アーバンライフの愉しみ

北海道札幌近郊の暮らしの様子をお伝えしています。

鈴木エイト著「”山上徹也”とは何者だったのか」

2024年07月08日 | 読書三昧

 

講談社新書、232頁。

今日7月8日は、安倍晋三元首相の3回忌である。

2022年7月8日、彼は参院選の遊説中、奈良市の近鉄西大寺駅北口で山上徹也に銃撃され命を落とした。

当日、正午のニュースでこれを聴き、小生は思わず「アッラーアクバル(神は偉大なり)」とつぶやいたことを覚えている。

つまり、小生は従来、彼(安倍元首相)の政策及び、政治手腕に強い懸念を抱いていたから、「神はそれらを見逃すことなく対応した」と思ったのである。

とは言え、白昼堂々、選挙遊説中の政治家を銃撃するというようなことがあってはならない。

従って、山上徹也は事実と法に基づいて裁かれ、相応の罰を受けなければならない。

ただ、何故彼がそうした罪を犯すに至ったかについては、詳細な検討が必要で、近く開廷されるであろう裁判で徹底的に解明されることを期待する。

その意味で、著者が長年にわたり追及して来た統一教会の実像及び、政治家との癒着並びに、山上徹也の人物像について知りたいと思い本書を拝読した。

残念ながら、著者自身、未だ山上本人との接見に成功していないこともあり、鮮明な人物像を描くには至ってはいない。

 

 

 

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石原俊著「オーディオ”粋道”入門」

2024年07月02日 | 読書三昧

 

拙宅ゲタ箱文庫の1冊。
オーディオ評論家の石原氏が、自らの人生とオーディオとの関りを縦軸に、それを使って聴くクラシック音楽を横軸にオーディオの楽しさを語った入門書。

面白いと思ったのは、オーディオを趣味にしている人ならどなたもが直面する「部屋」の問題。

家庭で音楽を良い音で聴こうと思ったら、良いオーデイオ装置を入手することも大事だが、それより何より音を出す部屋が問題だという、著者自身の引っ越し体験を元にしたお話。

小生なども、そのために横浜から北海道ニセコに移住。
ログハウスを建ててオーディオ装置を設置し音楽を聴いた訳だが、そうした破廉恥も、本書によって大いに慰められた次第。

 

 

 

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川越宗一著「パション」

2024年06月29日 | 読書三昧

 

2021年4月~23年6月「河北新報」等地方紙連載、PHP研究所刊、445頁の大作。

受難(パション)を越えて求めよ自由を!
熱源」で直木賞を受賞した著者による新たな挑戦。

関ケ原で敗れた小西行長の孫で、「最後の日本人司祭」となった小西(彦七)マンショの人生を軸に、異文化同士の出合いと摩擦、争いの中から生み出された希望を描く圧巻の歴史小説。

深い感動とともに、この大作を読み終えることができました。ご一読をお勧めします。(お勧め度:★★★)

蛇足:類似書に飯嶋和一氏の「出星前夜」があります。

 

 

 

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村木嵐著「阿茶」

2024年06月22日 | 読書三昧

 

先に、同氏の「まいまいつぶろ」を拝見し、その生き生きとした人物描写に共感し本作を手に取った。書き下ろし、幻冬舎刊、315頁。

夫と死別し、瓦解寸前の甲斐武田を息子とともに脱出した阿茶は、家康の庇護をうけることになった。そして、天性の才気で家康を助け天下取りを担う・・・。

才気溢れる阿茶の秘めたる想いに迫る傑作。ご一読をお勧めします。(お勧め度:★★)

 

 

 

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佐高信・望月衣塑子著「この国の危機の正体」

2024年06月12日 | 読書三昧

 

昨今の我が国の危機的状況にスポットを当て、そこに通底する問題は何かについて、稀代の論客と最前線の記者が激論を交わした。平凡社刊、191頁。

主として、メディアの果たすべき役割、政治と宗教、軍拡と平和、日本企業のあるべき姿などについて検証している。

他方、早野透氏など政治部記者の先達や城山三郎氏や平野貞夫氏らの魅力についても語っている。

 

 

 

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角田光代著「対岸の彼女」

2024年06月09日 | 読書三昧

 

2004年下半期第132回直木賞受賞作。
「別冊文藝春秋」2003年11月~04年7月号連載、288頁。

子育てと夫、姑との関係に悩む小夜子は、意を決して勤めに出る。雇われた先の社長は独身女性で、意外にも大学の同窓生であった・・・・。

人間、所詮は他人との関係の中でしか生きられないが、結果、種々の問題やストレスを抱え込む。問題は、それをどう認識し解決して行くかだが、渦中にいるとこれがなかなか難しい。

本書は、それらを解決すべく奮闘する主人公を描いている。

選者評:平岩弓枝氏
「瞠目した。自由奔放に行きつ戻りつしているようで緻密に計算されている構成のおかげで作品の流れがよどむことはない。こけおどしの作為もないし、豊富な資料を使った重厚さもない代りに、登場人物の一人一人の表情がはっきり見え、その背景の現代に正確なスポットライトが当っている。受賞作にふさわしいと思った。」

 

 

 

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吉田秀和著「ベートーヴェン」

2024年06月07日 | 読書三昧

 

吉田秀和氏の1970~90年代(同氏50~70歳代)に書かれたさまざまな形の「ベートーヴェン論」である。河出文庫、262頁。

それは、ベートーヴェンの「音」についての考察であり、文藝(詩、絵画)との関連性や、演奏論等についてなどである。

残念ながら、これらを十分咀嚼するに至らなかったが、機会をみて再度、熟読してみたいと思った。

 

 

 

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村山由佳著「星々の舟」

2024年05月30日 | 読書三昧

 

2003年上半期第129回直木賞受賞作。
「別冊文藝春秋」第237~42号掲載の短編6編を収める。389頁。

村山さんの作品はこれまでいくつも拝読して来たが、どういう訳か本書に接する機会がなかった。今回、改めて本書を読み受賞にふさわしい作品であると思った。

連作短編集だが、それぞれ完成度の高い作品群となっている。特に人物描写が鮮やかで、同氏の作家としての素質の高さを感じさせる。

最終章、父「重之」の従軍記には鬼気迫るものがある。納得の受賞作と言えよう。ご一読をお勧めします。(お勧め度:★★★)

選者評:平岩弓枝氏 
「凄いところは一人の人物を描くことから、まるでつながっている糸をひき出すように一つの家族の人々が各々、主人公となって浮び上って来る構成力の巧みさと適確な人間像の描写力だろうと思う。小説というものの魅力と怖しさを久しぶりに堪能させられた。」

 

 

 

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桐野夏生著「柔らかな頬」

2024年05月25日 | 読書三昧

 

1999年上半期第121回直木賞受賞作。
講談社刊、2段組み365頁の大作。

北海道支笏湖畔の別荘で発生した幼児失踪事件を縦糸に、それを取り巻く人間模様を冷徹な眼で活写した問題作。

硬質な文章と巧みな構成で、読者を虜にする上質のエンターテイメント。

例えば、昔、新田次郎氏の「銀嶺の人」などを徹夜して読んだことを思い出すほど夢中で読んだ。ご一読をお勧めします。(お勧め度:★★)

桐野さんは現在、日本ペンクラブ会長として、昨今の軍事化の世相に警鐘を鳴らしている。

選者評:阿刀田高氏
「きっかりとした構造を作り上げ、その舞台の上で、それぞれの登場人物が持つ心の闇をあぶり出している。どの登場人物も必死になって生きる手応えを求めているのだ。それがこの作品のモチーフなのだ。最後の数十行を人間たちの心の闇を伝える深遠な寓話として読んだ。」

 

 

 

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佐藤雅美著「恵比寿屋喜兵衛手控え」

2024年05月17日 | 読書三昧

 

1993年下半期第110回直木賞受賞作。
講談社刊、328頁の大作。

江戸の訴訟の実態を克明に綴った異色のサスペンスドラマである。

兎に角、とても面白い。
何か、自分が江戸時代の旅人宿の主人になったような気分になり(つまり、小説に没入し)ながら読んだ。

先にご紹介した北原亜以子さんの「恋忘れ草」同様、この時代の作家の実力の高さを実感させられた。

選者評:黒岩重吾氏
「(江戸時代の)民事の訴訟をテーマにした作品を読んだのは初めてだが、難解ではなく実に読み易い。とくにこの作品を魅力的にしているのは、旅人宿の主人、喜兵衛の人間描写にある。訴え出た地方の百姓も一見純朴そうだが実にしたたかで、この作者が人間を凝視する眼に曇りはない。」

 

 

 

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