monologue
夜明けに向けて
 



 今にして思えば、表面上平和そうにみえた1963年は実は前年デビューしたザ・ビートルズがまず地元イギリスを制覇しそのマグマの奔流が世界に噴き出そうとする嵐の前の静けさであったに過ぎなかったのだ。

 1964年に入ってキャッシュボックス誌のベスト10を高校時代のノートから写すと 1月18日付の分は以下のようになっている。
-------------
January 18
1.Louie Louie Kingsmen
2.There! I’ve Said It Again  Bobby Vinton
3. POPSICLES AND ICICLES  Murmaids
4. SURFIN’BIRD Trashmen
5. FORGET HIM Bobby Rydell
6. DOMINIQUE Singing Nun
7.THE NITTY GRITTY Shirley Ellis
8.Hey little cobra  Rip Chords
9. SINCE I FELL FOR YOU  Lenny Welch
10. Drag city  Jan and Dean

*******************

 この週は評論家ピーター・バラカン氏がロック史上最も好きというキングスメンの「ルイ・ルイ」が2週連続首位に輝いていた。この「ルイ・ルイ」 は歌詞が聞き取りにくいので、きっと猥褻なことを言っているのだろう、と識者に邪推されて放送禁止になったりして話題の曲だった。

 そして翌週、歴史は変わる。ついに目に見えなかったマグマが噴き出すのだ。

-------------
January 25
1. I WANT TO HOLD YOUR HAND Beatles
2. THERE! I’VE SAID IT AGAIN Bobby Vinton
3. LOUIE LOUIE Kingsmen
4. POPSICLES AND ICICLES  Murmaids
5. SURFIN’ BIRD Trashmen
6. YOU DON’T OWN ME Lesley Gore
7. HEY LITTLE COBRA Rip Chords
8. OUT OF LIMITS Marketts
9. FORGET HIM Bobby Rydell
10. ANYONE WHO HAD A HEART Dionne Warwick

*********************

 司会の小島正雄さんが興奮気味に「今週の全米1位はザ・ビートルズのI WANT TO HOLD YOUR HAND 、この曲は先々週初登場80位、先週43位でした。」と言うのを聞いて、あれっと思った。ザ・ビートルズというのは数週間前に今週の注目曲として「プリーズ・プリーズ・ミー」 という日本発売新譜を小島さんが番組で紹介していたのをテープに録音して気に入ったので何度も聴いて記憶にある名前だった。そのバンド、ザ・ビートルズが別の曲で突然1位になったのだ 、となんだかうれしかった。「プリーズ・プリーズ・ミー」はどうなったのか、と思っているとそれからI WANT TO HOLD YOUR HAND は8週連続1位を続け4月4日のベスト10は、
---------------------
April 4,
1.TWIST AND SHOUT Beatles
2.CAN’T BUY ME LOVE Beatles
3.SHE LOVES YOU Beatles
4.I WANT TO HOLD YOUR HAND Beatles
5. PLEASE PLEASE ME Beatles
6.HELLO, DOLLY! Louis Armstrong & All Stars
7.DAWN (Go Away) 4 Seasons
8.MY HEART BELONGS TO ONLY YOU Bobby Vinton
9.GLAD ALL OVER Dave Clark Five
10.SUSPICION  Terry Stafford

****************************

 この日、ノートをつけているとなんと1位から5位までがビートルズだった。のちの世まで語り継がれるべき快挙。かれらは歴史を作ったのだ。この週、アメリカのラジオ局は朝から晩までビートルズを流していたのだろう。9位にDave Clark Fiveが追撃するように入ってきているがこれからイギリス勢が大挙して押し寄せ第1次ブリティッシュ・インヴェィジョンが始まることになる。アメリカ、ヨーロッパ、世界、日本は突き上げるような揺れに蹂躙されてとうとう長い太平の眠りから醒めることになった。
fumio



コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )