新潮文庫(旧版)、275頁。
太宰治賞受賞の「泥の河」、芥川賞受賞の「蛍川」と「川」3部作を構成する同氏デビュー初期の作品。
「夜は華やかなネオンの光に染まり、昼は街の汚濁を川面に浮かべて流れる道頓堀川。その歓楽の街に生きる男と女たちの人情の機微、秘めた情熱と屈折した思いを、青年の実直な視線でとらえた秀作」
ただ、その後発表された「錦繍」や「優駿」に比べると、物語がやや類型的なのが気になる。勿論、実際にはデビュー前に書かれた作品なので当然かと思う。
新潮文庫(旧版)、275頁。
太宰治賞受賞の「泥の河」、芥川賞受賞の「蛍川」と「川」3部作を構成する同氏デビュー初期の作品。
「夜は華やかなネオンの光に染まり、昼は街の汚濁を川面に浮かべて流れる道頓堀川。その歓楽の街に生きる男と女たちの人情の機微、秘めた情熱と屈折した思いを、青年の実直な視線でとらえた秀作」
ただ、その後発表された「錦繍」や「優駿」に比べると、物語がやや類型的なのが気になる。勿論、実際にはデビュー前に書かれた作品なので当然かと思う。
1982-86年「新潮」誌等掲載、613頁。
競走馬(サラブレッド)とその周辺の人々の興奮と悲愁を克明に描いた同氏デビュー初期の傑作長編。
やはり力のある作家の小説は面白いと思いつつ、小さな活字の本書を3日で読了した。
引き続き、同氏の初期の作品を読みたいと思っている。
1997年集英社刊、524頁
出生の秘密を持つ兄妹の禁断の愛を描いた同氏デビュー初期の長編。
人生は、すべてに白黒がつけられる訳ではなく、また、過去をすべて明らかにできるわけでもない。加えて、未来が約束されているわけでもない。
こうした不確かな状況でも、私たちは何かを信じつつ、且つ選択し、生き抜いていくのだ。
以上のように、この時期の同氏の作品は、人間とは何かを突き詰めて描いている点で独自性があり共感する。
1981年「新潮」掲載、269頁(単行本)。
先に拝読したエッセイ集「命の器」で紹介された同氏のデビュー初期の傑作。
「蔵王のダイア園から、ドッコ沼へ登るゴンドラ・リフトの中で、まさかあなたと再会するなんて、本当に想像することすら出来ないことでした」との書き出しで始まる書簡形式の物語。
偶然再会した前夫は、10年前幼馴染と情死事件を起こしており、やむなく離婚したが(主人公は)その後再婚するも障害をもった長男を生み育てることに・・・。
人間の出生とその後の人生とが綾なす不可思議さを突き詰めて描いている。ご一読をお勧めします。(お勧め度:★★)
初出「TANNTO」1996年11月~98年3月号、集英社文庫、270頁。
「口から生まれた双子座」のダンフミと、「天然の饒舌」アガワの名コンビ。
歯に衣着せぬ毒舌で丁々発止とやりあった往復エッセイ集。
まだ、わか国の良さも垣間見える時代を生きた才女の生活を俯瞰することが出来る。
妻のセレクションだが、とても面白く読んだ。
渋みのある独特の音色を持つベーゼンドルファー。
ロシア出身ながら、日本を舞台に活躍を続けて来たイリーナ・メジューエワが、そのピアノに挑戦したアルバム。
選曲の良さもあり、訴追力の違いがよくわかる。
収録曲
ベートーヴェン ピアノソナタ 第17番 ニ短調 Op.31-2 「テンペスト」
シューベルト 即興曲 変イ長調 Op.142-2
シューベルト・リスト 連祷
リスト エステ荘の噴水
ワグナー・リスト イゾルデの愛の死
ドビュッシー 沈める寺
ラフマニノフ プレリュード 嬰ト短調 Op.32-12
演奏
イリーナ・メジューエワ(ピアノ)
録音 2017年4月 相模湖交流センター 若林工房 WAKA-4204
同氏の第二エッセイ集。講談社文庫、213頁。
清澄な情緒を讃える宮本作品の秘密を描き出す、同氏の自伝的(細切れ)エッセイ33編を収める。
特筆すべきは、人生や作家はどうあるべきかを訥々と語っておられる点で、言わば手の内を晒している訳で、その点でも同氏の人と成りを知ることができる。
例えば、人との出会いは偶然ではなく、その人の持つ命の器次第だという。
2006年2月文春文庫新装版としてリリース、24編のエッセイを収める。300頁。
本邦エッセイの最高傑作と称される著者の第一エッセイ集。
誰の胸の中にもある父のいる懐かしい家庭の息遣いを、ユーモアを交えて見事に描いている。他方、庶民生活の昭和史としての評価も高い。
兎に角、いずれも挿話もグサリと刺さる小気味よさを持っている。ご一読をお勧めします。(お勧め度:★★★)
1993年リリースの桐野氏初期のヒット作。江戸川乱歩賞受賞。講談社文庫新装版、481頁。
親友のノンフィクション作家が1億円を持ち失踪した。
共犯を疑われた主人公は、胡散臭い外車ディラーの男と共に彼女を追うが、なかなか核心に迫ることができずにいた・・・。
デビュー作で、これだけの物語性と筆力を発揮した同氏は、やはり力のある作家だっだということだろう。
思わず、物語に引きこまれ一気に読んだ。
ただ、暴力団や倒錯した性などに関係する話だけに、読んでいてあまり気持ちのよいものではなかった。
昨日のしんぶん赤旗に、掲題書の書評が出た。
同書は、朝日新聞週末版「Be」に連載され、毎週夢中で読んだ。
江戸中期、芸人として唯一人獄門刑に処せられた馬場文耕の人となりを硬質の文章で描いたもの。
非常に説得力のある小説で、連載時好感をもって読んだ。
ご一読をお勧めします。