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夢の羅列<カマクラ・フューチャー3> 20170924

2017-10-08 12:36:07 | Dreams
夢の羅列<カマクラ・フューチャー3> 20170924


つづき。

床屋が閉店してしまった様子がそこに広がっていた。

そういえばドアの外のエレベーターもなんだか薄汚れていて、とても上で見てきたような近未来の様相ではなかったっけ。それにあれだけいた人もこのエレベーターまではあまり来ないらしく、乗り込む人も僅かであった。

この店も開店当初と客の流れが変わってしまい、とうとう閉店を余儀なくされたに違いない。いや、高齢ということで閉店することも多いから断言は出来ない。

私はこの誰も居ないもう死んでしまったかのような埃だらけの店内を美しいと思い、写真を撮ろうかとポケットの携帯を探した。その時、店の奥に人の気配を感じ、数歩進んで柱の陰を見ると老人が独りで帳面か何かの片付けをしていた。

160センチほどの背の、齢は80に近いだろう、白髪の、ツイードを赤く細いサスペンダーで吊って、やはり同じような灰色のツイードの鍔のある帽子を冠ってレジの前に朧げに立っていた。

私は写真を撮ることをやめた。

彼の長年の闘いの終焉の儀式を気軽に撮ることは気が引けた。

彼がここで積み重ねた時間に比べ自分にはリスクが何もないことにふと気がついた。

ここはまだ彼の場所であり、彼の時間なのだから。

床に響く靴や調子の良い鋏の音。
笑い声。整髪料やスチームの匂い。ラジオからの音楽。
店内の空気にまだ残るそんな記憶たちがやがて壁や床や残骸に染み込み
すっかり隠れてしまった時に、私はようやく撮ることを許されるのかもしれない。

私は邪魔をしないように静かに店の外に出て、注意深くゆっくりとドアを閉めた。

おわり。

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