monologue
夜明けに向けて
 



 1
      子供の柔らかい肌に、悲しみの黒い雨。
      その染みは、大人になっても残るだろう。
      この染みは岩屋の向こうから狙っている獣の標的となるだろう。
      多くの人が口にする言葉はもはや何の力も持たない。
      バビロンの夢は、シバの思い。
      イカヅチと共に、鷲の巣を砕く。


「赤い月の形としての物語 」より

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      「バビロンの夢は、シバの思い。」

  ここでいうバビロンはウイキペディアなどの資料にによるとメソポタミア地方の古代都市でバグダードの南方約90kmの地点にユーフラテス川をまたいで広がり語義はアッカド語のバビリムBab-ilim(神の門)に由来し、マルドゥクを守護神としたという。旧約聖書創世記ではバベルと表記され、バベルの塔の伝承にて混乱(バラル)を語源とすると伝える。
つまりは「バビロンの夢」とはバベルの塔を建設して神に近づこうとするような夢。 この詩では原発がバベルの塔の建設のようなものとみられる。
シバの女王はシバ王国の支配者で、ソロモンの知恵を噂で伝え聞き、エルサレムのソロモン王の元を訪れたとされる。ソロモン王になぞかけして知恵を競ったほどのかの女の思いもまたバベルと同じ夢を共有する。
そこで「イカヅチと共に、鷲の巣を砕く。」。
海岸線に並び立つ原子力発電プラントを切り立った崖に鷲が巣を作っている様子にたとえ、「鷲の巣」と呼んでいるのだ。その砕けるさまはバベルの塔の崩壊に似ているようだ。原発は現代のバベルの塔ということか。
fumio


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