毎週日曜日は新聞の読書欄に、最近出版された本の書評が掲載されます。
この欄に目を通すと、ある程度読書の目安になるし、新聞各社が注目している書籍が分かります。
それはすなわち、世の中がどういう方向に向かっているかの指針にもなるのです。
毎週この欄を見るのはとっても楽しみでわくわくしますが、評者の感想はあんまりあてにしていません。注目するのは内容紹介の部分で、これが自分に興味のある内容かどうかの判断になります。
新聞の他に、『出版ダイジェスト』や岩波の『図書』が定期的に送られてきているので、それらは日曜日に限らず目を通します。
書店に行けば新刊書籍は一番目立つところに平積みされています。しかしこれは書店が売れるかどうかで判断するので、あまりというか、ほとんど目安にはなりません。
とくに、平台のスペースが少ない中規模以下の書店では、出版不況ということもあって100パーセント売れるかどうかで判断されます。
残念ながら内容の善し悪しはまったく考慮されないのが現状。
ただし、平台や人員に余裕のある大型書店では、基本的に新刊書は平積みしますので、分類別コーナーに行けばほとんどの新刊書を手に取ることができます。
しかし、平積みしてあるから良い本、おすすめの本というわけではないようです。そんな判断は今の書店員にはできませんから、悪いけど。
ぼくが書店でバイトをしていたころは、新刊書が納入されると、気になる本は検品するついでに内容チェックをしたものです。
「検品に時間がかかりすぎる」と叱られたこともありますが。
でもそのおかげで、お客さんから「○○について調べたいのですが、どんな本がいいでしょうか」と相談を受ければ、店頭に立っている書店員なら誰でも、「それなら○○さんの書いた××という本はどうですか。△△についての最新情報が載っています」などと説明できたものです。
これは書店にとってもお客さんにとってもいいことです。
ところが今では、そんな気のきいた店員はいませんし、書店もそういうふうな店員教育はしません。
「中味なんか知らなくていい、顔(表紙)と背中(背表紙)だけ覚えなさい」と教えられるそうで、むやみにページを開くと叱られるとか。
店員はただただ、売上げに貢献すればいいことになっています。
本の内容を知ることも、売上げの貢献になると思うのですがね。
無能な店員のかわりに「読書相談コーナー」みたいなところがあって、年配の堅苦しい相談員みたいなのがいます。ほとんど役に立ちませんが。
ちなみに、昔のはなしですが、『アルジャーノンに花束を』(早川書房)という大ベストセラーがありました。
発売当初(1978年)はあまり売れなかったのですが、新宿の駅ビルにあった山下書店の読書好きの店員がたまたま読んで感動し、店長の許可を得ずにドーンと仕入れて平積み。
そこに自分で手描きポップを作って立てたのが大ヒットのきっかけです。
あまり知られていませんが、当時、早川書房営業部の山下書店担当者から聞いた実話です。
書店員が「本を読んでいた」時代だからこそあったことで、書店員が本を読まない(言語道断ですが)現代ではまずあり得ません。
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朝日新聞の書評欄を見て購入した最近の本は『ひげがあろうがなかろうが』(解放出版社)。
税込2940円もするので、Amazonで中古が出るのをしばらく待っていたのですが、しびれを切らして結局買ってしまいました。
そしたら小口にグラインダーがかかっていて、がっかり。
今時そんなもの使うのはBOOK OFFだけかと思ってたのに。
興味を引かれたのは、「差別を助長する」内容が含まれるということで絶版になった前作、『ひげのあるおやじたち』のテーマを踏襲するものであるというところです。
しかも、その絶版になった前作も併催されているというので興味津々。
「どこが問題だったのか。その点は『ひげのあるおやじたち』を併読されたい」と言われては読まずにいられません。
『沖縄基地問題の歴史』(みすず書房)は「出版ダイジェスト」の案内から。
四六判400ページで4,200円もするとんでもなく高い本(誰が買うんだ! あ、ぼくか)ですが、これは仕事の関係で読んでおかなければなりません。
ほとんどの本が沖縄問題を戦前戦後に分けて扱っている中で、この本は戦前との関連を詳しく述べています。著者の明田川融氏は1963年生まれの比較的若い研究者ですが、たまに名前を見かけるくらいの人でよく知りませんでした。しかし、これまでぼくはみすずの本で外した体験がありません。そういった出版社の信頼度も追い討ちをかけました。
で、清水の舞台から飛び降りたつもりで購入。(それほどでもないか。『沖縄戦と民衆』の5,600円より安いし)
この本は、荻窪の八重洲ブックセンターに予約を入れておいたもので、昨日購入し、今日から付箋と筆記具を片手に読みはじめます。
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今日の書評で気になったのは、これ。
池澤夏樹著『光の指で触れよ』(中央公論新社)。
タイトルからも内容からも、何となくスピリチュアルな臭いがしないでもないです。
ストーン・サークルのそばにたたずんだり、月の光と対峙したり。
しかし、「今の日本だから、お金お金と騒ぐ人の声ばかりが耳に入るから、それは違うと考える人たちの声が大事になる」という一節に興味を持ちました。
池澤さんは護憲派の作家で、憲法九条を守る活動にも力を注いでいる人なので、読んでみる必要あり、かなと。
ただ、緊急性がある本ではないので、古書でもいいかな、…ごめん池澤さん。
ああ、また本の整理をしなければ……。
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