文藝春秋社刊、383頁。
本屋大賞を獲り、映像化作品もある売れっ子作家の「天羽カイン」だが、過去2度候補になりながら直木賞は獲れない。
同賞を得て文壇に認められたいという「承認欲求」は日に日に募り、遂には担当編集者も巻き込んで次作の受賞を目指すのだが・・・。
村山さんご自身(直木賞受賞の)ご経験があるだけに、その戦いには真に迫るものがあり手に汗握る展開を楽しむことができる。
それにしても、作家の性とも呼ぶのかその執念のすさまじさに圧倒される。
文藝春秋社刊、383頁。
本屋大賞を獲り、映像化作品もある売れっ子作家の「天羽カイン」だが、過去2度候補になりながら直木賞は獲れない。
同賞を得て文壇に認められたいという「承認欲求」は日に日に募り、遂には担当編集者も巻き込んで次作の受賞を目指すのだが・・・。
村山さんご自身(直木賞受賞の)ご経験があるだけに、その戦いには真に迫るものがあり手に汗握る展開を楽しむことができる。
それにしても、作家の性とも呼ぶのかその執念のすさまじさに圧倒される。
2002年、講談社刊、730頁の大作。
ニセコ時代、町の図書館が放出した図書をもらい受けて保管していたもの。
ようやく読了したが、正直、高橋氏の構成力、筆力に圧倒された。
同氏は92年、「緋い記憶」で直木賞を受賞しているが、これに先立ち「写楽殺人事件」、「北斎殺人事件」等もリリースしている。
ただ、結局、大量の(ゴッホの)贋作を元にした展開になり、何か相撲でうっちゃりを食ったような感じになったのが残念であった。
2020年12月~23年1月京都新聞等地方紙連載、角川春樹事務所刊、700頁越えの大作。
歴史とは、勝者が紡ぐものだが、何故この物語には敗者の名が冠されているのか。
これは戦いの唄、涙の唄、希望の唄~今村翔吾版「平家物語」。
平家の全盛から滅亡まで、平清盛、平知盛、木曽義仲、源頼朝、源義経など、次代を造った英雄たちを活写した今村エンターテイメントの世界。ご一読をお勧めします。(お勧め度:★★)
先に、「藍を継ぐ海」で直木賞を受賞した著者が、2022年にリリースした長編小説。
書き下ろし、角川書店刊、291頁。
物語~高校の文化祭で、空き缶1万個を使ってオオルリを描いた巨大なタペストリーを制作した仲間たちも、早や45歳の中年となっていた。
それぞれが日々の生活と向き合う厳しさを抱えながらも、目標に向かって励んだ記憶に胸を熱くしつつ、今度は民間の天文台造りに奔走する・・・。
再び、目的を持って集うことになった仲間たちは、あの夏の隠された事実に気付くと共に、目標に向かって邁進する大切さを体感する。静かな感動を呼ぶ物語に共感しつつ読んだ。ご一読をお勧めします。(お勧め度:★★)
「小説新潮」2016~17年連載の連作短編9編、215頁。
中島さんのやさしげな文章に惹かれて、このところあれこれ拝読している。
物語~カギっ子の小学生「タタン」は、近くの喫茶店に置かれた赤い樽の中で過ごすのが日課となっていた。
そして、来店する(大人の)人々は何かいわくありげで、且つ寂しそうな影を引きづっていた・・・。
小学生の女の子を通して、大人社会の持つ複雑さと哀しみを見つめる著者の暖かな目線に共感しつつ読んだ。
2024年下期第172回直木賞受賞作。
「小説新潮」2021~23年適宜連載、珠玉の短編5話、268頁。
先にご紹介した、20年下期の同賞候補作「八月の銀の雪」にも勝る科学者の目を通したすばらしい物語に、「さすが受賞作!」と思いつつ読んだ。
今回も、萩焼のこと、狼混犬や(長崎)被爆遺品、隕石やウミガメのことなど、すべてウンウンと納得しながら読み進めた。
こうした良質の物語を拝見すると、日頃手にする小説などいかにも作り物臭く、がっかりさせられるものが多い。ご一読をお勧めします。(お勧め度:★★★)
日本経済新聞(夕刊)20年1~12月連載、466頁の大作。
江戸後期の大ヒット作「南総里見八犬伝」の作者「曲亭馬琴」の一代記。
武家に生まれ、若き主君に仕えるもパワハラに堪えかねて出奔し、散々の青年時代をおくる馬琴。
放浪の末、著名な山東京伝の門をたたき、蔦屋重三郎の店に奉公して戯作の道に踏み出す。
やがて、馬琴は江戸随一の戯作家となる。
兎に角、よく調べ、よく書いたなとの印象が強いまかてさんの近作に脱帽である。
食べ物通信社刊、128頁。
記憶が定かでないが、何かの宣伝で本書を知り(表題に惹かれ)購入してみたが、中身はスカスカで何の役にも立たなかった。
漢方の教えから、健康増進のためには「五臓六腑のバランスを整える」必要があると言うのだが、具体的にどうすれば良いのか何の解決策も提示されていない。(現況把握のためのチェックリストは充実)
宣伝や表題や「いいね」評などに騙されて、高価(1,650円)な書籍には努々手を出すべきでないと言う何よりの教訓。
角川文庫、277頁。
日頃、三島由紀夫の著作を自ら手にすることは先ずない。
本書は、先に横浜から(娘と共に)遊びに来ていた長女が、近所の本屋で手にし、読了後置いていったもの。
長女には、良家のお嬢様の(北海道における)熊狩りの様子を綴ったという物語が興味を引いたらしいが、(小生も)面白く読んだ。
加えて、作家としての才能を感じさせる文章は、最近の作家に物足りなさを感じる身としては、「三島でも読んで勉強すれば・・・」とも思った。
その点で、あの自衛隊市ヶ谷駐屯地での事件は、何とももったいなかったなと思う。彼が大成していれば、どのような作家になったかと想像する。
角川書店刊、書き下ろし356頁の大作。
「シベリア民間人抑留、凍土からの帰還」の副題が示す如く、終戦の混乱期、ソ連邦シベリアに抑留された民間人のその後を追跡したドキュメンタリーである。
本書で消息が明らかにされ著述されている人々は20人余だが、ウイキィ等によると、軍人、民間人合わせて57万5千人もの人々が過酷な抑留生活を送ったという。(内、死亡者は5万8千人の多きにのぼった)
本書は、主としてカラフト在住者の内、家族を追って内地に密航を企て、ソ連の沿岸警備隊に拿捕されたり、自動車事故の際(ソ連軍の)軍人に危害を加えようとしたと誤解され収容所送りとなったりした民間人の抑留生活を追った。
長い抑留生活の中、現地に居住する女性と結婚した人も居て、内地帰還に当たっては家族と生き別れになる不幸も存在した。
それらの人々の人生は、涙なくして読み進めることは出来なかった。