アーバンライフの愉しみ

北海道札幌近郊の暮らしの様子をお伝えしています。

凡庸なるゆえに~伊藤潤著「峠越え」

2014年04月30日 | 読書三昧
信長でも秀吉でもなく、家康こそが天下人たりえた理由とは?
新刊展望2011年7月号~13年6月号連載



物語~信長の同盟者として甲斐武田家を滅ぼした家康は、信長の招きに応じて安土城を訪れ、その後堺に遊ぶ。その頃、信長は本能寺において光秀の謀反により命を落とす。家康の逃避行がはじまる・・・。

伊藤氏はいつものことだが、歴史の大きな流れを淡々と描く。
これは、時として淡白な読み心地となってしまうのだが、歴史を概観する場合、むしろこうした描き方が理に適っている。

つまり、あれこれ細かいことまで触れられると、背景としての歴史の流れに目を奪われ、肝心の主人公が生き生きと動き出さないからだ。

こうした物語を読もうという読者は、信長の去就も家康との関係も知ってのことだから、そうした土俵の上で、生き生きと活動する主人公たちの物語を期待しているのだ。その点で、この小説は成功していると思った。
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セカンドオピニオンの大切さ

2014年04月29日 | アーバンライフ
病になり、医者にかかってみたがどうも良くならない。
また、医者の言うことが腑に落ちない。

こんなご経験はありませんか?

そんな場面にぶつかったら、躊躇なく「セカンドオピニオン」の聴取をお勧めします。

これは、最近、小生が行っている「網膜剥離友の会」での活動で遭遇した出来事。



札幌にお住まいの熟年世代の女性の方から、

「東京で暮らしていた際、眼の具合がおかしいので近くの眼科で診てもらうと、”加齢による網膜症で、いずれ手術が必要。網膜剥離の可能性もある”との診断を受けた。以後、3ヶ月毎の定期健診を受けている。昨年4月から札幌住まいだが、どうしたものか」

とのご相談を受けた。

そこで、友の会(網膜剥離友の会)の協力医で札幌在住のM先生をご紹介したところ、早速受診され「セカンドオピニオン」を伺った由。

結果は”黄斑前膜”との診断で、「剥離の可能性なし、視力も0.6あるのだから今のまま生活すべし。定期健診の必要なし」とのことであった。

彼女からは、「過去3年間の不安な毎日と3ヶ月毎の定期検診は何だったのか」と思わず笑ってしまったとのご報告をいただいた。

この記事をお読みになられた方は、どうぞ、そのような場面に遭遇したら躊躇することなく、「セカンドオピニオン」を聴取する機会を持ってほしいと思います。
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原発事故の恐怖を描く~映画「みえない雲」

2014年04月28日 | ギャラリー
先日、テレビ台の引き出しに、見覚えのないDVDが入っているのに気が付いた。

ジャケットには、「2012年通販生活~定期購読者用特別付録」とあるから同誌に同梱されてきたものらしい。

早速視聴してみると、原発事故が引き起こす極限状態を描いた映画で、2006年ドイツで制作・公開されたという。



物語~近郊の原発が事故を起こし、放射能を帯びた雲が街へと迫る。女子高生のハンナは、転校生のエルマーから告自を受けた直後だった。

けたたましいサイレンにかき消される幸せな時間。街は一瞬にしてパニックに陥り、ハンナとエルマーは極限状況下で暴徒化した群集に巻き込まれ、離れ離れになってしまう。

この事故で母も弟も亡くしたハンナ。二人に降りかかる様々な困難と恐怖。果たして二人は再会できるのだろうか。

原作は、チェルノブイリ原発事故を題材に、翌87年、ドイツで発表されたベストセラー小説だとある。

見終わって感じたことは、何故私たちは、この映画が描いてみせた貴重な教訓を生かせなかったのかという思いであった。つまり、映画は、まさに福島の原発事故そのものであった。
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帰って来た~漱石の「心」

2014年04月27日 | ギャラリー
1914年(大正3年)、朝日新聞紙上に連載された漱石の「心」が、100年の時を経て同紙に帰ってきた。



連載開始からちょうど100年。
同じ4月20日から同紙朝刊紙上でのリバイバル掲載が始まっている。

これは、昨日(26日)付けの分だが、分量もしっかりあって現代の新聞小説より読み応えがする。

今後、先生とお嬢さん、親友Kとの関係など、複雑な人間模様が展開して行くわけだが、現代によみがえった「心」を、新しい「新聞小説」として読む楽しみが加わった。

蛇足:これは、乃木坂46の白石麻衣さんが朗読する「こころ」。YOUTUBEの動画です。
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ニセコの春一番~ヤチブキ

2014年04月26日 | 田舎暮らし
待ちに待ったニセコの春一番が咲き出した。

まだ雪の堆積する沢筋から始まるニセコの春。
それを伝えるヤチブキ(エゾノリュウキンカ)の花。



サラサラという軽快な響きの渓流をバックに、ニッコリと微笑むかのような黄色の花

これを見ると、私たちは、春の本格的な訪れを実感するのです。



ご近所の方へのおみやげと、これを摘んでご満悦の家内。

この沢筋は、いずれ、この黄色い花で埋め尽くされるのだが、今はまだ、ボチボチ咲き始めた株を中心にひっそりした佇まいをみせている。
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増税の影響はっきり

2014年04月25日 | ドラミング


一昨日、いつものスーパー(COOP)に週一の買い出しにでかけたが、駐車場に着いて驚いた。

いつもの1/5くらいの車しか駐車していない。
店内も、お客さんの姿がまばらで閑散としている。

昼直前という時間で、いつもならかなり混雑するはずなのにどうしたことか。

商品を選び終わってレジへ行くと、三つしか開いていないカウンターの内二つはお客さんが並んでいなかった。こんな風景を見たのははじめて。

一方、買い物に先立ち散髪に行ったのだが、いつもの値段に8%を上乗せした金額を請求された。つまり、先月までは消費税を上乗せしていなかったとかで、増税を機に8%乗せたので、実質、5%の値上げとなった。

典型的な便乗値上げで気分が悪かった。来月からは、別の理髪店に行ってみよう。
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電車を乗り間違えた娘への親切

2014年04月24日 | ドラミング
世の中、暗い話ばかりで滅入る毎日だが、一昨日の新聞(朝日)に次のような投書が掲載されていたので、ご紹介したい。

とても良い話だ。



一方、連日伝えられる韓国船沈没をめぐるニュースで、乗船客を置き去りにして逃げたという船長をはじめ乗組員の職業意識のなさには目を覆いたくなる。人間、心づもりひとつでこうも結果が違って来るのかと愕然とする。
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ここだけの春

2014年04月23日 | 田舎暮らし
春ですね!

でも拙宅周辺は、ここだけが春です。



周囲はまだ深い雪に覆われています。



これは、今朝の台所の窓からの風景。
隣家から押し出されてきた雪が小山を作り、遠くには真っ白なアンヌプリ山が見えています。

この山は、頂上からの滑降ができるので、シーズン中は大勢のお客様でにぎわうところです。

今は大分静かになりましたが、連休のシーズン閉幕まで春スキーが楽しめます。
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輝きを増す茶器のように~追悼:山本兼一氏

2014年04月22日 | ギャラリー
先に、直木賞作家・山本兼一氏の「花鳥の夢」をウンウン言いながら読んだ。
安土桃山時代を代表する天才絵師で、国宝「洛外洛中図」などの傑作を残した狩野永徳(1590年没47歳)の物語だったが、これを活写した山本氏も若く(57歳)してこの世を去った。

社会派作家の山崎豊子さんも逝かれ、私たちは短期間に惜しい作家を続けて失ったことになる。

4月7日の新聞(朝日)に、伊藤潤氏による(山本氏の)追悼文が載ったので、備忘録的に掲載して置きたい。



大きな記事がこちらにあります。
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戦争とは?日本人とは?~山崎豊子著「約束の海」

2014年04月21日 | 読書三昧
社会派作家で、数々の名作を残して来た山崎さんの絶筆となった作品。



テーマの今日性、広大なスケール感と魅力的な登場人物等々、従来のヒット作に勝るとも劣らない重厚な物語なのだが、残念ながら(著者逝去により)第1巻のみで未完となった。

1988年(昭和63年)7月23日、東京湾において海上自衛隊潜水艦「なだしお」と遊漁船が衝突し、遊漁船が沈没して30人が死亡した海難事故を詳細にフォローするかたちで物語は進行する。

この時、哨戒長付だった主人公・花巻朔太郎(二尉)は、発令所で潜望鏡を通して右前方から近づきつつある遊漁船を捉えていたが、突然、左舷に現れたヨットに幻惑され、(遊漁船との)衝突を予知できなかった自分の不甲斐なさに呆然とする。

山崎氏は執筆にあたり、「読者の皆様へ」というメッセージを発表していて、

「戦争は絶対に反対ですが、だからといって、守るだけの力も持ってはいけない、という考え方には同調できません。いろいろ勉強していくうちに、”戦争しないための軍隊”という存在を追及してみたくなりました。」

とこの小説を書く動機を語っています。(お勧め度:★★★)

蛇足:この物語の続き(第2・3巻)は、作者と新潮社のサポートプロジェクトとのコラボでほぼ出来上がっていて、それが巻末に収録されているから、読者は、物語を完結させることができる。
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