80ばあちゃんの戯言

聞いてほしくて

おしゃれ心(5)

2012-03-27 07:13:10 | 思い出
最近では、どんな色をどんな季節に着る

かと言うことが論じられるようなことは

ないが、以前は真冬に白いものを着ると

言うのは寒そうなので考えられないとさ

れていたようである。

でも、私は白は寒そうでも、オフホワイト

の服なら、多分すてきだろうと考えていた。



その頃は茅ヶ崎の団地住まいだったのだが、

時々ビニールクロスと呼ばれた布地の

”おしゃか”と言うのだろうか、所々に

製品に疵ができて売り物にならないような

物を二、三メートルの長さに切って、団地

の広場で茣蓙(ござ)を敷いた上に広げて

売っていたのである。

私は何時もどんな物があるかと気をつけて

見ていて、黒だとかこげ茶色の裏地がしっ

かりして軽そうな仕上げのものを選んで

買うことにしていた。

本当に安くて100円だとか 150円だと

かと言う信じられないお値段で、子供達の

半ズボンがいくつもできてしまう。

二人の息子は運動好きの子だから、泥々にな

るのが常だったのだが、その布地で縫った物

はちょっと濡らしたタオルで拭くだけですぐ

綺麗になり時々お洗濯をしてやればよくて、

着心地も良いと息子達が喜んでいたからである。

或る時、そのお店でオフホワイトのビニール

クロスの反物を拡げていたおじさんに声を掛

けられた。

多分顔を覚えていたらしく、

”奥さん今度は何を作るんだい?”と聞いて

きたのである。

 ”これで、ロングコートと、できれば、お対

 のスカートを作りたいの。”と言うと、

おじさんは急に嬉しそうな顔をして、

”じゃあ、うんとおまけしてやるから持って

きな”

と言ってくれて、その布地をどんどん拡げて

見せてくれた。

オフホワイトの美しい布地の真ん中に地図を

描いた様な黒い疵が、ずっと続いていた。

ちょうど真ん中に疵があって、その両側で

身頃が取れるのではないかと思って、それ

を買うことにしたが、おじさんは私が、そんな

におまけしなくてもと言うのに、どんどん布

を引き出しておまけしてくれたのである。

お蔭でゆとりを持って、コートとスカート

に袋物を作ることができた。

友達にほめられ、家具ではなく洋服の

デザイナーになればよかったと言われ

”そこまでは無理、無理”と言って

しまった。〈笑い)

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