「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

ゲシュタルト崩壊

2010年02月26日 12時46分39秒 | 「境界に生きた心子」
 僕は 「境界に生きた心子」 を執筆した際、

 原稿を 恐らく百数十回 読み直したと思います。

 校正も 第十校まで行ったという  “異常さ” です。  (^^; )

 そして ゲラ (校正刷り) を繰り返し 見直しているときに、

 漢字が おかしく見えてきたことがありました。

 通常使っている 簡単な漢字が、 あれ? この字は これで良かったっけ? 

 こんな字だったっけ? という、 不思議な感覚に なってしまったのです。

 こんな簡単な字が 何で分からなくなってしまったのだろうと、

 不可解に思っていました。

 のちに、 これは 「ゲシュタルト崩壊」 という、

 一般的に起こる 現象だということを知りました。

 特に 上記の現象は、  「文字のゲシュタルト崩壊」 と言われます。

 「ゲシュタルト」 とは  「全体性を持った まとまりのある構造」 という意味で、

 それが崩壊するとは、 文字の全体性が失われ、

 個々の部分が独立して 認識され直されてしまうことです。

 例えば、 我々は 「松」 という字を、

 「木」 「八」 「厶」 など ひとつひとつの組み立てと 見ているのではなく、

 全体で ひとつの形態 (ゲシュタルト) として 捉えています。

 ところが 凝視しているうちに、

 「木」 「八」 「厶」 の部分が バラバラに切り離されて 感じられてきて、

 「松」 として 捉えられなくなってしまうのです。

 「仏」 「公」 「化」 「粉」 「若」 「借」 などの字で、

 この現象が起きやすいそうです。

 僕は 拙著の校正のとき、 ひとつの字だけを 注視し続けたわけではありませんが、

 何十回も見続けるうちに、 同じことが 起きてしまったのでしょう。
 

 なお、 「ゲシュタルト崩壊」 は心理学の概念で、

 文字以外にも 一般的な現象を示します。

 例えば、 生まれてから常識的に受け入れていた 環境や知識がありますが、

 全く違う世界を 体験したときに、

 自我やアイデンティティーの 土台そのものが 崩される思いをすることだそうです。

 因みに、 鏡に向かって  「お前は誰だ」 と言い続けると、

 自分が誰だか分からなくなって、 精神が崩壊する という話がありますが、

 これは マユツバの “都市伝説” のようです。

 でも、 本当にやったら 心が不安定にはなりそうなので、

 やらないほうがいいでしょうね。  (^^; )
 
コメント
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