「天声人語」と言えば、朝日新聞朝刊1面の名物コラムである。
時事問題に精通し博学に裏付けられた一文は、その日の読者の気分を代表するだけでなく、大学入試や書き写しの教材となったりする。
ところで、しんぶん赤旗(日刊紙)の1面にも、「潮流」というコラムがあるのをご存知だろうか。
これも「天声人語」同様、読者のその日の気分を代表するに足りる名文ぞろいである。
7月24日号のそれをご紹介しよう。
「わが巨人軍は永久に不滅です」。かつて、最も印象に残る引退劇を聞いたアンケートがありました。そこで1位になったのが、ミスタープロ野球といわれた長嶋茂雄さんのセリフでした。
▼昭和の時代を色濃く映したものですが、野球ファンのみならず、記憶している人は多い。さまざまに取り沙汰される著名人の引退。世間からよく評価されるのは惜しまれて身を引く姿だといいます。(『引き際の美学』)
▼米国のバイデン大統領が大統領選からの撤退を表明しました。最近の言動を見ていると遅きに失した感もありますが、この決断が「わが党とこの国にとって最善の利益になると信じている」と声明でのべています。
▼直近の米世論調査では、バイデン氏は再選を目指すべきではないとの回答が7割以上にのぼっていました。ガザ攻撃のイスラエルを擁護する政治姿勢が批判され支持者離れを招き、続投を危ぶむ周りの声も一段と高まるなかでの撤退宣言でした。
▼さて、この人の場合はどうか。国民の7割が交代を望み、内閣支持率も最低ラインに沈みっぱなしの岸田首相です。自党の裏金問題の責任をとるわけでもなく、物価高の対策もまともに講じない。一方で軍拡や権力闘争には力を注ぐ。くらしにも平和にも役に立たないことを見透かされながら平然と。
▼「政治的に最善という思いでの判断だと認識する」。バイデン氏撤退をうけて、そう語った岸田首相。引き際は人を試すといわれます。この人の「最善」とは一体いつなのでしょうか。
蛇足~1週間分の「潮流」は、こちらで読むことができます。