「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

居場所をなくした少年 -- 光市母子殺害事件、 最高裁判決 (10)

2012年02月28日 15時15分53秒 | 光市母子殺害事件
 
 大月被告は子供の頃、 人懐こく能天気で、

 笑顔が絶えない ムードメーカーだったといいます。

 ところが家庭では 父親が暴力による 絶大な権力を持ち、

 笑顔を見せることはありませんでした。

 母親が心の支えで、 少年が帰り着く先は 家ではなく、 母親だったのです。

 その母親が 夫の暴力から逃れるためか、 少年が中学のとき 物置で首を吊り、

 少年は遺体を目の当たりにします。

 でも学校では 辛い様子は見せず、 変わらず 明るく振る舞っていました。

 高2で 新しい母親との 暮らしが始まり、 家出をしたり、

 担任の教師に 家庭での疎外感を 泣きながら訴えたといいます。

 「誰も心配してくれん」 と。

 高3になると 友だちとの付き合いも減り、

 教師たちは原因が分からず 困惑していました。

 卒業して 水道設備会社に就職しますが、 4日で行かなくなり、

 2週間目の事件の日も 無断欠勤。

 家裁の裁判官だった 井垣弁護士は、

 少年が 自分の 「居場所」 を失ったことが 事件に繋がったと考えています。

 母親を亡くし、 信頼していた 高校の先生とも離れ、 友だちもどこかへ行き、

 仕事も面白くなく、 将来の夢もなく、

 マイナスイメージで 恐らく一杯だったろうと。

 判決前、 何故 事件を起こしたのかという質問に、 大月被告は答えています。

 「甘えと言われてしまうが、 誰かに自分の話を 聞いてもらいたかった。

 18歳になり、 社会人として 自分で仕事の責任を 守らなければならないのに、

 それができず、 社会から逃げるようにして、 行き着いた犯行でした」

 少年の心の真相は 明らかにならなかった裁判でしたが、

 単なる凶暴性だけで 説き明かせない問題です。

 何が少年を 凶行に駆り立てしまったのか、 これからも求めていくことも、

 この事件を風化させず、 失われた 弥生さんや夕夏ちゃんの命に応える、

 社会の責任かもしれません。

〔NHK 「ニュースウォッチ9」 より〕
 


最新の画像もっと見る

コメントを投稿