「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

「生死命(いのち)の処方箋」 〔企画意図〕

2010年07月27日 22時10分42秒 | 「生死命(いのち)の処方箋」
 
( 「城戸賞」 受賞の言葉より抜粋 / 1989年)

 人々の死に対する 関心が高まり、

 QOL (クオリティ・オブ・ライフ / 生命の質) という

 問題が提起されるようになりました。

 脳死と移植の問題も 盛んに語られています。

 移植を受ける側と 脳死患者側の 深刻な立場の相違の底流には、

 その双方にとっての  「生命の質」 という、

 解決しがたい難題が 横たわっているのではないでしょうか。

 倫理や法律論では 捉えきれない何かが、 人間の中にはあると思います。

 それを表現するのが 作品の役割であると考えます。

 この作品では、 自分の中にうごめいているものを、 そのまま表してみたつもりです。

 私は 脳死を人の死とし、 移植を是と考える 立場ですが、

 作品はその主張を するためのものではありません。

 双方の立場の 葛藤を描き、 その切実な姿を 知ることによって、

 「生命の質」 とは何か?  真のヒューマニズムとは何か?  ということを、

 考える契機となれば幸いと 思うものです。

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 佐伯美和子 (28才) は、 消化器内科の医師。

 弟の淳一 (18才) は、

 「クリグラー=ナジャール症候群」 という肝臓病で、 黄疸症状がある。

 美和子は 淳一を救うために 医師になった。

 淳一は 光線療法や血液交換の 治療を受けているが、

 年齢的に いつ脳障害を起こして 亡くなるか分からない状況である。

 助かるには 肝臓移植が必要だ。

 折から、 日本で生体肝移植が始まり、

 美和子は 自分の肝臓を 淳一に移植して 淳一を助けようとする。

 ところが、 美和子と淳一の白血球型は 無情にも一致しなかった。

 残る道は 脳死肝移植しかない……。

(続く)
 


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