monologue
夜明けに向けて
 



 初期の頃、シカゴブルースを中心に採り上げていたローリングストーンズは先行するビートルズに倣って初めて自作の曲「ラストタイム」 を発表した。そして新曲作りに取り組んでいたキース・リチャードは睡眠中、ギターリフを思いついて夜中に夢遊病のように夢うつつでオープンリールのテープレコーダーに吹き込んで眠った。朝起きて昨夜の出来事が本当なのか確かめるためにテープを聴いてみると確かに録音されていてそのフレイズが気に入った。それが世界のロック音楽界を制する新曲 Satisfaction のイントロになったのであった。「ラストタイム」ではサイドギターを弾いていたキースはこの「サティスファクション」ではリードギターを弾いている。
 
 当時、米ソウル界の新星、オーティス・レディング(Otis Redding)はイギリスから発信される新たな音楽の潮流に関心を寄せローリングストーンズの新曲が発表されたと知るとすぐに聴いて自分のスタイルに合っているからカバーしレコーディングして レパートリー にした。やがてアメリカでもローリングストーンズの「サティスファクション」が発売されるとファンたちは「今度のローリングストーンズの新曲はオーティス・レディングの歌のパクリだ」と噂した。オーティスのカバーがあまりに早かったためにローリングストーンズは変な濡れ衣を着ることになってしまったのであった。オーティスはその後しばらくして飛行機事故で26才という短い一生を終えることになったが、さすがに天才たちはアンテナが鋭い、と思わせられたものだ。
fumio


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