monologue
夜明けに向けて
 



 
 1967年6月25日の明け方、わたしはテレビの画面に釘付けになっていた。英国BBC放送が企画した史上初の全世界衛星生中継番組「アワ・ワールド(Our World)」の英国代表、ザ・ビートルズがEMIのアビー・ロード第1スタジオで、All You Need Is Love を演奏するのだ。生放送でビートルズが見られるのである。

 放送が始まると、正装したオーケストラと当時流行ったサイケデリック模様の服を着たビートルズが映し出された。イントロになぜか聴き覚えのあるフランス共和国国歌 「ラ・マルセイエーズ(La Marseillaise)」のメロディが流れ、あれっフランス国歌なのにと思うと「ラヴ・ラヴ・ラブ」とコーラスが始まった。実に感動的だった。ジョン・レノンはガムでも噛んでいるのかなにやら口をくちゃくちゃ動かしながら歌い始める。

 時代背景はベトナム戦争が泥沼化して各地で激しい反戦運動が起こっていた。そして一方では「愛と平和」が若者の合い言葉になってフラワー・ムーブメントの中、数日前にはカリフォルニアでモントレー・ポップ・フェスティバルが開催されている。この日のビートルズのパフォーマンスにもそんな時代の空気が色濃く反映されていた。ミック・ジャガーなどなじみの顔が映りうれしくなった。そして混沌としたエンディングのとどめにジョンが「シー・ラブズ・ユー」とアドリブで叫ぶのがなんともいえなかった。
All You Need Is Love…。そう、愛だけしかいらないんだ。
ffumio

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