80ばあちゃんの戯言

聞いてほしくて

両親の思い出(1)

2012-03-22 08:42:09 | 教育
私は長女で両親にとってはじめてのこども

であったから、本当に一生懸命育ててもら

い、私もおとなしい方の子供だったし、

あまりいたずらも喧嘩もせず、叱られた

記憶がない。

しかし、すぐ下の弟は”跡継ぎ”だと言う

ことで、父の期待は大きかったらしく、

小学校の高学年の時には、鉄兜が弟に

飛んでいったこともあった。勿論父として

はぶつけるつもりはなかったらしく、たまたま

母が留守で、私がなんとかしなければ

と部屋の戸を開けたとたんに、私の足元に

転がってきたのだから、まあ、弟が傷を

負ったと言うことはなかったのだが、

次女、三女になると、世の中も世知辛くなり

更に下の弟になると、太平洋戦争が始まっ

ていたり、戦後のどさくさの中、母も仕事に

就いたりして、あまり教育のことを良く考え

ている時間はなかったのだろうと思う。

私の良く覚えている父は毎日の通勤時に、

本を二、三冊も持って歩いていた。

”児童心理”

”こどもに聞かせるいい話365話”と言った

本が多かった。

 或る年の秋大嵐がやってきて、父は屏風ヶ浦

と上大岡の間のトンネルの電車の中で一夜を

過ごした事があったが、その時、車掌さんが

雨の中を、電車の外へ何度も出たりして

ずぶ濡れになっていたらしい。父が見かねて

自分の服を脱いで着せてあげたそうで、爾来

父の顔を見ると、その時のお礼を言われるとか、

或る時、私もその車掌さんの勤務中の社内で

父と一緒に乗っていたら、父のことを”先生”

と、呼んでいたので、家に帰ってから、父に

”あの車掌さん。お父さんのことを何で先生

と呼んでいたのかしら?”

と、聞いて見たら、

 ”多分、嵐の時にお父さんが、上着を貸し

たのだが、その時にお父さんが持っていた

本を見て、先生と勘違いをしていたようだ”と、

父はさもおかしそうに笑っていた。

(つづく)


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