「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

時間との戦い …… 「生死命(いのち)の処方箋」 (30)

2010年09月30日 23時53分10秒 | 「生死命(いのち)の処方箋」
 
(前の記事からの続き)

○東央大病院・ 外景 (未明)

  空に 明かりが差してくる。

  雀の鳴き声が聞こえる。
  

○同・ 消化器外科・ 控室

  美和子が 緒方に書類を渡す。

美和子 「木下さんからの 臓器提供承諾書で

 す」

緒方 「うん、 平島さんの手術承諾書と 麻酔依

 頼書も揃えたね?」

美和子 「はい」

  小池が慌てて駆け込んでくる。

小池 「緒方先生、 木下さんの血圧が 急に下が

 りはじめたそうです!」

美和子 「え!?」

小池 「昼前にも 心臓が止まってしまうかもし

 れないと ……」

緒方 「そんなに早く 心臓がだめになるなん

 て!  ICUの連中は 何をやってるんだ

 !?」

小池「木下さんは もともと心臓が強くなかっ

 たそうです」

緒方 「(美和子に) 平島さんの準備は?」

美和子 「透析が終わって 免疫抑制剤の点滴に

 はいりました。 でも ヘパリンの作用が消え

 るまで 4時間はかかります」

世良 「ヘパリンというのは?」

美和子 「透析中に使う薬で、 血液の凝固を防

 ぐの。 だから ヘパリンが残ったままで オペ

 することはできないのよ」

世良 「じゃあ木下さんには、 あと4時間持ち

 こたえてもらわないと いけない訳か」

緒方 「とにかく 早くオペの準備を!  ドナー

 の冷却灌流も 始めるように伝えてくれ」

美和子 「はい !」

緒方 「(苛立ち) ここまでこぎつけたんだ。

 間に合わないなんてことに なってたまる

 か!」

美和子 「…… (緒方の気迫に驚く)」

 
○同・ 多佳子の病室

  免疫抑制剤を点滴中の多佳子。

  美和子たちが 周りを慌ただしく動いてい

  る。

  不安そうな多佳子。

(次の記事に続く)
  


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