昨日午後2時から札幌地裁で第27回口頭弁論が開催された。
傍聴席は58席、運よく席を引き当て傍聴者として入廷。
始めに、原告団の一員で、長年、原発開発にも関わった尾関さんの意見陳述があった。(別項ご参照)
続いて原告弁護団が制作した「岩内平野の地形発達史的研究から泊原発敷地内のF-1断層が切る地層は約33万年前の海成層と断定できる理由」のDVD上映があった。
このDVDは、文書や図面だけの説明ではわかりにくい海成段丘のでき方や、北電の主張している「岩内層」の年代や認定の誤り、敷地内の活断層などについて平易に解説したもので、傍聴者にも理解できる内容であった。
続いて、裁判長から原告、被告双方に対し、「自らの主張を簡潔にまとめたメモ」の作成要請があり、4月15日までに提出することになった。
次回公判は5月13日(月)午後2時からと決定し閉廷となった。
【尾関さんの意見陳述】
原告の尾関敏明と申します。
私は、2011年3月まで東京の電機メーカーに勤務し、原子力を含む発電用熱交換器の開発、設計、製造、監理に関わる仕事をしておりました。
原子力発電の安全神話にどっぷりと漬かりつつも一人の技術者として「安全な機器を製造する」為に努力を惜しまなかったと思っております。
しかし、退職の直前ではありましたが、東京電力福島第一原子力発電所の4基の原発は、3月11目の震度7に達する地震と、それによる巨大津波の到来により、外部電源が喪失し冷却機能を失った1、3、4号機が次々と爆発しました。
過酷度レベル7という事故によって、発電所を中心とする広範な地域が放射性物質により汚染され、多くの住民が、一瞬にして、長年住み慣れた豊かな先祖伝来の地から避難しなければなりませんでした。
この事故により、福の島である福島は不幸な島となり、人々のコミュニティは分断され、経済力のないお年寄りたちは、新たな土地で新たな生活を再建、復興する力もないままに寂しい生活を余儀なくされています。被災した酪農の再建の望みを失い「原発がなかったら・・」と書き残して自らの命を絶った方もおられます。
事故発生からもうすぐ8年の時間が流れようとしていますが、メルトダウンした3つの原子炉は未だ燃料棒の取り出しも出来ず、廃炉作業の工程は進んでいません。
流入する地下水は汚染され、それが汲み上げられ、汚染水タンクに貯り続けています。廃炉現場の作業員は毎日、不自由な防護服を着てフイルムバッジを付け被曝しつつ終わりのない作業を余儀なくされています。
原発は事故が起きると、他のどんな発電所よりも重大な結果をもたらします。そしてそのような事故を完全になくする事は出来ないのです。
原発は、政治や経済の課題ではなく、生きとし生けるもの全てのいのちの尊厳にかかわる倫理的課題としてとらえる必要があります。
第1に、事故発生時、近隣住民の避難の安全性が確保できません。避難の為の移動手段、経路を確保出来ない可能性があり、地震や噴火などの自然災害が先行する場合には、事故が発生した時点で既に避難経路が確保出来ない可能性があります。
第2に、事故が発生しなくても原発の運転中に排出される微量の放射性物質の拡散により立地近隣の住民の被曝による健康被害は他の地域に比べて高くなるという事が既に確認されております。
第3に、原発の燃料となるウラン鉱石の採掘から運転、そして使用済核燃料の処分など全ての過程で被曝があり、原発で造った電気を使用する人々との間に差別や分断を生じます。
第4に、原発の使用済核燃料の高レベル放射性廃棄物は厳重に管理して被曝しないようにしなければなりませんが、その期間は10万年という時間が必要です。原発は「トイレのないマンション」と言われるように、最も大きな問題である使用済核燃料の安全管理を後世代の人々に委ねざるを得ないのです。
第5に、事故が発生したら放射性物質は空中・水中に旅出され拡散してきます。泊原発は北海道の西端に位置しているため、事故が起れば、西風により北海道全域が放射能で汚染される可能性があります。
道政の中心地札幌は泊原発から直線距離で僅か80㎞です。北海道は日本の食糧庫と言われています。北海道は何としても放射能汚染から守らなければなりません。そして北海道農業を守らなければならないのです。
昨年12月にも泊原発0非常電源装置の不具合が見つかりました。この状態で運転していたら、そして外部電源が遮断されるような災害や事故が発生したら、福島第1原発と同様の事故が発生した可能性もあるのです。
更に、9月に発生した北海道全域停電(ブラックアウト)に関する第3者検証委員会は泊原発がフル稼働中に一斉停止した場合、再びブラックアウトに至る可能性が高いと指摘しています。
第6に、泊原発の西15㎞の沖合には、長さ60~70㎞の活断層があることが北大名誉教授の小野有五さんらが指摘しています。これは逆断層といわれるもので、断層面が泊原発の真下に向って傾いて続いていくものです。したがってこの地域さ直下型地震が起れば、泊原発は福島原発同様の致命的な被害が生じる可能性があります。
以上6点のどれ一つをとっても、私たちのいのちに関わる重大な倫理的問題が生じる泊原発の再稼働はすべきではありません。
最後に、北海道は自然エネルギーの宝庫とも言われています。
泊原発を再稼働しなくてもクリーンな電源開発によって、電気は十分賄われるのです。分散型電源の増加や電源ネットワークの見直しは、地域経済の活性化をもたらし、安全で豊かな農業生産による食料と健康確保が可能となります。同時にこれらのエネルギーは今後不可欠となる廃炉に必要なエネルギーの有効な資源となるでしょう。
以上により、北電は泊原発の再稼働ではなく早期に廃炉を決定し、新たな再生可能エネルギーを活用した事業経営へと切り替えるべきです。
裁判長の公正なご判断をお願い致します。