monologue
夜明けに向けて
 



 1962年9月4日にザ・ビートルズはデビュー・シングル用に用意されたHow Do You Do It をEMIスタジオで初録音している。
ところがかれらはその与えられた他人の歌が気に入らずメンバーのジョン・レノンが作った「ラヴ・ミー・ドゥ 」でデビューすることにこだわった。それでHow Do You Do It はジェリーとペースメーカーズにまわり英国で1位になっているのだが、もしザ・ビートルズがこれまでのレコード会社の制作システム通りに「How Do You Do It」 でデビューしていれば歴史はすこし遅れていただろう。

 ビートルズ出現は音楽界のシステムを変えた。1963年の ヒットパレード状況をみてもわかるようにそれまでは、作詞家が詞を書き、作曲家が曲を作り、演奏家が演奏し歌手が歌うというようにそれぞれ役割分担して専門毎に棲み分けていた。ところがビートルズは作詞作曲、演奏、歌と全部自分達でこなした。そのために従来の形にとらわれず独創的な作品を創れることになったのだ。かれらが手本を示したおかげで現在では作詞作曲演奏など当たり前になっている。だれもそのことを奇妙と思わない時代になったのである。あまり気付かれないかもしれないがビートルズは大ヒットしただけではなく業界およびミュージシャンの太平の眠りを覚ましたのだ。自分でできることは人まかせにしないで自立して自分でする。ミュージシャンといえどあやつり人形に甘んじない。それこそがかれらが後続の若者へ遺した大いなる遺産であった。
fumio

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