1月17日、心子の祥月命日は、15年前に湾岸戦争が始まった日でもあります。
今年のこの日、湾岸戦争を描いた映画「ジャーヘッド」の試写会が開かれました。
湾岸戦争に実際に出兵した一海兵隊員が、戦場での実体験を記したノンフィクションを原作にした映画です。
一兵卒の目線から描く、今までにない戦争映画でした。
ヒーローもおらず、敵と闘うことも派手な爆撃シーンもなく、狙撃兵である主人公は、結局敵に向かって一発も弾を撃つことはありませんでした。
それが戦争の現実です。
「戦場の兵士たちの恐怖と退屈、孤独と猥雑と絶望を描ききった、戦争文学の最高峰」
(ニューヨーク・タイムズ)
開戦した当初、兵士たちは次々と砂漠の戦地に送り込まれてきますが、目の前に敵の姿や実戦はなく、何十万人もの兵隊が百数十日も砂漠で過ごします。
劇的な武勇伝も、熱き戦友の友情物語もありません。
国に残された妻が不倫現場のビデオを夫に送ってきて見せつけたり、焼死したイラクの民間人に屍姦する兵士もいます。
戦闘によって発散されないエネルギーが内に向かって爆発するのです。
それがまた戦争の空しさを浮き彫りにします。
大軍が砂漠に長期間駐留するだけで、一体どれほど巨額な軍事費が無駄遣いされていることか。
しかし非日常の軍隊の場、苛酷な訓練やしごき,兵士同士の喧嘩やいじめなど、様々なトラブルや事件などがしょっちゅう起こります。
敵が逃げたあと油田に放火したため、天をつく火柱が立ちのぼって油の雨が降ってきたり、とても通常では経験しないような時空間です。
けれども戦争が終わって帰国すると、兵士たちは再び平凡な日常に戻るのです。
ただし戦場での現実離れした経験は、体に染みついていつも消えないと言います。
ノンフィクションが原作のフィクション映画ですが、一級のドキュメント映画を観るような思いでした。
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