戦場から生きのびて
ぼくは少年兵士だった
イシメール・ベア 著
忠平美幸 訳
河出書房新社 発行
定価 1,680円(税込)
少年兵関連の書籍は、合同出版の『ぼくは13歳 職業、兵士』をはじめ、複数出版されていますが、この本は少年兵自身が書いたものとしては最初になります。
西アフリカのシエラレオネに住む12歳のラップ好きの少年イシメールは、兄と友人の三人でラップとダンスの演芸会に参加するために町に向かいました。
しかしその間に、両親とともに住む自分たちの村は反乱軍に襲撃されて家族は行方不明、イシメールは帰る場所を失ってしまいます。
ようやくたどり着いた村には政府軍がいて保護されますが、その村も反乱軍に襲撃されます。
そこでイシメールは、政府軍兵士からAK47自動小銃を渡され人殺しの手ほどきを受けました。
カラシニコフAK47自動小銃。子どもでも使いこなせるほど操作が簡単で、手入れも楽だと言う。
「この銃は、じきにお前たちのものになるのだから、怖がらずにいられるようにした方がいい」
イシメールにはそれから兵士としての訓練が待っていました。
「最初に胃を突き刺し、次に首、次に心臓をつく。そして心臓をえぐりだし、そいつを見せたあとで、両目を抜き取ってやる。いいか、そいつはきっと、お前たちの親をもっとひどい手口で殺したんだ。続けろ」
最初は銃口を向けても撃つことができずにいたイシメールですが、一人殺してしまうと1週間後には平気で銃を撃てるようになっていました。
壊れた国で子どもたちに起きている出来事が、その本人の体験を通して生々しく語られます。
イシメールはその後、シエラレオネを脱出し、NGOの支援を得て米国に渡り、大学で学んでこの本を書きました。
リアリティーにとんだこの著作は、読者を引き込まずに起きません。これがすべて事実とするなら、実にすばらしいドキュメンタリーです。
世界の戦場では、彼のように才能のある子どもたちが、のぞまぬ兵士となってその夢をはたせずに命を落としたり、生還してもトラウマから立ち直れないでいます。これは戦争という悲劇の、「平和なわが国」ではあまり知られることのないひとつの側面です。
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