「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

悪魔の誘い …… 「生死命(いのち)の処方箋」 (16)

2010年08月19日 20時58分27秒 | 「生死命(いのち)の処方箋」
 
(http://blog.goo.ne.jp/geg07531/e/d60a0f064de73fb7b81cef14bee02c4b からの続き)

○東央大病院・ 廊下

  川添が 美和子と世良に説明している。

川添 「(憂色を浮かべ) クモ膜下出血です。

 出血の範囲が広くて 難しい状況ですが、

 何とかやってみます」

美和子 「お願いします」

  廊下を 木下直哉 (45才) が血相を変えて

  走ってくる。

直哉 「(狼狽) き、 木下です …… !

 家内が倒れたって ……… !?」

川添 「ご主人ですか?  こちらです!」

  川添、 直哉を 治療室の中へ連れていく。

  ふたりを見送る 美和子と世良。

  幸枝のベッドへ 導かれる直哉。

直哉 「幸枝 ……… !?  ど、 どうしたんだ、

  おまえ ……… !?」

川添 「動かさないでください」

直哉 「(幸枝のベッドにすがりついて) 幸枝、

 しっかりしろ …… !  幸枝~~……… !!

 (泣き崩れる)」

  美和子と世良、 外で見ている。

美和子 「……… (何かを考えている)」

世良 「(美和子を見る) ………」
 

○ディスコ

  眩いばかりのイルミネーション。

  耳をつんざく大音響。

  美和子と世良、 激しく踊っている。

  (以下、 フキダシでなく 「  」 で)

(世良) 「何を考えてた--?」

(美和子) 「何のこと--?」

(世良) 「俺たちはあの人を 助けるために運

 んできた--」

(美和子) 「そうよ--」

(世良) 「今、 心の底から 木下さんが治るこ

 とだけを 望んでると言えるか--?」

(美和子) 「言いたいこと はっきり言えば

 --?」

(世良) 「期待してるんじゃないか--?」

(美和子) 「脳死を?  あの人の--」

(世良) 「心のどこかで---」

(美和子) 「そんなこと--」

(世良) 「--責めてるんじゃないんだ-

 -」

(美和子) 「じゃあ何?--」

(世良) 「--俺は、 自分が恐ろしい 気がす

 る--」

(美和子) 「え---?」

(世良) 「--俺も-- 一瞬期待した--

 -」

(美和子) 「----」

  妄執を振り払おうとするように 我を忘れ

  て踊り狂う二人。

(次の記事に続く)
 


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