直木賞作家朝井まかてさんの最新作は、徳川5代将軍「綱吉」の生涯を描いた伝記的小説である。
小説「すばる」2015年1月~16年3月号連載、298頁。
物語~早世した実兄「家綱」から「強き将軍に成りて、天下を束ねよ」との遺訓を受け5代将軍となった「綱吉」は、これも遺訓である「泰平の世を」実現すべく政務に励むのだが・・・」
兄弟間という前例にない世継ぎだったこともあり、綱吉は、優れた天下人たらんと努力するが、例えば、「生類憐みの令」ひとつとっても、その真意を理解されぬまま、「犬将軍」の汚名を着ることになる。
一方、この間、赤穂浪士の討ち入り、富士山の噴火や大火など、度重なる困難に見舞われながらも、自らの信ずるところに従い、その強権をもって「文治政治」を徹底する。
この点からすれば、表題は、「最悪の将軍にあらじ」とすべきだったのではないか。まかてさんの新境地を拓く硬派の物語である。