「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

苦しみと創作

2009年03月05日 21時29分14秒 | 僕と「ジャン=クリストフ」
 
(前の記事からの続き)

「 (苦しみを通して) 人の痛み, 弱さが分かるようになった。

 これは極めて月並みだが 本当のことだ。

 人の話が 聞けるようになった。

 作品は 低い視線で描かなければ 伝わらない

 所詮 人の苦しみは分からない。

 自分が 人を苦しめているとしても。

 生きているかぎり (肉体があるかぎり)  人間は限りがある。

 囚われがある。

 人は 苦しまないと考えない。

 因果なことだ。

 不幸なときにこそ 偉大な芸術ができる。

 平和な時代には 天才が出てこない。

 しかし、 それでも 人間は平和なほうがいい。

 苦しみと、 人を幸福にする創作との 矛盾。

 何故 人間は苦しまないと 成長しないのか?

 何故 物質的世界と 精神的世界があるのか? 

 この世の 役割とは何か? 

 人間には何故精 神世界のことが分からないのか? 

 何故 死を恐れるのか? 」


「 かつて 僕が一人 世界から隔絶されて、

 絶望と孤独に 苛まれていたときのことが 思い出されてなりません。

 何週間も 人と会うこともなく、 声を出すこともなく、

 そんな生活が 何ヵ月も続くなかで、 自分だけが 取り残された焦燥感に、

 文字通り 『居ても立ってもいられない』  苦しみに喘いでいました。

 そのとき僕が 必死にすがりつこうとして もがいていた

 『ジャン=クリストフ』 の一節。

『 人生は 苦悶と残忍との 無限な総和の上に立ってることを、

 彼はだれよりも よく知っていた。

 人は 他を苦しめずには 生きてゆけない。

 眼をつぶったり 言葉でごまかしたりすべきではない。

 人間の不断の努力は、

 苦しみと残虐との総和を 減ぜんとすることにあらねばならぬ。

 それが 人間の第一の務めである。』 」
 
(次の記事に続く)
 


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