monologue
夜明けに向けて
 



1960年代初頭、英国に庭でブルースの種をついばんでいる鳥達がいた。かれらは腹が満ちると自分達を「ヤードバーズ(The yardbirds)と称し囀り始めた。
I Wish You Would でデビューし、第二弾のGood Morning Little Schoolgirl ではギターのエリック・クラプトンとベースのポール・サミュエル=スミスがボーカルをとっていた。ブルースは一部には受けても商業的に成功するはずがないのでマネージャー、ジョルジオ・ゴメルスキーとメンバーは諮(はか)って第三弾に印象的なチェンバロをイントロにしたヒット狙いのFor your Loveを出そうとした。そのとき、事件は起きた。看板ギタリスト、エリック・クラプトンが脱退してしまったのだ。"It was all really joke for me "「それはぼくにはまったくのジョークだった」「ぼくはどんどんブルースを深く極めようとしてるのに、かれらはどんどん軽くしてゆくんだ」とかれはなげいた。いつものように芸術とコマーシャリズムの相克である。

しかしながら」『For Your Love』は大ヒットした。庭の鳥達はそれぞれ飛び立ち1969年1月5日、ロサンジェルスのクラブ、「Whisky A Go-Go!!」では、「鉛の飛行船( Led Zeppelin)」に変貌して「For Your Love」を演奏しているほどである。

 このFor Your Love の核になっている「Em-F-G-A-Am」というコード進行は大ヒットするだけあってミュージシャンの作曲意欲をかきたてるものがある。わたしも素顔のマスカレード で使用している。ロサンジェルスで「SF」というバンドのライブをやったとき、アンコールで知っている曲を全部やったあとまだアンコールされるので困ってドラムの宮下富実夫が日本でやっていた「ファー・イー・スト・ファミリー・バンド」の曲「セイ」をやろうということになった。その曲のコード進行が同じだった。宮下もまたこの進行に夢を乗せて曲作りしていたのだ。まともな歌詞を歌えたのは宮下富実夫だけでギターの中島茂男とわたしは適当にアドリブで作りながら歌った。クラプトンを怒らせたこの曲「For Your Love」のコード進行は今もだれかの作曲意欲を刺激して新たな名曲を産もうとしているはずである。
fumio

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