しかしながら 彼は、 自分の信念を道連れとして

 勇ましく 自分の道を 切り開いていった。

 いかに つまずき倒れても、 ふたたび猛然と 奮い立つだけの力が、

 彼の内部から 湧き上がってきた。

 苦しめば苦しむほど、 障害を 突破すればするほど、

 その力は ますます大きくなっていった。

 そして 彼の苦闘の生涯は、 洋々として流れていった。 」

〔 「ジャン・クリストフ」 ロマン・ロラン (岩波文庫) 豊島与志雄 訳 〕

(次の記事に続く)
 


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