monologue
夜明けに向けて
 




         2
      ジャンヌはもはやフランスから来ないだろう。
      黒い旗はむしろカリブの方向から来るだろう。
         「さて」と娘は話す。
      「私は何処に着くのでしょう」
      そう、娘の舟は月の影を回り、そしてヴィナスの夢を見る。
      大いなる「海王」と、大いなる「眠りの王」との
      楕円の舞踏会では、「火の王」と「木の王」とが密談を交わす。
      ひとり外れて「土の王」が嘆く。
      「水の王」は娘のために舟を出す。


「赤い月の形としての物語」より

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以前にも述べたが、この節の記述は太陽系の星々の運行の姿を詩的に描いているだけのようだがシュメールの宇宙創世叙事詩エヌマ・エリシュ(Enuma elish)に基づいているので今回も読み解くための基礎知識としてそのあらましを記しておく。


エヌマは時間(When)で、エリシュは上(high)(天)ではと言う意味で絶頂の時などとも訳される。
「混沌の中に、水の男神太陽アプス(Apsu)と、海の雌竜、原地球ティアマト(Tiamat)と、生命の源、水星ムンム(Mummu)が存在した。
アプスとティアマトから、火星ラフム(Lahmu)と金星ラハム(Lahamu)土星アンシャール(Anshar)と木星キシャール(Kishar)天上神天王星アヌとその息子の知恵の神海王星エアが誕生した。
アヌやエアたちの喧騒に耐えかねてアプスは子供たちを滅ぼそうとしたのでエアがそれに気づいてアプスを眠らせしムンムも動けなくした。
今度はティアマトが二番目の夫キングウ(Qingu)と一緒になって戦いに臨む。エアは敗れアヌも敗れた。それでエアはダムキナとマルドゥクを生む。
アンシャールはマルドゥクにティアマト平定を命じ、マルドゥクはティアマトの身体を裂き天と地に分けた。かれは太陽、月、惑星を造り、時を十二分割して、ティアマトの身体からバビロニアの国を造り主神となった。エアはキングウの血で奴隷となる人間を造った。」

ということで大いなる「眠りの王」という表現は海王星、エアによって眠りを与えられた祖神太陽(アプス)のことと考えられる。
「水の王」とはエアという名そのもの。エアのもとの名はエンキといいシュメール語のエン(EN)は支配者でキ(KI)は地なのでエンキという名は『地の支配者』という意味であった。


 そのエンキは天から降りて地の支配者としての仕事をするがあるとき天の支配をしていた兄弟エンリルが降りてきて地の支配もするようになりそのときからエンキの名前はエア(EA)となる。エ(E)は家でア(A)は水を表す。すなわち、水の神ということになるのだ。
レリーフに見られるかれの印は三日月や蛇である。ギリシャ神話ではポセイドンに当たり、日本神話ではスサノオである。出雲の印は三日月で子の大物主は蛇の精。
そのかれが娘のために舟を出すのである。なにが起こるのだろうか。
fumio


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