Zooey's Diary

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「千葉からほとんど出ない引きこもりの俺が、一度も海外に行ったことがないままルーマニア語の小説家になった話」

2024年09月02日 | 


このタイトルを見たら、読まずにはいられない。
著者は1992年千葉に生まれ、大学受験に失敗し、受かった大学に通うものの、サークルで失恋。鬱になり、就活に失敗、コロナの襲来を経てひきこもりに。21年以降クローン病という腸の難病に罹り、安静が求められる身となったという。
しかし彼は、元々、半端でない映画オタクであった。
大学時代から大量の映画を観ては批評文を書きまくっていたが、あるルーマニア映画に出会って衝撃を受ける。
そこからルーマニア愛が始まり、ルーマニア映画を観まくり、ルーマニア語に溺れ、ルーマニア語の参考書を買う。そして彼がしたことは、FaceBookでルーマニア人の友人を何千人と作るということ。そして彼らとやり取りをしながらルーマニア語を磨き、遂にはルーマニア語で小説を書くようになった、ということです。

”ルーマニアのルの字も聞こえやしない、千葉のどっか。住んでる町には地下鉄は通っているけども、マクドナルドもなければ牛丼屋も一軒たりとも存在しない。そのくせ、歯医者だけは何でだか4,5件くらいある陸の孤島みたいなところ。そんな町の片隅にある何の変哲もない家、その二階で俺は殆どの日本人が理解できないルーマニア語をタブレットに向かって叩きつけている。下の階では両親が普通に飯とか食ってる。つまり実家暮らし。しかも生まれてこの方三十年、ろくに外の世界に出たことがないんだ。
いわゆるアレだよ、引きこもりってやつ。生まれついての引きこもり体質。”

その引きこもりがどのようにルーマニア語を習得し、ルーマニアで認められるだけの小説家になったかということが具体的に書いてある訳ですが、しかしこの著者、元々タダ者ではなかったのですね。
私も映画が好きな方で毎週映画館に通い、ミニシアターで東欧や中東のマイナーな映画を観たと言っては周りに呆れられる口ですが、その私が聞いたことがないルーマニア映画が羅列されている。
引きこもり時代に観まくっていたという映画についての記録ノートがあるというのですが、2011年から今までに44冊、1ページ1本分というのですから…
しかもこの人は、その映画についての批評文をネットに書きまくり、ついでに小説も書いていたらしい。

という訳ですから素養はあったのでしょうが、それにしても凄い。
今ではルーマニア語で詩と小説を書き、ルーマニアの有名な文芸誌に掲載されており、ルーマニアでルーマニア語の本を出版することが、直近の目標なのだそうです。
「おわりに」と題した最終章で、様々な人への感謝の言葉が書き綴られる中、
「親へ。正直、今はまだ感謝も謝罪も語る勇気がない。だがこれだけは言わせてくれ。これから改めて、共に生きて行こうと。」という文が。
ここから、親御さんとは、言葉に尽くせない程の葛藤があったのだろうと想像してしまいました。

コメント (6)
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